志士のまちと障害理解。 / 鶴﨑 彩乃

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「維新のまち」と聞いて、みなさんはどこの地域を思い浮かべるだろうか。私は、山口県の萩。

私が歴史小説に出会ったのは、中学生の頃。当時の私は、障害受容の作業の真っ最中で、「自分が障害者であること」を理解から納得に落とし込むために、自分にできることを手当たり次第にやっていた時期だと思う。

自分でできること・できないことを自覚して、客観的に説明できるように、前回のコラムに出てきたところに再入院してみたりとか、色々努力していたのだ。

しかし、その現実を直視し続けるのは、メンタルがお豆腐並みに脆い中学生にとって、なかなかに過酷だった。そんなときに逃げ場になってくれたのが、歴史小説だった。

マジで助かった。
あのとき出会えてなかったら、確実に私は精神が崩壊していただろうと思うからである。

まずは、織田信長から入って戦国時代からの幕末。歴史オタクをつくるための王道ルートを通ってるよな。と今、書きながら自分で笑ってしまった。

幕末の志士で最初に好きになった人も、維新の三傑の1人のため、これまた王道ルート。ちなみに維新の三傑とは、西郷隆盛・大久保利通・木戸孝允のことである。

私の当時の推しは、木戸孝允。今も好きだが、1番ではない。今の幕末部門の1番は、小松。誰やねんというツッコミは受付中。

木戸孝允は、幕末の志士なのにぶっとんでなくて、真面目な常識人な気がしていた。「何より奥様の幾松さんに一途なところがいいんだよねぇ。」とか言いながら本を読んでいたので、さぞや「あいつ・・。大丈夫か。」的な眼差しを送られていたことだろう。

大人になってからも、歴史系の特別展示を見るために1人で博物館に行くと心の声がダダ洩れで、車いすのため、より目立つ。恥ずかしい。という思いをよくする。

まぁ。そんな妄想溢れる歴史オタになりかけの中学生に萩に行くチャンスがやってきた。家族旅行である。一泊二日で向かった。前日まで熱を出して病室を隔離されていた奴とは思えないほど、テンションマックスで入院先に迎えに来た母の車に乗り込んだ。

旅行のメンバーは、母と私・幼なじみの女の子だった。病院から向かった先は、松下村塾。外から中の様子を窺うと、「誰かおる?」と母が言ったため、私と友達も覗いてみた。すると・・・「うわっ!」と3人で声を上げた。

犯人は実寸サイズの蠟人形。初めて見たときは、死ぬほど怖かった。
そんなこともありつつ、旅行を満喫した。

2日目の朝、のんびり歩いていると、木戸孝允の生家があった。「小五郎さん家やんっ。」私と友達は、声をそろえた。(木戸孝允は、桂小五郎とも呼ばれている。)

「でも、入ったら怒られるかな。」と私が気にしていると、「せやな。タイヤ痕とかつけてまうし、お家の中は、やめとこ。お庭から覗かせてもらうだけにしとこ。」と母が答えてくれた。

歴史的な建物に車いすのタイヤ痕をつけてしまうと、怒られてしまうことが多い。だって、お寺とか神社にタイヤ痕ついてたらびっくりするよね。分かるわぁー。

お庭から、お家を覗いていると上品なマダムが出て来られ「あの・・。ちょっと。」と声をかけられた。
怒られるっ!と思い、私と母が勢いよく頭を下げると、女性は、「違うのよ。ふふっ。お時間があるなら、見ていかれないかしら。」と言われた。思ってもいなかった提案に私達はとても驚いた。

「タイヤが汚いんですけど・・。」というと、「いいのよ。いいの。上がって。」と笑顔で招き入れてもらい、展示品に対しての説明もとても丁寧にして頂き、「この家系図の1番下に私の名前書けないかしら。ふふ。」というような、すごくユニークな方であった。

建物自体は、木戸孝允が住んでいた頃と変わらないらしく、案内してくれた方は末裔の方か、末裔の方の奥様だったと思う。「木の柱とかもベタベタさわっちゃいなさい。」という、「この人すげぇな。」と関心するような懐の大きな人だった。

障害があっても、行きたいところには行ってもいいのだ。と感じさせてくれた人だった。

私は障害があるから、すべてのことを健常者と同じようにはできないと思う。車いすのタイヤ痕を嫌がられる建物もあるだろう。それは、嫌だなという感情論だけではなく、やむに負えない事情もあるだろう。しかし、折り合いがつけばお互いにとって、より良い結果になるのだろうか。

今年は、お城にいきたいなぁ。

 

◆プロフィール
鶴﨑 彩乃(つるさき あやの)
1991年7月28日生まれ

脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。

大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。
趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。

 

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