地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記㉕~やまゆり園をパラリンピックの採火の通過点にすること~ / 渡邉由美子

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この原稿を書いている時は、新型コロナウイルス感染症の一日の感染者が全国で二千人を超え、三千人に近づく勢いで毎日増え続けている状況です。東京においても五百人を軽く超え、また、年始に出された緊急事態宣言時の数字になってきています。

そんなご時世が背景にあっても尚、オリンピック・パラリンピックは開催される予定で聖火リレーがスタートしています。大阪はついに路上での聖火リレーを中止し、人の入れない場所で聖火を他の地域に受け渡すという異例の事態で事を進めています。

そんな事態の中、パラリンピックの採火を、2016年7月26日に19人の尊い命が奪われ、負傷者も戦後例を見ないほどとなった場所でリレーしようというのです。

被害者はまだ心の整理もついていません。なぜ殺されなければならなかったのかわかりません。それを共生社会の実現という綺麗なスローガンでお祭り騒ぎの一環にしようとしているのです。

各障がい者団体は、由々しき事態であり美化された後に社会からなかったことにされることを危惧して、採火のやまゆり園通過を強硬に反対する署名活動をしています。優生思想に裏付けられた差別を美化する思想は本当に恐ろしいものだと私は思わずにはいられません。

やまゆり園の保護者会や関係者も採火の通過中止を求める請願書を神奈川県に対して提出しました。神奈川県は丁寧な説明を加えた上で、再度理解を求めたいとしています。

このことは関係者や当事者が理解するとかしないとかいう問題ではないのです。社会に解決されていない殺傷事件が歴然と存在するということに装飾を加えてはいけないのです。

そのためには事実をもとに考え続けたり、事実に対して二度と同じことが起こらないようにするために障がい者への正しい理解・正しいサポートや支援の在り方を永遠に模索し続けていかなければならないという、問題の中心をブレさせない草の根の障がい者運動が必要なのです。

決して、鎮魂と言いながらお祭り騒ぎの一環で終わってしまうセレモニーの中に入れられる性質のものではないのです。

この観点に立てているパラリンピック関係者は皆無に等しいと思います。何故ならば、パラリンピックに出られる人を障がい者と捉えているからです。

少し考えてみてください。「すごいことだ。」とは思いますし、その裏には人には言えない数えきれないほどの努力と練習の成果があるのは解かっていますが、彼らは健常者でも出来ないことが出来てしまう達人障がい者なのです。

パラリンピックの関係者は、それが全体の障がい者であると信じて疑わない人たちなのですから、私たちのような、この人たちから見たら非定型の様々な意味での重度障がい者は眼中にないのだと思います。

世の中的にも関係者的にも眼中にない人間を人間として当たり前に扱えということを言い続けるためにも、採火はやまゆり園を通らないルートに変更させるべきだと私は思います。仲間と共に重度障がい者の底力を見せつけていく活動を地道に展開していこうと思います。

アメリカや各国のオリンピック中継の放映権の問題が一番大きくて、今更中止には出来ないのだという報道が、インターネットやSNSを中心にまことしやかに囁かれています。

オリンピックの象徴であるエンブレムを決める時から、パクリ疑惑に始まりボツになったポスターを大量廃棄した事件や、もう一々覚えていられないほど味噌のついてしまった東京オリンピックなのです。

普通に考えて、世界的な感染が収まらない現状とワクチンの安全性、質、量、接種の円滑化、何一つとっても出来ていない中で、なぜ誰も中止の二文字を発表することが出来ないのでしょうか。私には、そのごり押しさ加減が納得できません。

物事は当然やっていい事、悪い事があるのです。やってはいけないことを強硬にごり押しした後に、どんな結果が残るというのでしょうか。前代未聞の大不況、預金封鎖、福祉などという言葉の崩壊など、少し考えただけでも生きた心地のしない世の中しか想像できないのです。

今、国の財政は税収の落ち込みを背景に、どこまで落ちていくか分からない底なし沼状態です。節度を持って、本当に必要なところに税金が使われていく世の中を私たちの手で作っていきたいと思います。

オリンピック・パラリンピックはそんな税金の適正な使い方という意味でも、今からでも決して遅くないですから、勇気を持って中止にして欲しいと個人的には切に願うばかりです。

オリンピック・パラリンピックに向けて努力してきた選手たちの努力が報われる方法は別に考える必要がありますが、いくら観客を入れずに開催したとしても、選手が動く裏にたくさんの関係スタッフも動いているのですから、オリンピッククラスターが起こらないうちに中止にして欲しいと思います。

それにしても、首相が海外に外交に行くことを実行している国では勇気ある中止の決断は到底難しい相談なのかもしれないと思わざるを得ません。

今後、どんな世の中になったとしても障がい者運動を基に強く、逞しく、そして楽しく、重度障がいにめげることなく生き続けていこうと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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