地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記㉘~人に伝えると伝わるの違いは大きい 前編~ / 渡邉由美子

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私は身体のほとんどが自分の意志では動かないので、起きている間はずっと喋っていると言われるほど口を動かして活動していることが多いのです。これは今に始まったことではなく、物心ついてからその生活が身についたという感じです。

たまには無口に黙々と過ごしていたいと思う時もありますが、私から話すという能力を奪ってしまったら生きていけないと思うので頑張って喋っています。疲れて力尽きると睡眠に入る、そんな毎日です。

その口を活かして私はここ数年、重度訪問介護の資格を取得して障がい者の介護に入ることを職業とするために必要な実地研修の講義を行っています。今は人との接触を少なくする観点から、オンライン研修も進めています。

オンライン・zoomでの講習は聞いている人の反応や表情、何を知りたいと思っているのかの情報が全くない中で、デジタル媒体を駆使して眠くならない時間にすること、同じことを何度も語らないようにすることを注意しながら、初めて現場に出るときに役に立つ生の当事者の声を一つでも多く届けたいと考えています。

オンラインの欠点である「距離が遠い」ということの課題は思った以上に重いものだと思います。withコロナ時代を生き抜く手段としてこの方法をスムーズに活用できるようになれば、私の活動の幅も広がると考え、孤軍奮闘しています。

活動の流れとしては、出生時の状況、障がい者となった理由、学生時代の教育を受けることが難しかった就学猶予の法律の話、養護学校卒業後の進路が無かった話、無いなら自分が生きられる生活の場や社会参加活動の場を自らの手で障がい者運動を展開する中で作ってきた、自分史にも近い今までの半生を語ります。

その後、今の生活の様子を動画で流し、PowerPointを利用しながら、家の中での福祉機器の活用方法から寝返りの打たせ方、入浴の仕方まで詳細に説明して、排泄はオムツ、入浴は訪問入浴なのであろうと想像される固定概念を切り崩していきます。

人にもよりますが、身体が動かない=療養生活とは限らない、適切な支援があれば活発に活動し、健常者と変わらない暮らしがある程度可能なのだということを懇切丁寧に伝えていきます。

外出の場面のPowerPointは殊更に受講生の関心を引くことが多いように感じます。夜に介護用リフトを使って、寝る前に入浴する生活を得られている要介護の当事者は少ないので、それも高齢者の介護を想定して受講する方たちには目から鱗のことのようです。

個別性に対応するのが重度訪問介護であり、長時間の見守りも含めた「動作をしない、でも休憩ではない介護」の在り方を伝えることはとても難しいことなのです。

伝えるつもりで私はもちろん語りますが、相手に何が伝わったのか?障がいの種類や程度によって求められるニーズやスキルは本当に千差万別な中で、あくまでも私の生活は、という切り口で重度障がい者の自立という概念の多様性を伝えていきます。そして最後に必ず介護者に望むことを話すのです。

介護保険と違って、長時間共に食事の時間も挟んで過ごす中で、その日にやりたいことを成し遂げるために必要となる事柄を全て自己責任のもと、介護者に委ねながら自分の生活を作るのです。その中で人生の主体者として生きられるための条件づくりとしての介護者となっていただき、利用者を輝かせる立役者となってほしい旨を切々と語っていきます。

それから質疑応答を聞く段階となり、そこで初めて受講生と対話して、受講生が初動で何を不安に思うのか、知りたいのかが明らかとなっていき、その質問に丁寧に答えていく事でこの仕事をやってみようと思ってくださる人々を作っていく地道な活動をしています。

毎回多く聞かれる質問は「渡邉さんにとって良い介護者とはどんな人ですか」とか「初めての介護者は不安ですか」とか「自立生活をしていて良かったと思う瞬間はいつですか」と定番で毎回聞かれています。
どの質問も、とても答えが出ていない課題をダイレクトに聞かれているので、返答に悩みながら答えています。

良い介護者とは、の質問に対しては「私の手足の代わりとなってやりたいことができるように支援してくださる人です」などと答えて、とても抽象的になってしまいます。

2つ目の質問は「初めての介護者でも大丈夫です。みんな最初は初めてだったのですから。」と答えます。「なるべく早く初めて感を払拭してベテランの域に達してほしいとは思っています。」みたいな、これもまた答えになっているのかいないのか解からない回答となっていることを自覚しながら話しています。

3つ目の自立生活をしていて良かったことも月並みで、「自分で自己決定・自己選択・自己責任がとれ、日課などに縛られず自由な生活をすることが可能で、外出大好きな私は外に出る自由、社会参加活動の機会を得ることができる生活がとても幸せであるからです。」と答えています。

どの答えにも、これが正解という確固たるものを確立できている訳ではなく、うまくいかないときがあると落ち込んだりすることも多々あるので、真実はまだまだ分からず、その答えを模索する日々です。なのですが、希望のあることを述べなければという使命感から少しきれいごとにすぎる返答をしています。

それでも、この後半数分の受講生との対話はすごく貴重な時間で、いつも私自身が自立生活を継続していく中で、襟を正される瞬間なのです。次回は対面による現場実習のことについて書いていこうと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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