もうなんかしんどい、という誰かを抱きしめろ② / 佐々木 優

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時々、自分に自信が持てなくて、無能感、無力感に押し潰されそうになることがある。

自分は現場の仲間のことが本当に見えているのだろうか、想いをしっかり受け止められているのだろうか、そして、仲間達に向けて伝える私の言葉は、果たして的を得たものなのだろうか、という自問が、いつも私の脳裏を行ったり来たりしているのだ。

それは決して、私自身の日常が辛いからではない。現場に向かう私の仲間たちの毎日が、時に過酷なものであることを、傍で見ている私が知っているからだ。

その仲間たちが支えるクライアント(利用者)やご家族の疲労や苦労、そこからくる怒りや苛立ちがあった場合、それらが向かう先によっては、クライアントとアテンダント(ヘルパー)との間で葛藤が生じる。
そして、その葛藤をお互いが上手く消化(昇華)できない場合、次第に関係性が悪化していく。

それでもひた向きなアテンダントがクライアントの人生を見つめ続けた結果、彼、彼女らの疲弊と燃え尽きだけがそこに残ることがしばしばある。

重度訪問介護という世界には、あらゆる関係者の【念】のようなモノ、何とも言えない感情のカタマリが渦を巻いているように見えることがある。

「私、あの人(アテンダント)のこと、本当は好きなのに・・・」
そう言いながら、それでも傷つけてしまうクライアントの苦悩。
私が高齢者施設で働いていた頃にも、同じようなストーリーを経験していたが、あの頃よりもそういった悲しい雰囲気に満たされた環境に触れる機会が確かに多い。

こうして、本当は誰のせいでもない、悲しいかな、それが彼、彼女らの関係性を少しずつネガティブな状態に傾倒させていく様を、私は【悲劇】と呼んでいる。が、私はこの悲劇において、一方的に責められるべき登場人物はいないとも考えている。

先日、私は緊張と疲れからか、オンライン会議の終盤で強い胃痛に襲われた。
初めてのことで自分でも驚いたが、次のスケジュールが迫っていたため、お腹をさすりながら車に乗り込んだ。
そのうち治まるだろうと思ったが、その後、車を停めて私は嘔吐した。

わずかに痙攣する胃の在り処を感じながら、涙でにじむ信号機を見つめた。
ちょっと胃が痛いだけで、こんなにも悶えているのであれば、もし手や足がこのまま一生動かない、命が続かないかもしれない、しんどい、しんどいと、身体が日に日に機能しなくなる恐怖を感じたならば、自分はいったいどうなってしまうだろうか、と想像していた。

痛い、苦しい、悔しい、悲しい、許せない。
もし、そんな感情を重ねる日々が続くのであれば、難病や傷害をもつ人々が、常に人格者であれる訳がない。
少なくとも私ならば、毎日毎日無理にでも笑って過ごせる自信がまったくない。
悲劇において、一方的に責められるべき登場人物はいない、と先述した理由はここにある。

自立生活を成し遂げようとするが故に起こりうる、こうした悲劇を消し去るためには、完全な家族介護に頼るか施設介護に移行することしか、不勉強な私には今のところ思いつかない。
しかし、それが正しい解決法だとはとても言えない。見えないようにただ蓋をするだけの対応だからだ。

ただ、その手段を選ばない限り、アテンダントがクライアントに押しつぶされる(当然にその反対もある)悲劇が起こり、場合によってはそれが繰り返される。
だからといって、私は悲劇の真っただ中にあるクライアントを無責任に放り出すようなことは絶対にできないし、諸々の期待に応えられていないと見なされるアテンダントを安易に非難できないのだ。
だからきっと、こんなに苦しいのだろう―――

時々、私の管轄圏外のマネージャーとのやりとりで、各地の近況報告を伺う機会があるが、ご当地のリアルな現場の様子等をお聴きするにつけ、電話口のマネージャーの、その向こう側にいる多数のアテンダント達に向けた感謝の思いが溢れてくる。

この瞬間、今も全国のどこかで、誰かが誰かを支えてくれているということ。
きっと大変なこともあるだろう、それでも歯を食いしばって頑張っている仲間がいるということ。
悪いことばかりではない、充実感に満たされて、笑顔になっている仲間も確かにいるだろうこと。

間違いなくほとんどがお会いしたこともないアテンダントばかりだが、そんな全国の1000人の仲間への敬意が、マネージャーとの会話の最中に込み上げてくるのだ―――

全国のアテンダントの皆へ。

皆とはお会いしたこともないけれど、私は四国にいて、いつも皆のことを勝手に想っています。
今はコロナ禍で、それでなくても過酷な支援の日々、本当に本当にありがとうございます。
私は私のクライアントのために、不十分ながらも私の一生懸命をふり絞って頑張っています。
私も皆と同じく、後悔したくないから、目の前の人に最後まで寄り添うことに集中しています。
いつか、どれだけ密になっても叱られることがなくなったら、ぜひ皆でお会いしましょうね。
その日まで、自分を信じて、周りの仲間を信頼して、一緒に歩いていきましょうね。

それではまた―――

 

佐々木 優(ささき まさる)
ホームケア土屋 四国

 

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