​信頼とは / 佐々木直巳(人事労務 シニアディレクター)

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信頼とは、積み重ねた関係性、人間観で、ずいぶん変わるものではないかと思っています。
礼をもって接することで得られるものかもしれません。

例えば、これは人事部目線のお話しになってしまいますが、労務管理は人の感情で動いているように思います。極論すると、法を守ること、制度を整えること以上に重要な要素かもしれないです。これが担保されないと、結局どんな施策を打っても斜に構えられてしまい、暖簾に腕押し状態になってしまいそうだからです。

ある意味、上司は上司なりに、管理監督者は監督者なりに、経営側は経営側なりに、その与えられた役をもっとしっかり演じる必要すらあるのではないかと思うのです。

私自身は、最近は、足元をみれば様々な管理力が鈍化しているのではないかと感じて振り返ることばかりです。人事でいえば、労務管理力だと反省しています。労使トラブルが発生した場合だけでなく、人事制度を設計するとき、インシデント(たとえばパワハラや労災など)の対応をしているときにも感じたことです。

経験的に、普通ならスッと行くはずのものが、なぜかギクシャクしている。どうも当事者間で関係がシックリしていないような気配も。もっと言えば信頼関係が欠如しているのではないか。。。そんな風に思える場面に遭遇するのです。

そうは言っても、激動の創業期を超えてきた故に、置き去りにしてきた課題、しこりもあったと思うので、この手の問題はなかなか根深いものがあり、一つの特効薬で解決するほど簡単なものではないように思えます。きっと長い経緯の中で醸成された個々人の人間関係や職場感情が形成されてしまっているからではと思ったりもします。

改善していくための対応方法はいくつか思い浮かぶのですが、最後に行きつくのは、現場の管理監督者、あるいは経営する側、管理する側の人間力にかかっていると思うのです。

こうなると身も蓋もない気がしますが結局、現場の長の“器”しだいであるような気配です。私自身も“器”の有無から見直さないといけない気がしています。なによりもまず、従業員をひとりの人間として接する人間観も、運用していく側に求められる重要な要素の一つかと思うのです。

この機会にマネージャーとして、どのような人間観でいるべきなのか。考えてみました。よく昔から、罪を憎んで人を憎まずといいます。人は誰しもそれなりに力を持っているものなので、もし事がうまく運べない、出来ないのであれば、それはやり方が悪いか、考え方が悪いからで、人格そのものに問題があるかといえばそうではないはずです。

当然、承認欲求もあるでしょうし、おなじ仕事をするのであれば充実した職業生活を送りたいと考えるし、自分自身や会社に誇りを持ちたいと思うものです。

こういった、ちょっとした、人に対する思いがないと、結局、どんな施策を打っても効果は薄いのだと感じています。逆に、こういう思いでいると、自ずと言葉や表現、態度に現れ、良好な信頼関係の構築と、職場感情の情勢に資すると考えています。ですが、言うは易しで、私自身は自問自答が繰り返されています。

信頼は感情と紐づくと思うほかに、言葉の持ちようも絡みそうです。人に関しては、パワハラが起こる局面では、感情は得てして人に焦点が当たりすぎていることが気になります。遅刻を例に話せば、「なんで遅れたんだ」と言えば、主語はおそらく【お前は】です。場合によってはその後ろに【馬鹿野郎!】も付きそうです。

明らかに【人】に言葉の焦点が当たって、もはや人格否定問題になっています。言葉として言われた当人はそこまで言わなくてもと反抗するでしょう。しかしこれを【事】に焦点を当てて、「遅刻した原因は何だ」となれば、主語は【遅れた現因】であって、相手に考えさせ、今後の改善指導という本来の目的も達成し易いはずです。

同じことを注意指導するにしても言い方次第でずいぶん違うはずです。人に当たりすぎると人格攻撃と受け止められ、指導されたことは善意に受け止めることはないでしょう。ある意味、戦場に例えるなら鋭く槍が向けられ攻撃されたのです。向けられたスタッフは受け止めるはずがなく、かわして避けるだけです。下手すると投げ返してくるかもです。

指導するのなら、上長たるもの、スタッフ自身の心の側に矢を向けたいものです。そうして初めて、周りの問題でなく、自分事、自分の問題としてとらえてくれるのではないかと考えたりします。その関係性の積み重ねが、信頼を生み、組織への愛着や誇り、ロイヤリティーが生まれ、人だけでなく組織の成長につながる効果があるのではと思っています。

多様性の社会、いろいろ、さまざまなものによってお互いの共同が成り立っているし、自分みずからも活かされている、生かされていることを正しく知れば、おのずと感謝とか敬意を表するという態度も互いに、自然に生まれてくるのではないでしょうか。

そう言ったことが、謙虚さや寛容さなども人間観に備わって、より高い信頼が得られるのだと思います。人事の事案で、その解決策の案でここまで立ち返る自分の、より高い信頼を勝ち取るための道のりはかなり遠いです。

いずれにしても、まずは、人としての豊かな心を養い、高めつつ、それをもって人も事もいっさいのものをあるがままにみとめ、適切な処遇を行なっていくことを心がけていこうと思います。

 

佐々木 直巳(ささき なおみ)
本社・人事労務

 

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