人類は生き延びられるのか〜オリンピックに思うこと〜 / 安積遊歩

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地球温暖化のためだろう。札幌も猛烈に暑い日々が続いている。日中は常に30℃代を記録している。それでも、東京と全く違うのが、カーテンを閉め切って、フローリングの床に寝ていれば、冷房は元より、扇風機もない暮らしでもやっていける点だ。

1983年、私はカリフォルニアにいて、暑い時にはカーテンを絶対に開けてはいけないと、シェアメイトに厳しく注意された。天井には大きな扇風機があったが、もしカーテンを開けると、窓からの熱射が、部屋の気温を急上昇させて、天井の扇風機は熱い空気を掻き回すだけになると言われた。

私は1985年から26年間、東京に住んでいた。初めはそれほどでもなかったが、娘の誕生前後くらいから、東京の夏はどんどん耐え難いものになっていった。2011年に福島原発が爆発して、ニュージーランドに3年間放射能避難をするまでは、東京の暑さに、まさに「耐え忍ぶ」という感覚だった。あまりに緑が少なく、それを育む大地もコンクリートに覆われていた。そして、ひたすら人間という生き物、生命だけが大量の「自然」だった。

日々、他の生物を絶滅に追いやりながら、そうした生き物の痛みや苦しみにまるで気付こうとしない。その極みである工場畜産による肉食や、農薬散布、化学肥料による農業…。そして原発の拡大や地球温暖化などの破滅的関与に無関心を装い続ける、いや真逆の方向に走り続けている日本の政治。その頃は、都会に住むということは、自分の生き物としての感性を完璧に捻じ曲げられてしまうことだと思っていた。

ニュージーランドでは、空気の美味しい、人口が少ない小さな町に3年間暮らした。東京の暮らしでは考えられなかったアボカドがたわわに実る庭。歩いて2分のところにある入江。自然いっぱいの町に住んで、心も身体も癒されていった。だから、ビザの関係で日本に戻らなければならないとなった時、とにかく東京には戻りたくないと思い、札幌に来た。

東京に暮らし始める前は、東京の冬が好きで東京にいたのだが、札幌の冬の厳しさは、あまりよく知らなかった。知っていたのは夏の心地よさだけだったので、札幌に来てからは、冬になるたび、どこかへ移住したくなった。それでも夏になれば、扇風機も冷房も使わないでいられることに毎年感動した。今、札幌で7年目の夏を迎えようとしている。

ところで、その札幌に、東京五輪のマラソン種目とサッカーがやってくることになった。マラソンは、42.195キロを完走する種目だ。たしかに東京よりはマシかもしれない。しかし、マシだというだけであって、各ビルから出る排気熱や車の排ガスは、大都会のそれなのだ。

何より今、コロナウィルス のパンデミックの状態があるのだ。不要不急の外出を控えろと言い、経済的困窮に人々を追いやりながら、オリンピックは良いという、この政治。政治というより、アメリカの大資本に日本を最先鋒として、多くの国のオリンピック選手や関係者がマインドコントロールされているかのようだ。

私はたった一度だけの人生だから、やりたいことはやったらいいと、自分にも人にも言ってきた。しかしそれは、命を輝かせることについてである。いかに辛い練習を長期にわたって頑張ってきたからといって、自分の命や他人の命を絶対的に侵すことが明らかなこの状況下、ここで行うのは、まさに軍隊マインドの暴挙でしかない。アスリートたちに、関係者たちに、呼びかけたい。オリンピックを平和の祭典とするならば、ここでオリンピックの参加や開催を止めることこそが、本当の平和であるということに気付こうと。

毎日、IOCのバッハの元に、「オリンピック止めろ」の声を届けたいと随分の人が押しかけていると聞く。私の気持ちとしても全く同じで、この人間性のカケラもない事態をあきらめの中に承伏することはできない。「オリンピックは今すぐにでも辞めるべき」と私は肋骨の骨折の痛みの中で叫び続ける。

 

◆プロフィール
安積 遊歩(あさか ゆうほ)
1956年、福島県福島市 生まれ

骨が弱いという特徴を持って生まれた。22歳の時に、親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介する活動を開始。障害者の自立生活運動をはじめ、現在も様々な分野で当事者として発信を行なっている。

著書には、『癒しのセクシー・トリップーわたしは車イスの私が好き!』(太郎次郎社)、『車イスからの宣戦布告ー私がしあわせであるために私は政治的になる』(太郎次郎社)、『共生する身体ーセクシュアリティを肯定すること』(東京大学出版会)、『いのちに贈る超自立論ーすべてのからだは百点満点』(太郎次郎エディタタス)、『多様性のレッスン』(ミツイパブリッシング)、『自分がきらいなあなたへ』(ミツイパブリッシング)等がある。

2019年7月にはNHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。好評で再放送もされた。

 

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