テレビ出演について④ / 浅野史郎

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政治家や芸能人には舌禍事件がつきものである。発言がテレビで報道されるので、変な発言をするとすぐにマスコミに流れ、批判される。

私にも舌禍事件があった。宮城県知事時代に、県営宮城球場の大改修工事の現場を見に行った時のことである。新球団楽天イーグルスを迎えるために、球場をプロ野球の試合ができる仕様に改修しなければならない。大改修なので、地面を大々的に掘り返す。そのありさまを見て、「新潟地震の跡のようだな」と言ってしまった。2、3日前に新潟地震が発生したばかりである。同行の記者から「新潟で被災した人に失礼ではないですか!」と迫られるところがテレビのニュースで報道されてしまった。

ふつう舌禍事件といえば、その発言が後を引いて、ネットが炎上したりする。この時は、これでおしまい。後を引くなんてことはなかった。私はこの「事件」を知事12年の間の唯一の舌禍事件と捉えている。口の軽い私としては、舌禍事件がこれ1件だけということにいささか驚いている。

テレビ出演における私の舌禍事件があった。これを伝える「日刊スポーツ」2017年7月25日号の記事を見出しつきで以下にそのまま引用する。

高須院長「明確な名誉毀損」浅野史郎氏を提訴も

美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長(72)が、元宮城県知事の浅野史郎氏(69)の発言に警告。「明日中にお詫びがなければ提訴します」とした。

浅野氏は25日放送の日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」に生出演し、高須院長が民進党の大西健介議員(46)、民進党、蓮舫代表らに総額1000万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした裁判についてコメント。大西議員が5月17日の衆院厚生労働委員会の質問で「『イエス、○○(まるまる)』とクリニック名を連呼するだけのCMなど、非常に陳腐なものが多い」と発言したことについて、「真実を言ったんですよ」と私見を述べ、名誉毀損(きそん)にあたらないと語った。

この浅野氏の発言に、高須氏はツイッターで「明確な名誉毀損です。いまミヤネ屋さんに顧問弁護士から警告しました。浅野史郎様から明日中にお詫びがなければ提訴します」と法的措置も辞さない構えを見せ、「僕も老人だから老人だからと容赦しません」とした。

この発言でなんで私が提訴されるのか、私としては言いたいことはたくさんあったが、お詫びすることにした。高須クリニックが「ミヤネ屋」の有力スポンサーなので、私が謝らなければ番組と読売テレビに迷惑をかけると思ったからである。さらに、後日、私のマネジメント会社である日テレイベンツの担当者とともに、読売テレビの幹部に謝罪に赴き、番組から降りると申し上げた。なにしろ泣く子とスポンサーには勝てないのだ。

この時と違って、私自身が非を認めたケースがある。関口宏の「サンデーモーニング」で、おふざけっぽい発言をしてしまった。番組が終わってからの反省会で、関口さんから「浅野さんのあの発言は喝!だな」と言われた。そうだな、だめだよなと自分でも認めたところである。その後、「サンデーモーニング」からお声が掛かることはなくなった。

テレビ出演ではいろいろあったが、ともかくテレビ出演は楽しかった。浅野史郎の愉快な人生を構成する大事なピースである。

2回目の知事選挙が終わってすぐの頃、テレビ朝日の「ザ‥スクープ」でキャスターを務めていた鳥越俊太郎さんと仙台で対談をした。鳥越さんは「前の選挙で浅野さんは落ちるかもしれないと思った。落ちたらキャスターを世話してやろうと思ってた」と言った。「何だ、それ聞いてたら落ちるんだった」と私。その時の私は、間違いなく「知事よりキャスターがいい」と思っていた。キャスターにはなり損ねたけど、私はテレビ出演を十分に楽しんだといえる。

 

◆プロフィール
浅野 史郎(あさの しろう)
1948年仙台市出身 横浜市にて配偶者と二人暮らし

「明日の障害福祉のために」
大学卒業後厚生省入省、39歳で障害福祉課長に就任。1年9ヶ月の課長時代に多くの志ある実践者と出会い、「障害福祉はライフワーク」と思い定める。役人をやめて故郷宮城県の知事となり3期12年務める。知事退任後、慶応大学SFC、神奈川大学で教授業を15年。

2021年、土屋シンクタンクの特別研究員および土屋ケアカレッジの特別講師に就任。近著のタイトルは「明日の障害福祉のために〜優生思想を乗り越えて」。

 

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