人類は生き延びられるか~政治の大切さ・ニュージーランドから日本を見て〜 / 安積遊歩

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私たちは、私たちを取り巻く地球の偉大な自然と私たちが作りあげた人間社会の中に生きている。その人間社会は人間同士の平等と相互扶助の理念に基づき、助けあいながら生きのびようとする力を政治として実現しようとしてきた。人間は平等だという考え方も神様がいればある程度、神の前で平等だろうと、人権意識も作られてきた。キリスト教などの一神教は、神の前の平等を説く。

日本はキリスト教は人口の1%だから、平等という意識が希薄だ。まして、対等感というものは人々の間に、微塵もない気がする。特に赤ん坊との対等感は全くないが、少なくとも大殺戮の果ての戦後の社会の中で、命を守り、どんな存在も尊重しなければならないという政治が生まれてきた。

政治は教育や医療や司法にどれくらいの注目やお金をかけるかという人々の命や暮らしにとって、最も根幹を成す大切なシステムである。

だからどの政党も我こそが命と暮らしを守るという言葉を叫びまくる。ところが人々の命と暮らしは人間同士だけが守っているわけではない。つまり、地球の環境、自然があってこその人間の命であり自然であるということが、人間を万物の霊長とする考えや政治システムの中で、全く見えなくなってしまっている。人間による地球環境の自然破壊は凄まじく、その勢いはとどまることを知らぬかのように、全ての生き物の命を追い詰めてくる。

そうした中で政治が機能すれば、少なくとも人々の最低限の命や暮らしを守ることは可能だ。残念ながら生き物の中で、人間だけの命を常に常に先行させているのが悲しいが、それもまた政治の中で見ていかなければ解決はない。私の娘が住んでいる、ニュージーランドは、450万人の人口で島国。地震国で、北島は温暖で、南島は南極に近いため雪は降らないが、結構寒い。

日本との人口比率は約30分の1で、色々似たところも違うところももちろんあるが、1番似ていないのは、政治だ。1986年、チェルノブイリの原発事故が起きた後、最もそこから遠い国であったニュージーランドは、地震の多い国に原発はいらないと決めて、原子力を持たない法律を作った。

また、国内における先住民のマオリの人口は約2割。彼らとの共生は、政治の中でも大きなテーマだ。公用語にマオリ語もなっているから、政治家はその言葉をそれなりに学ばなければならない。マオリ語だけで授業を教える大学やハイスクールもある。言葉は人々の意識を作り、多様性を尊重し合うために最も大きな力を持っているものだから、このニュージーランドの教育の有り様は国内ではまだまだと言われているが、日本の現実から見れば、驚愕だ。私は今北海道に住んでいるが、アイヌの人たちの言葉は徹底的に奪われていて、アイヌの人自身でさえ話せる人はほとんどいない。さらに政治家の中には平気で女性や先住民や障害を持つ人に対する差別発言をする人が多い。つまり、マイノリティの人に対する差別意識が日本は保守の政治家の中にさえ蔓延していると言える。そうしたリーダーを持つ国なので、ヘイトスピーチやヘイトクライムが後を絶たないわけだ。

ところで最近、ニュージーランドの政治がどんなによく機能しているかを、さらに見せつけられたのが、コロナに対する対策だ。ニュージーランドは、去年コロナが始まったときに感染者が102人の段階で厳しいロックダウンを決断し、休業補償も3ヶ月分をたちどころに申請した個々人に補償した。アーダーン首相がほぼ毎日国民に向かい、記者会見を行い様々な不安や質問に答えていた。彼女が首相になったとき、彼女のスピーチにも驚かされた。彼女は政治家の最も大事な資質は、国民に親切にすること、と言ったのだった。

日本に住んでいると、日本の政治家に親切にされているどころか、真逆の扱いを受けているのを感じる。日本は去年から毎日感染者が増え続け、とうとう今日は一都三県に4回目の緊急事態宣言が出た。日本の中では、移動するなと言いながら、あろうことか、オリンピックは開催するという日本の政治。その愚劣さは知性も理性もかなぐり捨てて、炸裂し続けている。

もう1ついえば、2週間ほど前に、娘が25歳以下で活躍する25人の女性として表彰された。その表彰式のビデオを見て驚いた。めちゃくちゃ密なのに、誰もマスクをしていないのだ。そこには、私たちが1年半前に失ってしまった人々の温かな素顔の交流があった。娘は大学生の時にも、日本で言えば厚労省の若者部のようなところで表彰されている。そのときはただただ嬉しかったが、今回は、ニュージーランド政府が人々の命と日常を守り切った姿勢がよくよく現れていて、心から感動した。

政治は私たちの生活そのものなのに、それがどんなに大事で大切か、本当に分からなくされている。世界的なパンデミックと言われているが、ニュージーランド政府のように、マスクをせず、ニュージーランド政府の政治によって今までと同じように日々を暮らしている人たちもいるのだ。この文章を1つのきっかけとして、自分の人生に対する政治からの影響を考え、どんな政府を私たちは望み作れるのかを考えるきっかけにして欲しいと心から思う。

参考に、最近娘の表彰されたビデオのリンクを貼っておこう。娘はほんの少ししか出ていないが、マスクのない楽しそうな様子を分かち合いたい。

https://thespinoff.co.nz/partner/ywca/30-06-2021/meet-the-25-young-trailblazing-wahine-of-this-years-y25/

 

◆プロフィール
安積 遊歩(あさか ゆうほ)
1956年、福島県福島市 生まれ

骨が弱いという特徴を持って生まれた。22歳の時に、親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介する活動を開始。障害者の自立生活運動をはじめ、現在も様々な分野で当事者として発信を行なっている。

著書には、『癒しのセクシー・トリップーわたしは車イスの私が好き!』(太郎次郎社)、『車イスからの宣戦布告ー私がしあわせであるために私は政治的になる』(太郎次郎社)、『共生する身体ーセクシュアリティを肯定すること』(東京大学出版会)、『いのちに贈る超自立論ーすべてのからだは百点満点』(太郎次郎エディタタス)、『多様性のレッスン』(ミツイパブリッシング)、『自分がきらいなあなたへ』(ミツイパブリッシング)等がある。

2019年7月にはNHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。好評で再放送もされた。

 

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