土屋の挑戦 インクルーシブな社会を求めて㉞ / 高浜敏之

  • sns

34 土屋の12のバリュー⑩

私たちは成長し続けたい。そのためには、私たちは学び続けなければならない。私たちが真に学ぶには、西洋哲学の祖であるソクラテスのいうところの「無知の知」、すなわち「知らないということを知っている」という認識が求められる。基本姿勢として、素直さと謙虚さと誠実さが求められる。10番目のバリューでは、そんな私たちの成長への意思を表現した。

学ぶ力、素直さと謙虚さと誠実さと

私たちは誰しもが潜在的に「学ぶ力」を持っている。私にはもうすぐ4歳になる子と2歳半になる子、二人の娘がいる。二人とも猛烈な勢いで、日に日に新しい情報を吸収し、知識と技術を身に着けていっている。一か所に留まる様子はまるで見受けられない。なんの強制もなく、なんの義務感もなく、新しい言葉で世界を名づけ直し、新しい身振りを習得することで自律性を獲得していっている。そのこと自体が喜び以外の何物でもないような気配を漂わせながら、新しく更新され続ける世界を生きている。

誰しもがそうだったはずだ。すべての人は「学ぶ力」の塊のような姿で、この世に誕生した。好奇心と成長欲求を全身にまといながら、幼少期を生きていた。そんな私たちがいつぞや、無関心と頑固と偏狭さを日に日に強めていき、「学ぶ力」を徐々に減退させていった。「開かれ」を生きてきた私たちは、いつのまにか自分自身の中に、固定観念の中に、強迫的思考の中に、自分を閉ざしていった。

なぜ私たちは本来持っていた「学ぶ力」を失っていったのか?何が私たちから新しい知識や技術を吸収する「学ぶ力」を奪っていったのか?「学ぶ力」の礎であるマインド、素直で謙虚で誠実な姿勢は、なぜ消え去り、いったいどこに行ってしまったのか?

年を追うごとに頑固になっていくのを感じる。他者からの助言や忠言を直に受け取ることができなくなっているのを感じる。自己防衛の姿勢が少しずつ強化していっているのを感じる。世界や他者と自分を分け隔てる「壁」がだんだん分厚くなっていくのを感じる。好奇心や感受性の鈍化を感じる。ある意味、生きるのが楽になったとも思える。感じる力が次第に衰える自分には、若い頃のような「傷つき力」を見出すことはできない。

生きる過程とは傷つく過程といってもいい。私たちは生まれ育ち成長する過程で、たくさん辛い思いをしてきたし、せざるをえなかった。他者からたくさん心の奥まで届く言葉の刃が飛んできたし、時に血が流れるような物理的圧力にもさらされた。教育や指導や躾という名の、正当化された暴力を受けることもある。

みんな、大なり小なり、そんな暴力の中を生き延びてきたサバイバーだ、つくづくそう思う。傷つきながら、血を流しながら、生き延びる中で、みんな「自己防衛」を最優先の課題にしてきた。どうしたら親に怒られないか、どうしたら友達からいじめられないか、どうしたら先生に認めてもらえるか、どうしたら上司の叱責を免れうるか。「自己防衛」のために四六時中考え続け、行動する中で、私たちはパターンという鎧を身に着けていく。過度の「べき思考」もその一つだ。「べき」の外側はいつ自分を傷つけるかもしれない敵がひしめく危険なジャングルだ。絶対に外には出てはならない。「べき」という箱の中に閉じこもってなければならない。自分の身を守らなければならない。強迫的思考は正当な自己防衛でもあるが、その思考に囚われたものは不安のなかで安全な場所に怪物を発見するようになる。

私たちから「学ぶ力」を、そしてその基盤となる素直で謙虚で誠実な姿勢を奪い去るものは、このような「痛みの経験」と、それに伴う強迫的思考だ。だから、私たちが「学ぶ力」を回復するには、私たちが成長することを阻む不安や恐怖から解放されて、強迫的思考から自由になるためには、「安全な場所」が保証される必要がある。過去の傷ついた経験から自由になり、自分自身が成長する可能性を素直で謙虚に受け取れるようになるためには、「安全な場所」が不可欠だ。そして個々のメンバーには、自分自身が過去の傷ついた経験から自由になろうという意志が求められる。環境が準備されることを待つことなく、自ら積極的に自由を獲得し、成長に向かって解き放たれようとするあくなき志向性が求められる。

そんな風にして、私たちは一人一人が幼い頃に持っていてかついまでも潜在的に十分秘めているであろう「学ぶ力」と「成長への意志」を回復できる、広義の治療共同体でありたい。

 

◆プロフィール
高浜 敏之(たかはま としゆき)
株式会社土屋 代表取締役 兼CEO最高経営責任者

慶応義塾大学文学部哲学科卒 美学美術史学専攻。

大学卒業後、介護福祉社会運動の世界へ。自立障害者の介助者、障害者運動、ホームレス支援活動を経て、介護系ベンチャー企業の立ち上げに参加。デイサービスの管理者、事業統括、新規事業の企画立案、エリア開発などを経験。

2020年8月に株式会社土屋を起業。代表取締役CEOに就任。趣味はボクシング、文学、アート、海辺を散策。

 

  • sns