ソーシャルとビジネスのバランスについて / 笹嶋裕一(常務取締役兼CHO 最高人事責任者)

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日本における介護福祉という領域においては、未だにボランタリーな習慣、歴史があり、人助けに対価が発生すること自体に抵抗があるひとたちが大勢いる。根底に「お互い様」という文化がある。

一方、世界的に見るとビジネスの力で社会課題を解決するという手法はもはや主流になりつつある。「お金儲け」と「ソーシャル」を穿って結び付ける概念は終焉を迎えつつあるのではないだろうか。いまや社会貢献にエントリーしていない企業は手遅れになるといわれており、その価値観は求職者側にとっても根付き始めている。
セールスフォースのマークベニオフが、「1-1-1モデル」という社会貢献とビジネスを統合した活動を経営戦略のDNAに組み込んでいるのは有名な話である。

もうひとつ、収益事業と非収益事業の捉え方について。
二つを卑しく選別し、収益事業だけを選択することは悪とされ、単純に儲かるか、儲からないかに帰結する思考は社会から排除される傾向にある。
収益がでないからやらないではなく、収益事業から得られる益をつかって非収益事業もやる。冷静と情熱をもって目的に向けてこの決断ができるかどうか。
その先にあるのが株主の益ではなく、様々なステークホルダーの益であるかどうか。
そしてその益が新たな雇用を生み、社会的な好循環が回り続ける理想的な形が作れたならソーシャルビジネスの一つの成功と言えるのではないだろうか。

ソーシャルもビジネスも正しいか正しくないかで議論することはできない。非営利でおこなう社会課題の解決も方法論の一つである。
当然営利的な解決もあって然るべきで、連続性といわゆるリソースが必要なソーシャルビジネスにおいては一人より二人、二人より三人、三人より四人というように数珠つなぎの連鎖が必要で、そこにはソーシャルサイドであろうがビジネスサイドであろうが受容しようとする懐の深さは営利企業の特徴として確かにある。ただし、そこには思考のミスマッチが存在するので、その火種は組織の中で燻り続ける。そうなるとソーシャルとビジネスの分断は進み、やがて正義と不義の二元論に終始する。であるからして、入り口の目線はやはり合っているに越したことはなく、ソーシャルとビジネスのバランスに対する考え方については採用基準としても明らかにしておく必要がある。

手法と目的にやはりポリシーは持つべきであり、それは企業としての重要なメッセージとなる。
目先の利益を追求するがあまり、結果的に一過性の課題解決とともに企業生命が尽きることもある。
片や、選択肢も持てずに自分ではコントロールしにくい資金を短期的な支援にまわすしかなく、志半ばで活動から離れる個人もいる。

社会課題の解決で得られる益を短期思考で回そうとすると結果として永続的な価値は生まれにくい。
いかに長期思考を持てるか、よりサステナブルであるか。
それこそがソーシャルビジネスをバランスよく回していく根本的な「解」ではないだろうか。

 

◆プロフィール
笹嶋 裕一(ささじま ゆういち)
1978年、東京都生まれ。

バリスタに憧れエスプレッソカフェにて勤務。その後マンション管理の営業職を経験し福祉分野へ。デイサービス、訪問介護、訪問看護のマネージャーを経験し現在に至る。

 

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