読書について⑤ / 浅野史郎

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読む本をどうやってみつけるか。小説については、読んでみて「いいな」と思った作者の作品を読んでいく。「つまらないな」という作品に当たったら、それで終わり。つまり、その作者の作品はもう読まない。一丁上がり。こういう読み方をする人は多い。

情報源としては、新聞の書評欄がある。我が家で購読している朝日新聞、日本経済新聞の土曜日の紙面には読書コーナーがある。書評にざっと目を通して、「面白そうだな」と心に響いたら、その本をAmazonで探して購入する。ただし、書評欄で扱われる本はほとんどがハードカバー。だから定価が高い。「これだけのお金を払っても読む価値があるのかな」ともう一回書評を読み返す。そうして「購入せず」とした本のほうが多いようだ。「けち」じゃないよ。「コスト/ベネフィット」に厳しいのです。

読みたい本、読むべき本をみつけるための王道は、本屋に行くことである。本屋にはいろいろな本が並んでいる。小説を探しているのだが、時事ものやノンフィクションにも目が行く。芸能もの、スポーツもの、趣味の本も手に取ってみる。政治・経済・経営、教育、さまざまな分野の本の題名を見るだけで興味が湧く。何冊か購入して読んでみるとアタリだったりして。本屋好きの人たちは、これがあるから毎日でも本屋に通う。

わが長姉は読書家とまではいかないが、そこそこの本好きである。自分が読んで面白かった本を教えてくれる。私が読んだことのない作者も「史郎、あの作家はいいよ」と推薦してくる。そうやって読んでみた作家に乙川優三郎がいる。単行本の「脊梁山脈」を読んで面白かったので、続けて5、6冊文庫本で読んだ。原田マハも姉に教えてもらった作家。文庫本で16冊読んだが、ハズレは1冊もなかった。私のほうからは、読了した本がたまるとダンボールに詰め込んで姉に送る。「史郎、自分だったら絶対に買わない本、面白かった」と返事が届く。こういうのを読書仲間というのだろう。

読む本をどうやってみつけるか。この問いに格好の答を与えてくれるのが、大塚義治君の著書、その名も「文庫彩時記〜本棚の漫歩計」である。大塚君は厚生省の同期、厚生労働省事務次官で退官し、現在は日本赤十字社の社長を務めている。

月刊「時評」に、文庫本を材料として、書評ともエッセイともつかぬ気楽な連載をスタートしたのが平成17年(2005年)7月、それが何と15年も続いてしまったという。5年分をまとめて一冊の本にする。その三冊目は2020年12月発刊である。毎回、大塚君は私のところに送ってくる。

一冊に約50作品が紹介されている。最初の本では、そのうち11作は私も読んでいたものである。「ああ、大塚君もこの本読んでいたのか」と思いながら、その感想文を読んでいた。私にとっては未読の作品の中から何冊か選んで本を買い求めた。「フーン、大塚君はこういうのが好きなんだ」と思いながら読んだ。こういうのも、読書仲間というんだろうなと私は勝手に思っている。

私は大塚君の本を書評ではなく、エッセイとして読んだ。大塚君は父親の故郷である「北関東の山深い小さな村」で中学校まで過ごした。本を読んでいるうちに、その小さな村でのことを思い出す。それを語る大塚君の文章は、詩情にあふれている。大塚君は、これらのエッセイを通じて、自分史を語っている。「大塚義治の愉快な人生」とでもいうような自分史。私の語る「浅野史郎の愉快な人生」とはまるで違う素敵な文章で綴られている。

 

◆プロフィール
浅野 史郎(あさの しろう)
1948年仙台市出身 横浜市にて配偶者と二人暮らし

「明日の障害福祉のために」
大学卒業後厚生省入省、39歳で障害福祉課長に就任。1年9ヶ月の課長時代に多くの志ある実践者と出会い、「障害福祉はライフワーク」と思い定める。役人をやめて故郷宮城県の知事となり3期12年務める。知事退任後、慶応大学SFC、神奈川大学で教授業を15年。

2021年、土屋シンクタンクの特別研究員および土屋ケアカレッジの特別講師に就任。近著のタイトルは「明日の障害福祉のために〜優生思想を乗り越えて」。

 

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