認知症状態にある人の小さな声 / 高浜 将之

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脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症と並んで最もメジャーな認知症の一つです。ただし、メジャーであることと理解しているのは別のこと・・・。

私が関わるデイサービスセンターにAさんという方が通われていました。Aさんは、それまでデイサービスを転々としてきたようです。ご家族は「(介護スタッフが)なかなか理解してくれない」と嘆いておられました。

はじめのうちはスタッフも悪戦苦闘!なぜなら、非常に要望が多くスタッフが付きっきりになってしまうのです。しかも付きっきりだから、落ち着けると言う訳でもなく、度々「思い通りにならないもどかしさ」を介護スタッフにぶつけられます(いわゆる暴言と言われる行為です)。

介護スタッフとしては、「こんなに一生懸命にやってるのに・・・」と感じてしまうこと

も度々ありました。

しかし、根気強く支援を続けている中で、Aさんが「こんなに細かいことばっかり言って悪いわね」と一言。つまり、細かい要望が多いことを理解しているのです。

アルツハイマー型認知症のように全体的に認知機能が低下するのではなく、脳血管性認知症は「まだらボケ」等とも言われるように、「認知機能が衰えた部分」と「しっかりしている部分」が分かれている状態。

Aさんは自分が気になってしまう(不安障害)非常に細かい要望を出していることも、思い通りにならなくて感情的になり介護スタッフにキツくあたってしまう事(暴言・暴力の前提となる興奮)も、Aさんの「しっかりしている部分」で理解・認識しているのです。

症状を理解することで、その人を見る目も変わります。「抑えられない自分の症状を、言ってしまったりやってしまってから、冷静に認識してるって苦しいよね」等、スタッフのAさんを見る目も変わってきました。

通い始めて1か月程、Aさんにも大きな変化が見られるようになってきました。「ここに来る回数を増やしたいって言ったら怒る?」とスタッフに聞いてみたり、ある日には「心ある所にきたい。こんなに優しい人たちがいっぱいの所に行きたい。ざっくり格好良く言うと、ここには愛があるの」と言って下さいました。

Aさんを支援し始めて2か月程で「介護職冥利に尽きる」言葉を頂いたのは、デイサービスの財産になります。それと同時にAさんとの関わりを通じて、脳血管性認知症の対応を改めて学ばせて頂いたことをAさんに感謝しております。

認知症は、「症状の知識」と「認知症当事者の実際の症状」を結びつけるのが、非常に難しく、「認知症を知っている」ことと「認知症を理解している」ことには大きな隔たりがあります。「認知症を理解」するには、実際の利用者さんと関わり、考え、学んでいく必要があると思います。これからも多くの利用者さんと関わり、学びながら前進していきたいと思います。

新生土屋は、重度訪問介護だけでなく、今後は高齢福祉のサービスにもチャレンジしていく計画があります。

新生土屋の「認知症支援」が「認知症を理解している」チームとして認知症の人を支えられるように、私も微力ながら尽力していきたいと思います。

 

プロフィール
高浜 将之(たかはままさゆき)

大学卒業後、営業の仕事をしていたが、2001年9月11日の同時多発テロを期に退職。1年間のフリーター生活の後、社会的マイノリティーの方々の支援をしたいと考え、2002年より介護業界へ足を踏み入れる。大型施設で2年間勤めた後、認知症グループホームに転職。以後、認知症ケアの世界にどっぷり浸かっている。グループホームでは一般職員からホーム長、複数の事業所の統括責任者等を経験。また、認知症介護指導者として東京都の認知症研修等の講師や地域での認知症への啓発活動等も積極的に取り組んでいる。現職は有限会社のがわ代表取締役兼医療法人社団つくし会統括責任者。

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