「化粧をとる」 / 長尾 公子

目の前で子供がスーパーヒーローを演じている。

私自身も幼い頃、テレビでスーパーヒーローを観ていた。変身のポーズを真似して遊んだりもした。「ひみつのアッコちゃん」、「聖闘士星矢」、「エスパー魔美」、「ちゅうかなぱいぱい」…etc. 走馬灯のように蘇る。

テレビの中のヒーローは、悪者に負けそうになっても頑張って戦い、やっつけていた。思い返してみても、テレビの中のヒーローも、変身した自分も、眩しかった。

大人になった今、100%「敵」と言える存在は、そして完膚なきまでにやっつけていい存在は、全くと言っていいほど居ないことに気づいた。

代わりに、社会の一員になるということは、「利益のために耳ざわりの良い言葉を言うことが“社会で働く上で避けて通れない”」ということを、少なからず身につけた。慣れ、覚え込ませた。そして時として疑いもなくそうするように振る舞いもした。

仕事の手を休め、テレビやネットのニュースで取り上げられる社会的問題を見る度に、「悲惨だな、なんとかならないかな」とは思うものの、「誰かどうにかしてくれないかな」という気持ちとセットで、自分の仕事や暮らしに精一杯であったことも、言い訳として言わせてほしかった。

幼い頃、戦うヒーローに憧れて真似た私も、もしそのヒーローの前に立ったとしたら、味方になるのだろうか、敵になるのだろうか。

さて、株式会社土屋は複雑に絡み合う社会問題を、少しずつでも着実にときほぐして行こうとする集団だと私は自負し、またそれを私自身にも課そうと思う。

誰かに頼むわけじゃない、「私もやるんだ」という気概。

これは自分に重荷となるプレッシャーではなく、幼い頃見た、スーパーヒーローが、負けそうになっても戦い続けるように、私も我が子が憧れる存在になろうとする。それだけで力が湧いてくるのだ。

もちろん必殺技で「倒す相手」は居ないし、格好よく変身するわけでもないけれど、社会がより多くの人にとって居心地が良いものとなるように、より多くの人が「明日も楽しみだな」と思って眠りにつけるように、少しずつでも、進めていこう。

眺めるだけで、拗ねてやらないより、よっぽどいい。

「そう思って働いていいと言える日が、2020年に来ますよ」と、スーパーヒーローへの憧れをどこかに押しやりながら化粧をした過去の私に、教えてあげたいと思った夜でした。

 

◆プロフィール
長尾公子(ながおきみこ)
1983年、新潟県生まれ。

法政大学経営学部卒。

美術品のオークション会社勤務後、福祉業界へ。通所介護施設の所長や埼玉の訪問介護エリアマネージャーを経験し、2017年、出産を機にバックオフィス部門へ。現在は3歳と0歳の子育て中。