新年新連載のお知らせ〜小さな自分を抱きしめて 序章〜 / 安積遊歩

新年あけましておめでとうございます。

世界を見渡すと、とてもそういうふうに言う気分ではありませんが、だからといって気分に従順であっても良いことはないので、ここは一応、私も新しい時間にいつも居続けたいという思いをこめて、あけましておめでとうを言いたいと思います。

ところで、2021年は、障がいをもつ私が障がいをもつ娘を、どんな考えと実践で育てたかの連載から始めます。

優生思想の中で私と同じ骨の脆いという体質をもつ子を産むということは、それだけで、あってはならないとされる大変なチャレンジではありました。そしてその娘は今年5月に四半世紀の年を迎えます。

彼女に毎回原稿を見てもらって、彼女からもときどきコメントをもらい、それも書き加えられたらなと思っています。

その連載をしようと思っている今、もう一つ気づいたことがあります。私の子育てにはモデルがいたということ。

一番のモデルは、私を育ててくれた母でした。彼女が私に対してしなかったこと、言わなかったことの数々と、してくれたこと、言ってくれたことのいくつかは、私と娘の関係の背景にいつもどっしりとありました。

私は親としてこうしなければならないとか、こうすべきという常識はみじんも娘との関係にありませんでした。振り返れば、母からも、それらの言葉は一切言われたことはありませんでした。それどころか子どもが親や周りの大人たちから言われる、もう泣かないでとか、泣いちゃいけないとかいう、涙をよくないものとする概念は、ひとつももらわないで済みました。涙を日常を生き延びるための友としていた彼女に脱帽する思いです。

また、子育てをするときに親が必ず子供に伝えることとして、人に迷惑をかけてはならないという言葉があります。多くの人がその言葉を言われ、聞き、苦しんでいるように思います。私の父も、兄や妹には何回か言っていた気がしますが、私には全く言いませんでした。人と助け合わなければならない状況のなかで、迷惑という言葉が迷惑なわけで、私はこの言葉を母親から言われなかったことを心から感謝しています。

もう1人の最高のモデルは、妹です。妹は私より2つ年下ですが、21歳で長男を産み、次男を24歳で、三男を28歳で産み、私が娘を産んだときには、その子たちは全員10代の素敵な少年たちでした。

妹はまるで、自分が私の娘を産んだかのように、ただただ無条件の愛を彼女に注いでくれました。自分の息子たちがちょっと年の離れた従姉妹を可愛がれるよう、娘のそばに居続けられる限りは、息子たちをい続けさせてくれました。それが可能だったのは、3人の息子たちは、全員が、当時の言葉で言えば登校拒否をしたからであったと思います。今は不登校と言いますが、学校で傷つけられなかった分、どの子も家事も育児も自分ごととしてやるし、人をケアする能力は、一驚に値するものがあります。

妹の子育てには、一切、男だから、男のくせに、男の子として、というジェンダー意識を形成する言葉は出てきませんでした。妹は妹自身が生まれた瞬間から、障がいをもつ私のケアをすることが自分の生涯の仕事だと言われ続け、その通りに育ちました。骨折や手術で体の痛みに苦しみ私のそばで、私が満足いくように介助をすること、その大切さが肌身に染みていた妹でした。ですから、3人の男の子たちには人をケアしながら生活すること、助け合うことの実践が暮らしの中でよくよく伝わったのです。

彼女が20歳の時、私は22歳で、障がいをもつ人の当事者運動に出会って家を出ました。彼女にとっては青天の霹靂で、自分の一生の目標を立て直すべく、彼女との結婚を望んだ男性とすぐに一緒になりました。そして次々と子どもを生み、私とは全く違う人生を歩み出したのです。

彼女はあまりにも十分出産と子育ての大変さを知っていたので、私が妊娠したとき、すぐにおめでとうとはいえないと沈黙してしまいました。しかし、私がもちろん産むということはわかっていたので、その後は常に最高の味方であり続けてくれたのです。

第1回目は母親と妹から学んだ子育てを書いていきましょう。

 

◆プロフィール
安積 遊歩(あさか ゆうほ)
1956年、福島県福島市 生まれ。

骨が弱いという特徴を持って生まれた。22歳の時に、親元から自立。アメリカのバークレー自立生活センターで研修後、ピアカウンセリングを日本に紹介する活動を開始。障害者の自立生活運動をはじめ、現在も様々な分野で当事者として発信を行なっている。

著書には、『癒しのセクシー・トリップーわたしは車イスの私が好き!』(太郎次郎社)、『車イスからの宣戦布告ー私がしあわせであるために私は政治的になる』(太郎次郎社)、『共生する身体ーセクシュアリティを肯定すること』(東京大学出版会)、『いのちに贈る超自立論ーすべてのからだは百点満点』(太郎次郎エディタタス)、『多様性のレッスン』(ミツイパブリッシング)、『自分がきらいなあなたへ』(ミツイパブリッシング)等がある。

2019年7月にはNHKハートネットTVに娘である安積宇宙とともに出演。好評で再放送もされた。