障害のある人たちの生活(その4) / 田中恵美子

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わたしがここまで取り上げてきた松田さん、恭子さん、沖田さん、川崎さんは(その1)で述べたように同じ地域に住んでいて、自分たちで小さなグループを立ち上げていました。

そこでは自分たちの地域で暮らし続けるための仕組をどうしていくのかという話し合いもしていましたが、地域のバザーに参加したり、イベントに参加したりと、社会福祉協議会の一室を借りて作業をしながら、様々な団体とつながりを作っていこうとしていました。

彼らは特に全国組織の障害者団体に所属しているような人たちではありませんでしたし、組織としても全国組織の傘下に入ることはなかったのですが、地域を拠点としたつながりを大事にしていました。

しかしその後、支援費制度の導入やそれぞれの生活スタイルの変化があり、その中でもなお自分らしい生活を維持したいという思いが結実して、介助者派遣の仕組を組織化することが必要になりました。

不慣れな中、手続きを進めて法人格を取得し、何とか小さな介助者派遣の組織を作りました。

2003年の制度改革は、こうした地域での活動の組織化を促進したと思います。

様々な団体に話を聞くと、その法人化が2003年前後であることが多く、松田さんたちと同様、自分たちの生活を守るために苦労しながら法人化という新たな一歩を踏み出した人たちがたくさんいたことがわかります。

障害のある人たちとのかかわりの中で私が学び、また彼らを尊敬することの一つに、自分たちの課題を自分たちで解決していこうとする姿勢があります。

当時私は、いわゆる障害者運動のリーダーと呼ばれる人たちとも交流がありました。

彼らはそれぞれにカリスマ性があり、個人的な魅力と共に説得力のある話しぶりで全国の障害者の立場を代弁し、必要な施策を求めて役人とも渡り合う、その強さに圧倒されることがありました。

しかし、そうしたいわゆるリーダーと呼ばれる人たちだけでなく、松田さんたちのような、地域に暮らす一人ひとりが自分の問題を解決するために行動を興していくのです。

たとえ、たどたどしい言葉であっても自分たちの思いを口にし、身近な行政の窓口で必要なことを訴えます。

むろん必要に迫られての行動ではありますが、それでも一つひとつの課題を投げやりにしない、自分たちの声を届けようとする姿勢に、見習うべきものがあると思っています。

今、周りを見渡してもたくさんの課題があります。私たちは、日々の暮らしの中でおかしいと思うこと、間違っていると思うことを飲み込んでしまうことに慣れてしまってはいけないと思います。

声に出して言うこと。解決するために行動すること。

本日付の新聞では、「選択的夫婦別姓『今年こそ』」という記事で、市民団体の事務局長、井田奈穂さんの記事が出ていますが、彼女は会社員。

Me Too 運動やKu Too運動、フラワーデモ…少しずつ声をあげる人たちが増えてきました。

本日の新聞でもう一ついい記事を見つけました。「時代を読む」という記事で、リーダーについて取り上げています。その最後の部分を引用したいと思います。

「小説家の梨木果歩さんは、『ほんとうのリーダーのみつけかた』において、むしろ自分の中に『リーダー』を探せとアドバイスする。誰よりも自分のことをわかってくれた上で、時には厳しいことも言ってくれる内なる声、これこそが『ほんとうのリーダー』である。ソーシャルメディアにあふれる言葉に振り回される前に、自分の中で静かに対話を行い、付和雷同しないことを梨木さんは求める。すべてを解決する救世主的なリーダーを求めるより、まずは自分自身の内なる声に耳をすますこと、そのうえで『自分はこう思う』としっかり声をあげること。そこからしか、リーダーの再建は不可能ではないだろうか」(宇野重規 東大教授)。

新成人の祝いの日、折り返し地点を過ぎたおばさんからのお祝いの言葉は「自分の中にリーダーを探せ」。私自身のこれからの生き方もそうでありたいと思います。

そして「次世代のため」(井田さん)、少しでもましな世の中になるように声をあげることが大人の責任かなと思います。

そうそう、上の引用文、孫引きはいけませんよね。梨木さんの本、ちゃんと読まなければ。

 

◆プロフィール
田中 恵美子(たなか えみこ)
1968年生まれ

学習院大学文学部ドイツ文学科卒業後、ドイツ・フランクフルトにて日本企業で働き2年半生活。帰国後、旅行会社に勤務ののち、日本女子大学及び大学院にて社会福祉学を専攻。その間、障害者団体にて介助等経験。

現在、東京家政大学人文学部教育福祉学科にて、社会福祉士養成に携わる。主に障害分野を担当。日本社会福祉学会、障害学会等に所属し、自治体社会福祉審議会委員や自立支援協議会委員等にて障害者計画等に携わる。

研究テーマは、障害者の「自立生活」、知的障害のある親の子育て支援など、社会における障害の理解(障害の社会モデル)を広めることとして、支援者らとともにシンポジウムやワークショップの開催、執筆等を行い、障害者の地域での生活の在り方を模索している。

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