地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記⑩ ~介護用リフトをフル活用した生活とは~/ 渡邉由美子

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私は電動車椅子に座っていると、割と発語がはっきりしていることと、脳性麻痺特有の症状が目に見えにくい為、ともすると障がいを必要以上に軽度に見られてしまいます。それが、物心ついた頃からの永遠の悩みの一つともなっています。

車椅子に座っていること一つにしても、左側の脇にクッションをあてがって横に倒れたりしないように工夫したり、お尻がずっこけ座りにならないように、鼠径部にビーズの入った特製の紐を用品屋さんに作ってもらって縛り付けたりしながら座位を保持している状況です。

長い時間座っていてお尻が痛くなったり違和感を感じても自分で1ミリたりとも動かす事は出来ず、介護者が全時間派遣されていなかった頃は、鼠径部を縛っている紐のところまで身体がずり落ち、もう少し落ちたら首を吊って死んでしまうのではないかと本気でヒヤヒヤしながら暮らした日々もありました。

ベッドや床に座ることは出来ないので、車椅子を降りると一本の棒のように身体がなってしまい、寝返りも自分では打てないので文字通り寝たきり状態となってしまいます。

そんな身体の状態なので、毎日のトイレ介護やベッド移乗、入浴介護など、どうしても身体の移動を伴う介護が必須なのです。

自立生活を始めて6年目ぐらいまでは、家族と同居していた時代も含めて、この身体を物から物へ移動する介護は人力で抱えるという方法で行われてきました。

私の介護に入れるか入れないかの分かれ道は、この抱えが1人で安全に出来るか出来ないかで決まる状況でした。

最初は20代の若い介護者を中心に抱えることが出来るということで、私の介護をしてもらっていても、月日が経つに従って蓄積される疲労と無理がたたり、「腰が痛い。」「膝が痛い。」など介護を続けられない故障が続出し、それが理由で退職になってしまい、介護人材不足が著しくなり生活が立ち行かなくなる状況となりました。

このような問題を解決する為、最初は1キロでも体重を減らそうと思い、食べたいものも極限まで我慢してみたり、ひどい時には水分までなるべく摂らないようにしてトイレの回数を減らす努力をした時代もありました。1キロ、2キロの増減に一喜一憂して生きた心地のしない生活をしていたこともありました。

そんな時、その当時使っていた介護派遣事業所のコーディネーターから「介護用リフトを導入して、もっと人間らしい生活をしてみないか。」という提案がありました。
「女性介護人材の派遣がこの介護用リフトを活用しなければ継続出来ない。」という私にしてみれば青天の霹靂とも言えるお話でした。

最初は物凄く抵抗感があり、私はUFOキャッチャーのぬいぐるみではないのだし、介護者がいて欲しい理由のトップは、「自分で自分の身体を移動させられないが為に、出来ない日常生活動作を手伝ってほしい。」ということなのに、介護者が来ても移乗介護をしないとは何事だ!ぐらいの勢いで猛反対した記憶が今でも鮮明に残っています。

今でも100パーセントはリフトを受け入れられてはいない心情もある為に、出来るときには外出時2人介護にして、2人介護ならばということでトイレに移乗させてもらったりしてしまうのです。

そんな状況下で10年以上使った介護用リフトが年末に動かなくなり、修理をしようと業者に電話したところ、完全に直すことは経年劣化もある為、「出来ない。」と言われてしまいました。

現在、お風呂場とトイレが共通で1台、ベッドの移乗の為にもう1台介護用リフトを設置している関係で、ベッド用のリフトは年数が経過すれば修理は出来ないものの、交換は公的制度で可能となっています。

ですが、お風呂場とトイレのリフトにはそのような保証がなく、新品と交換する為には、数十万とも百万とも言われる業者言い値のお金が必要と分かり、今、とても困っています。

抵抗感は完全には消えていないとは言っても、生活必需品になっている介護用リフトが、設置の時は住んでいる自治体から助成金が支給されるものの、故障した時の修理や、修理が不可能になった時の新品交換には全額自己負担で行わなければならないという社会保障制度の矛盾が浮き彫りになりました。

電動車椅子や補装具は耐用年数を過ぎれば交換できる制度があるのに、介護用リフトはそれがなく、修理も自己負担となってしまいます。
何故なのか大きな疑問を抱かずにはいられません。
重度の障がいがあって、移乗をする為にどうしても必要な介護用リフトが修理できないことは死活問題です。

社会福祉法人のような施設ならば、多額の費用も経費で出せるかもしれませんが、地域で生きる重度障がい者はとても財力が厳しく、交換や修理のお金を生活費から捻出することは困難なのが現実です。
ノーリフトの介護が推奨される現在、介護用リフトの修理も車椅子並みに保障して欲しいと願うばかりです。

ただでさえ介護人材不足で、抱えられるか抱えられないか、体力的に継続できるかなどで人材を選別していては地域生活は破綻してしまうのです。
お互い身体に無理がかからず、体力的に余裕のある介護は地域生活の安定に欠かせない一つの要素だと私は思います。

是非、介護用リフトの修理という社会保障の項目を増やしてもらいたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

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