地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記⑮~自立生活を支える介護保障制度の変遷に思うこと~渡邉由美子

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1月の初旬頃、真冬の寒さが連日続き、日本海側では豪雪に見舞われ立ち往生する車の車列のニュースを観て、私たち重度障がい者は毎日生きていることそのものが動けなくなった車列と同じような状況なのではないかと最近しみじみと思います。

なんの制度の裏付けもなかった諸先輩方は、耐えがたきを耐えながら施設や病院ではなく地域で暮らす生活を勝ち取ってきました。公的保障の根源ともされる「脳性麻痺者等全身性障害者介護人派遣事業」は現在の重度訪問介護に通ずる制度であります。

全身性障害者介護人派遣事業から日常生活支援という名称となり、重度訪問介護に変容され、名前が変わる度に少しずつ改良され、制度が成熟していき、時間数が増え、地位間格差は大きいものの、交渉に交渉を重ねれば重度障がい者の日常生活を支え、生き方の選択肢を広げる制度となりました。

まだまだ声を上げることが出来ない当事者や、地方自治体の財政がない所では生活を支えることが難しい場合も多々あるのが現実です。しかし、こんな制度が曲がりなりにも築き上げられてきたのは、諸先輩方の血の滲むような命がけの闘いが成し遂げてきた結果です。

その努力の礎の上に今第2世代、第3世代以降の当事者の暮らしがあり、介護保障制度のみならず生活を成り立たせるための生活費を支える公的年金や公的扶助、そして最後の砦であるセーフティーネットの生活保護制度に裏付けられて、いわゆる一般就労が難しくても地域生活を選択することが選択肢の中にやっと位置づけられて、40年近くの月日が流れて今現在を構築しています。

支援費制度は青天井の公的介護制度と言われ、一瞬喜ぼうと思ったのも束の間、予想以上の利用者拡大と利用上限以上の利用希望の殺到によりすぐに財政破綻を来たし、厚生労働省から廃止の通達が出されたときには、真冬の寒さの中、厚生労働省前にたくさんの重度障がい者が廃止にされたら生きていけない、死活問題だと抗議の声を声高に上げました。

その結果実現したとされる自立支援法というものは、名前だけはあたかも私たちの思いをダイレクトに実現するかのごとくでしたが、最初、利用時間に応じて自己負担が生じる制度であったことや、利用時間数の抑制を強く求められる制度であったために、私たち当事者の間では自立支援法ではなく自立阻害法だとよく言ったものでした。

その後、現在の障害者総合支援法に基づく重度訪問介護の制度によって、今私たちは生きています。しかし、これもいつまで続くか分からない様相を呈しています。

政府は「我がこと丸ごと地域共生社会」という、これまた名前だけ聞けばとても良い制度が出来るかのごとくの制度を数年前に立ち上げています。少し中身を見てみれば、保育も障がい者の介護も、その障がい者の親世代の高齢者介護も一か所で、一元化して同じ職員がフロアーごとに対象者を分けて少ない人材で介護しようというコンセプトなのです。

親なき後問題が心配されることに上手く付け込んで、子どもである障がい者とその親である高齢者が一つ屋根の下で死ぬまで一生一緒に暮らせる安心の場であるというようなキャッチフレーズを謳い、小さなときから人を思いやる気持ちの育成、差別のない社会を作っていくために子どもたちも共に育つ環境、と美しい理想の絵図を掲げて作られている制度です。

しかし、よく考えてみると財政逼迫の背景の中で障害のサービスと高齢の介護保険を体よく一元化し、社会保障費のかかる障害の制度を廃止した上で介護保険に統合するという地獄絵図が見え隠れして、水面下でそれがどこまで現実のものになっているのか見えないように隠しながら進行されているのが恐ろしい限りです。

40年以上もかけて闘ってきた障がい当事者の意思に基づく真の自立生活が、今まさに共生という綺麗なキャッチフレーズを用いて崩されようとしていることをひしひしと身に沁みて感じています。

介護保険統合は私たち当事者が何度も反対し続けていることです。その抗議行動が、目に見えない一見安心・安全を担保し、全てのことが丸く収まるかのような幻想を抱かせる構想によって打ち崩されようとしています。

法律が完全に出来上がってしまっているのではないか?という話も聞こえてきている中で、そうそう簡単に私たちが今暮らしている制度を崩されないように原点に立ち返り、一人の力は弱くても仲間同士団結して真の地域生活や自立生活を障がい者運動によって再構築する時が来ていると、私は思えてなりません。

昔の様に私たちの介護を日々担って下さっている介護者も、自分たちの所得保障と給与アップのためにも障がい当事者と共に要求運動を行って欲しいと思います。

かつての脳性麻痺者を中心とする障がい者運動を牽引して生きた諸先輩方のように自己主張を明確に強く行う姿勢をもう一度取り戻し、時には手段を択ばず行動する中で、綺麗事に惑わされて足元を掬われない努力をしながら現在の生活をよりよく継続していきたいと思います。

若い障がい当事者の皆さん、ぜひ障がい者運動に身を投じてみませんか?運動はずっと続けていかなければ必要な公的保障制度は得られなくなってしまいます。共に、この社会で生き続けるために活動する同士を求めています。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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