災害と障害① / 田中恵美子

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先週(もう!先週!)、岡山の本社を訪ねる機会を得た。これまでもオンラインでは顔を合わせ、率直な意見を交わしてきたが、今回はかなりの時間を共に過ごすことができたことで、参加者それぞれに理解が深まったと思う(何より代表が天然であることがよく分かった)。加えて新たな出会いもあり、今まで行きたかったところにも訪問でき、大変素晴らしい経験をさせていただいた。心から感謝したい。

思い起こせば非常に多くのトピックスを話していたのだが、その中に出てきたことの一つが、真備町の水害の話だった。私は知的障害のある人の結婚や子育ての研究をしており(それもしてます)、その関係で真備町の水害のことはとても深く印象に残っていた。

2016年(だったと思う…)NHK ハートネットTV で、女性障害者の生きづらさについての特集が組まれたことがあった(これはこれでまたトピックス)。その時、知的障害のある女性がシングルで子育てをしており、彼女が住んでいたのが真備町だった。

番組には視覚障害のある女性や脳性麻痺の女性も出演しており、それぞれに結婚、子育てをしていたが、結婚当時親や周囲に反対され、支援者も得られない中で夫に支えられ、あるいは一人で結婚、子育てをしていたということだった。

しかし、知的障害のある女性は家族には反対されたが、理解のある支援者を得て日々を暮らしている様子が描き出され、「羨ましいです」と他の人に言われるような、いわばモデルケースとして登場していた。

この番組の存在を知ってはいたが、きちんと理解していなかった私は、2017年に授業にお呼びしたゲストスピーカーにこの映像を見せられ、ハッとしたのだった。知的障害者の結婚・子育ての事例は、対象は点在しており、あるいは顕在化しておらず、どこにいるのか、どこにもいるのか、という状況で話を聞くのは大変なのである。

一部の支援組織につながっている人たちを除くと、ケースが顕在化することは稀なため、そういう人がいる、と聞くと様々に連絡を取って話を聞きに行くというゲリラ的な手法でインタビューをしていくしかない。このケースについても、即刻行かなくては!と思ったのではあったが、2017年のうちに伺うことはできなかった。

翌年、2018年、同じゲストをお呼びした時はすでに水害の後だった。私も心配はしていたが、避難生活が大変だろうなと思いつつ「彼女はどうされているのかしら」とお聞きしたら、亡くなっていたのだった。絶句した。そしてそのことを取り上げた番組が2018年10月30日にハートネットTVで放映された。

たくさんの支援者に支えられながら、避難所の中学校がわからず、自宅で亡くなった母子。災害と障害について考えさせられるテーマだった。

東日本大震災からちょうど10年が経過した3月11日に岡山にいたという偶然と重ね合わせて、しばらくこのテーマで書いてみたいと思う。

 

◆プロフィール
田中 恵美子(たなか えみこ)
1968年生まれ

学習院大学文学部ドイツ文学科卒業後、ドイツ・フランクフルトにて日本企業で働き2年半生活。帰国後、旅行会社に勤務ののち、日本女子大学及び大学院にて社会福祉学を専攻。その間、障害者団体にて介助等経験。

現在、東京家政大学人文学部教育福祉学科にて、社会福祉士養成に携わる。主に障害分野を担当。日本社会福祉学会、障害学会等に所属し、自治体社会福祉審議会委員や自立支援協議会委員等にて障害者計画等に携わる。

研究テーマは、障害者の「自立生活」、知的障害のある親の子育て支援など、社会における障害の理解(障害の社会モデル)を広めることとして、支援者らとともにシンポジウムやワークショップの開催、執筆等を行い、障害者の地域での生活の在り方を模索している。

 

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