私のビジョン~制度・業界を変える~ / 吉田政弘(専務取締役兼CFO 最高財務責任者)

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私は重度訪問介護のことを知らない方にお会いした時、必ずお伝えする事がある。

「安心してください。病気などでどんな状態になったとしても、人工呼吸器を付けることになったとしても、最期まで自宅で生活することができます。」

私がこの言葉をお伝えした時、多くの方が「私の親は最期は病院(施設)でしたが、家に帰りたがっていました。。。」と身近な方の最期を思い出し、「(親が病気の時に)重度訪問介護を知っていればな、、、」という悔恨の念と同時に、自分はこの制度を知れて良かったという気持ちになってくださる。

なぜ私がこの言葉をお伝えするかというと、まさに私が初めて重度訪問介護の現場に入ったときに感じ、大きな衝撃を受けたと同時に、自分自身の将来に大きな希望と安堵を感じたからである。

この重度訪問介護の仕事に出会うまでは、「大病を患ったら最期を迎えるまで病院」という考えは私の中で「当たり前」のことであったし、自宅で生活をするというような選択肢さえ考えたことが無かった。

そもそも自分の「最期」を真剣に考える機会も少なかったし、「絶望的な気持ちのまま病院で時間の経過を待つ」という選択肢しか持ち合わせていなかったため、もしもそのような状態になった時に「楽しく有意義に生きる」という発想さえ浮かばなかった。

「(大病を患っても)自宅で最期まで有意義に生活できるんや!」

私にとって衝撃的な発見であり、これまで本能的に考えることを避けていた「死」という真っ暗だった分野に希望の光が差す感覚を感じた。

この発見は多くの人に伝えてあげる必要があると思い、私はこの重度訪問介護の業界に従事することを決意した。

そんな私のビジョンはこの重度訪問介護の制度やこの業界をより良い方向に変えていくことである。

凄く大きなビッグマウスのように感じられるかもしれないが、実は新生土屋は既にその責務を負っている。
新生土屋で働く社員にとっては個々人が認識すべき共通目標であり、新生土屋という会社にとっての「社会的責任(CSR)」と言っても過言ではない。

なぜ、制度・業界を変えることが新生土屋の責務なのか。

あまり腑に落ちない方もいらっしゃると思うので、またまた私の過去の経験をお話させていただきたい。

私は経済産業省中小企業庁というところに2年間出向していたことがある。
そこでは国会・国会議員の動き方や官僚(国家公務員)、地方自治体の動き方、財務省の国家予算に対する考え方、国会で法律、制度が出来上がるまでのプロセス等を体験してきた。

私も霞が関に出向するまでは、「法律や制度は東京大学卒業の官僚が決めるものであり、一般市民はそれを守るだけ」と考えていたが、2年間の出向でそうではないことが分かった。

確かに法律の条文を記載するのは官僚だが、官僚はその対象のことを全く詳しくは知らない。

1つの法律の条文を書くために、あらゆる有識者にヒアリングをし、その業界における先駆者やオピニオンリーダー、業界団体にヒアリングをし、現場見学をし、それらの有識者や団体等を集めたワーキンググループや審議会を結成して何度もその審議会で議論してもらい、そこで出た結論を踏まえてやっと法律の条文を記載しているのである。

つまり、その業界のことを最もよく知っている「民間の声」が法律や制度の骨格を作っている。

考えてみれば優秀な大学を出たからと言って国の法律や制度が作れる訳はないが、私はこの2年間の出向で上記のプロセスを目の当たりにするまで、法律や制度は御上から与えられるものという感覚があった。

そうではない。法律や制度の骨格を作っているのは「民間の声」であり、その制度を運用し、その制度に歪みがあるのであればそれを修正し、業界を良くしていく責任を負っているのも「民間」である。

では、重度訪問介護の業界でその「民間の声」を発信していく責任を担っているのは誰かと考えた場合、北海道から沖縄まで全国に展開して国内でのサービス提供時間の一定割合を占め、国内の多くの自治体との関係性があり、重度訪問介護の制度を作ってきた方々も応援してくださっている新生土屋にはその責任が確実にあると考えている。

既に全国障害者在宅生活支援事業者連絡会(全事連)を通じて厚生労働省とも意見交換等の場を設けて声を届ける活動を行っているが、これからも新生土屋としてこの社会的責任を認識し、現場の声を届けていきたいと考えている。

最後に、「より良い方向」とはどっちの方向だろうか。

私の中でその方向は、
「(大病を患っても)自宅で最期まで有意義に生活できる」方向である。

グレーゾーンが多すぎてクライアントの立場から考えて「してほしいことがしてもらえない」という問題があるのであれば、それが出来るように制度を変えていく。

クライアントの立場から考えて「重度訪問介護を受けてもただ日々を過ごしているだけで生きがいはない」と感じてしまうということであれば、日中活動を有意義に過ごしていただけるような新規事業(デイサービスや就労支援施設等)を考えていく。

プレッシャーの大きさや給料の低さによってサービスを担うアテンダントがいないという歪みがあるのであれば、アテンダントがいっぱいこの業界に入ってくるように待遇面や業界の見え方を変えていく。

新生土屋の職員の方にも、
「今の制度のままで、自分が将来どんな病気を患ったとしても有意義に生活していくことができるか?」と自身に問いかけていただき、日々直面する問題点等があれば、新生土屋のメンバーとして声を上げていただきたい。

私たちは業界のオピニオンリーダーとして、制度・業界をより良い方向に変えていく責任を負っている。

 

◆プロフィール
吉田 政弘(よしだ まさひろ)
1982年生まれ、和歌山県育ち

森友学園通園に始まり一橋大学経済学部卒。大学卒業後は銀行、経済産業省中小企業庁、経営コンサルを経て介護の世界へ。株式会社土屋ではCFO最高財務責任者に就任。楽しくなければ仕事じゃないがモットー。趣味はバレーボールとピアノ、ギター、ベース、ウクレレ等音楽鑑賞、演奏全般。

 

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