地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記⑲~重度な障がいをもちながら電子機器を使いこなすのは難しい~ / 渡邉由美子

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私は先日、携帯電話を某携帯会社からiPhoneに買い替えました。以前から若い学生ヘルパーがほとんどiPhoneなのを見ていて、今書いているような文章書きにしても、介護に穴が空いたときに急遽探すにしても某携帯会社よりはiPhoneが良さそうだと思い、買い替えることを決意しました。

現在のようなインターネット社会においては何とか曲がりなりにも電子機器社会に付いていこうと必死にもがいている私です。しかし苦手感の意識とハードルは、依然拭い去れず、日進月歩で進んでいくこのデジタル社会にいつまで付いていけるか全く自信がありません。

そんな中でより手伝ってもらいやすい環境を自分の身近に作り出したいと考えたのです。考えるのは簡単でした。しかし、それを実現するには重度障がい者特有の困難さから、普通の人でもみんな苦労する事柄まで本当にたくさんのハードルがありました。

私は無料アプリLINEやFacebookなどのアプリを毎日駆使しながら週に2、3日はその連絡によって介護のシフトを埋めて生活しているのです。

「そのような状態なのに。」某携帯会社からiPhoneに移行しようと思ったらトーク履歴が全部消えてしまい、アカウントによる友だちの繋がりしか移行できないシステムとなっているという事実を知りました。

トーク履歴は私にとって軽い会話ではなく、たくさん繋がっている人、一人ひとりとの人間関係の状態を表しているものなのです。

そういう特殊事情なので、どうやってトーク履歴のバックアップを取るかにとても深く悩んで、膨大なトークを全部一人ひとりパソコンでコピーして打ち込みながらWordに残すという気の遠くなるような作業をして、ここまで情報を残しておければ移行してトークがすべて消えても、パソコンに残っている情報を頼りにその人一人ひとりとの繋がりをキープできると思えるようになって初めて某携帯会社のショップに行ってiPhoneをゲットすることに成功しました。

この情報化社会に、データの移行が他社のアプリだからとか、スマートフォン自体が他社の製品だからという理由で全く互換性がなく、情報共有が極めて困難である現実に正直絶句しました。他社の製品といいつつ某携帯ショップでiPhoneを販売しているのですから、私には大変滑稽な状況としか理解できませんでした。他社製品に乗り換えられるのを阻止したい企業利益だけの理由と思えてなりませんでした。

しかし、上記に述べたようなことは重度障がいとは関係なく万人が他社から他社への携帯電話に移行しようとするときにぶち当たる壁ですし、そこまで重いトークをするためのツールとして開発したアプリではないと言われてしまえばそうなのかもしれないと釈然としないまま、アナログにバックアップを取り、いざ某携帯ショップへ行って新しいiPhoneを買おうとしたのです。

ここから先は重度障がい者特有の問題が多発しました。携帯ショップの予約の時点では90分で機種変更ができるとされていました。しかし、私は今から述べる様々な理由で4時間余ショップに入り浸ることとなり、ずっと欲しいと思っていた物が手に入った喜びよりも遥かに疲労の方が大きいという状態となりました。

まず1つ目は、機種を決めるための説明を受けたときに、その説明が分かりましたとか、説明を承諾して携帯を買い替えることに同意したという意味で一個の説明が終了する度に自筆で署名をしなければならない場面がたくさんありました。

私は汚い字でも署名をすることが可能であったため事なきを得ましたが、知的に障がいがあったり視覚に障がいがあったり、様々な理由で文字を書くことが出来ない人たちはどうするのだろうかと思いました。

様々な経緯があった後、最終的には介護者が署名することは何ら問題ないという結論に落ち着きました。窓口対応している人は、問題がないことを知らなかったのです。そのような社内のルールであることを社員に周知徹底してほしい旨をお願いしてきました。何をするにも普通にしたいと思いながら、重度障がい者の立場を伝えなければならない状況が発生してしまうのは本当に悲しいことです。

私と同じ時間にショップにいて様々なことを問い合わせしているのは大半が高齢者で、使いたいけれどもなかなか付いていけないという人たちなのです。LINEの会社の問い合わせは完全にメール問い合わせ。電話、オペレータはいないという状況なのです。

みんなが使えるデジタル機器を本当にこの社会の中に浸透させていくためには、弱者が取りこぼされないシステムをパソコン、携帯、タブレットなどすべての物に考えてもらいたいとつくづく思いました。

今、テレワークが恒久的に推奨されています。おうち時間をアプリから得られる楽しみによって全ての人が享受して、そこから最新の情報も簡便に得られるようになってほしいと思いました。

重度障がいがあってもカフェの店員が出来る、そんな時代が来ている社会で、得意ではない人たちもデジタルの恩恵を受け続けられる全体のシステムを考えてほしいと思います。

もちろん自分で勉強する、使いこなしていく努力はある程度した上で、自助努力では解決できない人たちを救う企業や政府の施策であってほしいと思います。

音声入力などの制度の開発もとても期待したいところです。せっかく買ったiPhoneなので、使いこなして楽しみ、人との関係をより深く、広くネットワーク化するツールとして自分の生活の中に取り込んでいきたいと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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