目の前にあった答え / 古本由美子

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私は高齢者と障害者の訪問介護歴6年目の介護福祉士です。自分も含め周りとの会話で時々出てくるのは、現場での各種ハラスメントが負担であり、それに悩んでいるという話です。

一般的には「介護業界でのハラスメント」というと、ケアする側がケアされる側にすることのようですね。
ケアする側が「強者」でケアされる側が「弱者」であって、施設や家の中で「弱者」である当事者が受けた虐待やハラスメント等がニュースで流れる一方、自分の周りやネットのSNSで介護従業者が集まると「自分たちが受けているハラスメント」の悩みが沢山出てきます。

お互い「ハラスメント被害にあっている」と言う事ですよね。
高齢者でも障害者でも、アテンダントを自分より下の人間だと思い込んでいる方がいらっしゃいます。例えば、今まで働いてきた他事業所のクライアントの言動の一部を書いてみます。

訪問時に「介護のお給料って安いんでしょう?生活のためには仕方がないわね。貧乏暇なしね。」と口に出す方もいらっしゃいます。言わないまでも話の端々で介護職は社会的位置の低い職業だと決めつけていらっしゃる方も結構多く見てきました。もちろん、ちゃんと理解してくださっている方がほとんどですが。

「あなた程度の人に私の世話をさせてあげるのだから、ちゃんと勉強して私を大切に扱いなさい。」
「私が一度言ったらちゃんと理解して。二度目を聞かないで。言われたらさっさと全てやりなさい。」
このような召使いに対するような態度の方も時々いらっしゃいます。

「ちょっとこっち来て抱っこさせて。ご主人に怒られちゃうから黙っていれば良いよ。」(体位変換時にいきなり腕をつかまれ引っ張られて)
これは下半身不随の男性で、全力で振り切りその場は笑顔で離れましたが、速攻で男性アテンダントに変更してもらいました。

大半の場合はその後何度か伺う内に、職業差別が間違いだという事と、自分との関係性を理解されます。

さて次は、逆に我が家が利用した時のこと。介護のお仕事を始めるずっと前の出来事です。
私は娘を出産時、切迫流産・早産で妊娠4か月後半から産むまで寝たきりで過ごしていました。私は入院をせずに、重度障害者の夫がNPO法人にお願いして週3日、16時~18時の2時間で買い物と料理と掃除という内容の自費契約をしてくれました。

初日は、手伝いに来てもらうのが初めてのこともあり、かなり戸惑いました。世話好きそうな年配女性が担当になり、私がメニューを考え買い物メモを用意したのですが、マンションのすぐ傍のお店での買い物に1時間以上使い、時間が過ぎても夕食が出来上がらない。その後、料理を出してから掃除機を掛けようとしたので、食べている傍で掃除機はやめて欲しいとお願いし、初日は掃除無しで(その後も、掃除機は二度と掛けてくれませんでした)、彼女のおしゃべりも入れて2時間オーバーで、20時を超えて帰って行きました。

その後も毎回時間オーバーするので、「お願いしている時間内でやって下さいね。」と伝えても、「私は一人暮らしで時間が遅くなっても大丈夫。気にしないで!」との返事。 いやいや、あなたに気にして欲しいのヨ。

ある日、お刺身なら調理なしだから良いだろうと頼んだら、パックのまま、蓋も取らずにテーブルにポイっと出しました。色々なお宅があると思いますし、勿論、お弁当などを買って外で食べる時は良いのですが、私たち夫婦は買ってきたパックのままで食事をする習慣がありません。お皿に入れて欲しいと言うと、お刺身をお皿に入れて不貞腐れたようにテーブルに置いた後、台所でガチャガチャと大きな音で洗い物をしはじめ、ガラスコップを割りました。

「弁償します」とおっしゃったのですが、コップなんて安物でしたし、彼女も怪我をしなかったので良いのです。
でも、「親切にしてあげているのに、不平を言ったのが許せない」というその態度に、心の中で「頼んだ通り、掃除機掛けて、買い物して、夕飯作って、そして早く帰って!」と叫んでいました。

こういったことが週3回。無事に赤ん坊を産みたいから、絶対安静にしていなくちゃいけないから最低限の家事をしてもらいたいだけなのに、大きなストレスと嫌な気持ちだけが残りました。

この時、求めていることと一致していない・・・。そして、それを理解してもらえず「してあげている」という言葉と態度だけ押し付けられていると感じて、それを伝えることを諦めて、最終的には怒りだけが残ってしまったのだな。と、今は冷静に考えられます。

おかげで、自分が介護の仕事の中で「してあげている」と思わない、何を求めているのかをよく聞く、という事を守る戒めになっています。あの経験も糧になったので「良し」としましょうか。

そして、時々生じる、お互いに敵なの?と思うような関係がなぜ起こるのだろう?両者Win – Winで、お互いが良い関係ならばうまくいくだろうに、なぜ攻撃から始まる人がいるの?その時どうすればいいの?という解決の難しそうに思えたものが、㈱土屋のミッション・ビジョン・バリューを読んで、答えが書いてあると感じました。

「探し求める小さな声を ありったけの誇らしさと共に ~中略~ その期待がかなうよう、強い意志と、他者の痛みに共感せざるを得ない優しさをもって、仲間と共に歩んでゆく。私たちが担う社会的責任の重さを自覚し、最大限の誇らしさと共に。」 

ミッション・ビジョンそして12項目のバリューをよーく読んで、アテンダントとクライアントが自他共に誇りをもって仕事が出来れば、見下されることもなく、見下すこともなく、「強者」も「弱者」も無い良好な関係の中で、両者の時間を共に有意義に過ごせるのではないか、と夫がよく話しています。

私も、50歳を過ぎた今、仕事で悩んだ時にはこれを何度でも読み返そうと思います。争い事には何の益もありません。
人生の時間は限られているのですから。

 

古本 由美子(こもと ゆみこ)
本社

 

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