地域で生きる/21年目の地域生活奮闘記㉒~重度訪問介護で得られる自由な暮らし~ / 渡邉由美子

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先日、パソコン修理というどうしても急がなければならない用事ができたので、久しぶりにプライベート的な外出をしました。銀座に修理店があったため、ちょっとお呼びでない感じで気おくれのする街に足を踏み入れてみました。

パソコンの修理をするビルには、建物が古いということもあり、まさかの今どきエレベーターがないという久々の事態に遭遇し、ちょっと戸惑いながらも昔はいつもこれが当たり前で、目的地に行けることの方が少なかったことを懐かしい感覚として思い出しました。

要件そのものは介護者に頼んで事なきを得ましたが、都会の真ん中で銀座と言えば誰もが知っている場所なのに、バリアフリーがないのはあり得ない!と思いましたが、「今日は闘わない。だってプライベート外出だから。」と心に決めてその場をスルーしました。

世の中への問題提起は必要ですが、活動としてやるべき時と今日はいいやのメリハリをつけないと疲れてしまうので、止めておきました。しかし、機会があったら問題提起しなければならない場所だとは思いました。

パソコンの修理はその場ではできないので、その日は預けるだけであとは銀座散策を楽しんだ感じになりました。何をするにも相場の値段が高く、戸惑いましたが、お客さんの少ない飲食店でのんびりと食事をすることができました。

今はもうこんな思い付きの急な外出ができることもいつしか当たり前で暮らせるようになりましたが、家族と一緒に暮らしていた頃は住まいが東京ではなかったこともあり、若い時にはいわゆる東京の若者が行く新宿・渋谷・原宿・銀座などは行ってきた姉妹の話を聞いて、一度でいいから行ってみたいと思う憧れの地でした。

それが重度訪問介護の恩恵を受けて、東京に一人暮らしで移り住んで以来、行こうと思えばいつでも行ける場所になりました。いつでも行けると思うと、どうしてもの用事が無いと行かないという自己矛盾がありますが、経済的なことさえコントロールできれば、もう少し生活を楽しむといった視点で制度を活用してみるのも良いなぁとつくづく思いました。

少し以前の話になりますが、ちょうどこのぐらいの3月下旬に差し掛かる頃に今まで介護者として関わってくださった方がやむを得ない事情で退職されるということになったとき、日常は行くとしても一皿100円の回転寿司しか行かない私が、今日は最後の思い出作りだし、その人との限りある時間を大切に楽しみたいという趣旨からいつもよりは少し高級な寿司屋に行こうと決意して、お店を予約するためスマートフォンで検索を始めました。

ところが、私の160㎏あるリクライニングもできる大型の電動車椅子が入れるお店がなかなか見つかりません。和風のお店は入り口も石畳になっていたり、靴を脱いで小上がりにあがっていき掘りごたつでくつろいで食べるような雰囲気だったりと、候補として挙げられるお店もなく、とても困りました。

生活を楽しみたい、人生を充実させたい思いと裏腹に、まだまだ車椅子から降りることは難しいという条件の中で計画性もなく、ふらっと気軽にどこへでも行くというわけにはいかない現実を感じざるを得ない状況にげんなり、うんざりしながらも、私は天性の明るさと外出をしなければ死んでしまうみたいな強い気持ちが勝るので、最終的には様々な妥協もしながら相対的には目標を達成し、ご満悦で楽しい会話をしながら別れなければならない人たちと良い時間を過ごすことで、明日からまた大変でも生活していく英気を養っているのです。

気の弱い障がいをもった人があまり外には出たくない、家の方が気兼ねないと言いたくなる気持ちも分からなくはないと私も歳を重ねてきた中で思うようになりました。希望の飲食をしたいというだけでバリアフリーと書いてあっても事前調査しないといきなりは行けない面倒くささは障がい者の暮らしを知らない人には解らないことなのだろうと思います。

でも今は重度訪問介護が割と障がい者の個別性に合わせた生活支援をする制度であるという点を運動の歴史から死守してくれているので、人として当たり前の自由度を確保できています。

しかし介護保険の制度の運用と混同している役人が沢山いるので、来客のお茶出しはしてはいけない!とか大掃除はしてはいけない!ペットの世話もできない!など制約を付けられそうな感じになっていくのです。

来客にお茶が出せなければ、楽しい友達とのおしゃべりもできないことになり、植物の世話ができなければ心の安らぎを得ることもない、生活に潤いがないこととなってしまうのです。

重度訪問介護でやっていいこと、悪いことなどというとんでもないパンフレットを配っている自治体を最近把握して、東京都がそれは間違いであったことを謝罪する一幕もあったりする世の中で、制度が出来た時のことを知らない世代の役人が制度運用をしているので油断も隙もあったものではない、常に現状維持の楽しく暮らす生活を継続するためにも制度交渉は続けていかなくてはならないと改めて痛感しました。

障がい者の生活は高齢者とは違うので、アクティブに活動する中で楽しく生きていこうと思います。

 

◆プロフィール
渡邉 由美子(わたなべ ゆみこ)
1968年出生

養護学校を卒業後、地域の作業所で働く。その後、2000年より東京に移住し一人暮らしを開始。重度の障害を持つ仲間の一人暮らし支援を勢力的に行う。

◎主な社会参加活動
・公的介護保障要求運動
・重度訪問介護を担う介護者の養成活動
・次世代を担う若者たちにボランティアを通じて障がい者の存在を知らしめる活動

 

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