お前は超能力者か!? / 佐々木 優

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私が23歳ぐらいの頃だっただろうか。
私生活のある事柄について一時的に悩み、それをすごく不安に感じていた私は、仕事中にも時おり深いため息を吐いていた。
ひとつの業務をしながら「はぁ・・・。」
次の業務を終えては「はぁ・・・。」

それを見かねた先輩が休憩中に「お前大丈夫か。何か悩みでもあるんか?」と声をかけてくれた。
私は首をかしげてごまかしながら煙草に火をつけ、無言のなかで煙を大きく吐き出していた―――

その後も考えても考えても不安は募るばかりで、ほとんど心ここに在らずの状態。
終日そのような感じが続いたから、さすがに業を煮やした先輩は、私のそばに来てひと言。

「お前は超能力者か!?」

想像もしていない声掛けに、私は「へ?」という間抜けな声しか出せなかった。

「一服しに行くぞ。」
休憩を取るようなタイミングでもなかったが、先輩は私を誘い、二人で現場から離れた―――

先輩は休憩室の壁に背を預けて座り、煙草に火をつけた後で、あのセリフをまた口にした。

「お前、超能力者やないんぞ。」

私「まぁ・・・。」

「唸ったところで何か変わるんか?超能力者か?お前はMrマリックか(笑)」
「もしそうやったら、うんうんうんうん唸っとったらええわい。」

私「うん・・・。」

「そやって、どんだけ悩んでおんおん念じたって、何も変わらんかろが。」

私「・・・。」

「あんの、今悩むんも、土壇場になって悩むんも、大して変わらんのよ。それやったら今悩みよん馬鹿らしかろが。その時になって悩んだらええんよ。お前は超能力者じゃないんやけん(笑)」

普段は冗談ばかり言いながらふざけ合っていることが多い先輩の、いつもとは違う真剣でいて優しい語りかけに、私はすーっと心が軽くなるのを感じた。

「よっしゃ、行くぞ。」

先輩は煙草を灰皿に押し付けながら、私にはっぱをかけた―――

あれから20年以上経つが、私は何か困ったことや心配事があったとしても、その直前まではドキドキやクヨクヨからできるだけ離れていられるようになった。

決してそれが消えている訳ではない。どこかにあるのかを分かっていながら、目を合わせずにいられるようになったのだ。
5日間延々と悩むより、土壇場で5秒間だけビビった方がよっぽど楽だ、という思考を繰り返し、実際、土壇場まで無頓着でいたことで今まで失敗したことはほとんどなかった。

もちろん、その裏では計画や道筋を落ち着いてしっかり立てることは忘れていなかった。
なんといえばいいのだろう、心に余計な波風を立てながら過ごさなくてすむようになったというべきか。

悲しいかな、人は誰しもそのより良い結果を求めるが故に、時として不安や悩みをどうにかして解することに一心不乱で悶々とするものだ。
しかし、私の頭の中なんて、所詮キャベツ半分180円程度のシロモノが詰まっているだけだと思えば、必要以上に悩むだけバカらしい。

それでも、たまに仕事の問題でうんうん唸っていたりしたら、先輩の面影がふらっと私の脳裏に現れて、

「お前は超能力者か?!」

と、あの頃と変わらないニコニコ顔で、からかうように私を励ましてくれるのだ。

 

佐々木 優(ささき まさる)
ホームケア土屋 四国

 

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