ジェンダーイクオリティ委員会 レポート 3

2022年7月22日
女性のマウンティングについての考察

お茶の水女子大学の研究論文「マウンティングエピソードの収集とその分類:隠蔽された格付け争いと女性の傷つき」をもとに、女性同士のコミュニケーションを客観視し、女性同士のマウンティングがキャリアアップに与える影響を考えます。

<第一部 論文の考察>

■マウンティングとは

マウンティングとは,女性同士の関係性の中で「自分の方が立場が上」であると思いたいために,言葉や態度で自分の優位性を誇示してしまう現象のことを言います。

デイリーハッスル(日常生活の中で経験する些細なストレス要因)といえるもので、例えば同居する家族や職場の人から不快なことを言われたり、注意されたりするなどの些細なストレスのことです。

デイリーハッスルの蓄積は、うつ病や摂食障害の原因ともなるとされています。

■マウンティングの4つの条件

女性のマウンティングに顕著にみられる条件として、①どのような間柄であるか、②どのような言動であるか、③どのように思うか、④その言動の理由の4つが挙げられます。

①間柄…ママ友やサークル友達など、日常的に構築される関係性などで生じる。

②言動…「自分の方が立場が上であり優れている」とそれとなく示す。

③思い…相手の言動を受けて、立場が下であると不愉快に思う感情や劣等感が生じる。

④理由…相手が自分を不愉快にさせる言動がわざとではない、またはわざととは思えない。

■マウンティングの3類型

①伝統的な女性としての地位・能力の誇示

貞淑さ(ひかえめ、癒し系)、既婚の安定、パートナーの存在、子どもの存在、年の功(経験値)、実家資源など

発言例:独身の女性が子どものいる既婚女性に「最近プライベートが上手くいかない」と相談したところ、相手から「子どもを育てながら仕事をしていると忙しすぎて、自分のことで悩んでいる暇はない」という返答が返ってきた。

その既婚女性は、子どもの存在や育児を有意義で、幸せな素晴らしいことと感じているので、独身女性は、それをしていない自分と比べられたような発言をされて、不快な気持ちがしたなど。

②自立した人間としての地位・能力の誇示

キャリア、学歴、仕事の有能さ、苦労の度合い、経済力、独身の自由、海外経験、居住地、趣味・教養など

発言例:職場の同僚に「今月新規サービスが5件も始まっててんてこまいだった」と言ったところ、相手が「今月、ずっと退院したがっていた新規のクライアントのサービスが24時間体制で始まったんだ」と返答。張り合うつもりで言ったわけではが、相手にはそのように受け取られてしまったせいで、もやもやしたなど。

③性的魅力の誇示

美しさ、ファッションセンス、若さ、モテ経験、男のセンスなど

発言例:性的魅力のある女性が、「あなたのパートナー、イケメンじゃない所が逆にいいよね」と声掛け。どういう意味ですか?と、もやもや。

上記の3分類は3すくみ状態に陥るとされる。つまり、年の功と若さでは、こちらを取るとこちらを取れずなど、どちらにも振り子が触れない状況が発生する。また、専業主婦だとキャリアを築くのが難しいなど、上記の分類が連動しており優劣が付けにくい。

男性のマウンティングは、学歴、仕事、高収入、体型、恋愛など、各々が連動しないことで上下が図りやすくシンプルだが、女性の場合ははより複雑で三すくみ。

■論文の結論

女性同士のマウンティングは単純に優劣が決定できない三すくみ状態にあり、カテゴリーを変えて次々と行うことができるという特徴があるので、連綿と続きやすく、それゆえ女性の傷つき体験も増える。

マウンティングの分析をすることで、女性の特徴を明らかにでき、マウンティングによる傷つきの軽減を目指すことができる。

第二部 論文の考察

■著名人を対象にした分析

女性の特徴を客観視してその輪に加わることと、なにも知らないままマウンティング文化の中に入ることでは、自他の心の捉え方が全く違うことから、著名人を3名取り上げ、3類型を元に分析してみたところ、時間を掛けて努力を怠らないことで、自分に足りない所を充足させるしなやかさの存在を確認するとともに、個人の中で優劣の基準を、人に当てはめないという心構えが大切と結論しました。

また、マウンティングによって相手も自分も傷つかないことが心身の健康につながり、それが管理職登用の可能性を広げるかもしれないことが提示されました。

■委員会メンバーによる意見

・独身の人が自由で羨ましいと思いながらも、一方では家庭があるのがうらやましい。隣の芝生と比べちゃいけないのだろうなと。鈍感力やスルースキルを身に着けていければ幸せなのかなと思いました。

・女性同士だと、いわゆる「地雷」がいろんなところにあると思うので、マウント取られたと感じさせることのないよう、今回の知見を活かしていこうと思います。

・女性が多い職場なので、皆の意見をまともに受け止めると自分自身が爆発しそうになります。また、介護職をしている男性でマウンティングをする方も多々見受けられます。なので、コミュニケーションの一環として、何かを話したいのだろうという形で捉えるようにしています。それがガス抜きになればいいかなと。

・委員会メンバーにとって、気づきのある良い時間になったと思います。マウンティングをする女性というのは、自信がなかったり、認めてもらおうという気持ちがあると感じます。また、働き方も自由になって選択肢がある現状において、迷いの中で生きているのではないかと思うので、スルーの技術が重要だと思います。ただ、スルーだけでは難しいこともあるので、「それはマウンティングですね」、「傷つきます」と言ってみたりするのも良いかなと。また、信頼関係があるとマウンティングもしづらくなっていくと思いますし、もともと人は平等ではないので、そこをどう個人の関係で乗り越えていくかが自身の生き方にもつながっていくと思います。

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