土屋の挑戦 インクルーシブな社会を求めて/高浜 敏之

我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか ポール・ゴーギャン
1 出帆の日
2020年11月、私たちが乗組員として搭乗する株式会社土屋は出帆の日を迎えました。
探し求める小さな声を ありったけの誇らしさと共に
そんなミッションを共有した仲間たちは、誰もが共に同じ社会に住まうことのできる、ダイバーシティーコミュニティーの実現のための、新たなる一歩を踏み出しました。
そのために私たちは社会的排除と闘い続けなければなりません。
社会的排除には、積極的なものと消極的なものがあります。消極的な排除とは、サポートがあれば社会参加できるであろう人たちにそのサポートを与えないことによって、社会参加に制限をかけることです。
必要なケアを提供されないために、やむなく病院や施設などで望まない生活を送らざるをえない障害者や高齢者はまだまだ数多くいらっしゃいます。しかし、この種の排除は、構造的な問題であるがゆえにその暴力性が顕在化されず、すなわち見える化されないために、積極的な排除ほど大きく問題にされることがありません。
私たちはまずこの隠された潜在的ニーズを見える化し、そのニーズに応えることによってソーシャルインクルージョンを推し進めていきたいと思います。
そのことによって、ダイバーシティーコミュニティーの広がりの一端を担いたい。多様な社会は楽しい社会だ。画一的な価値観に支配されたコミュニティーに住まう時、息が詰まる。同じように考え、同じように行動し、そうでない人を排除するようなモノクロームの社会は、退屈極まりない。退屈な社会より、楽しい社会で暮らしたい。つくづくそう思います。
しかし、私たちの行く手を阻む岩石は、思ったより大きく、かつ重い。私たちはもっともっと楽しい社会を作りたいと思います、その行く手を阻む岩石を押しのけるには、まだまだパワーが足りません。私たちにはパワーが必要です。
このパワーを得るために、私たちはソーシャルビジネスという方法を選ぶことにしました。ビジネスの本質とはすなわち営利追求です。利益の最大化をその目的とするビジネスは、行為そのものが目的である福祉や文化活動とは相いれないように思えます。
たしかに、福祉やアートは、金もうけの手段にしてはならない、そう思うことは今でもたびたびあります。
でも、ビジネスがもたらす利益、すなわち経営リソースは、大きくかつ重い岩石を動かすために、必要不可欠なものであるという確信も、問題解決に本気になればなるほど、ますます深まります。
いままで見えなかった問題が見えてしまった、かつその問題が人の生死にかかわることであり、なにがなんでも解決しなければならないという意思と情熱に火がついてしまった今となっては、私たちのスタイルが非営利や慈善活動に回帰することはおそらくないだろうなあと思います。
私たちの乗る船は出帆しました。私たちの旅路、インクルーシブな社会を求め、多様な声が聞こえるシンフォニーのような街、公共性と親密さが織り込まれた交響圏を生み出す、ビジネスモデルをフル活用しながら社会問題を解決する、土屋の挑戦、がスタートしました。
出帆に際して、私たちがなぜこの航海に乗り出したか、この航海に向かった私たちは何者なのか、そして私たちはどこへ行こうとしているのか、これから綴らせていただきたいと思います。
高浜敏之
株式会社土屋 代表取締役 兼 CEO 最高経営責任者
慶応義塾大学文学部哲学科卒。
美学美術史学専攻。
大学卒業後、介護福祉社会運動の世界へ。自立障害者の介助者、障害者運動、ホームレス支援活動を経て、介護系ベンチャー企業の立ち上げに参加。デイサービスの管理者、事業統括、新規事業の企画立案、エリア開発などを経験。
2020年8月に株式会社土屋を起業。代表取締役CEOに就任。趣味はボクシング、文学、アート、海辺を散策。