「QOL」「インテーク」「ADL」「生活援助」「ノーマライゼーション」など、介護現場では普段の生活では聞き慣れない専門用語が使われることがあります。
そこで今回は、介護現場で役立つ専門用語を「基礎編」「介護業務編」「制度・理念編」「身体・医療編」の4つのカテゴリーに分け、厳選して30ワード解説します。
介護用語についての理解を深めたい方はぜひご参考ください。
基礎編
ここでは介護分野における基礎的なワードである、以下6つの専門用語を解説します。
- アクティビティ
- QOL
- インテーク
- エビデンス
- 作業療法
- 要介護度
アクティビティ:
アクティビティは直訳すると「活動」を意味します。介護分野においては、季節イベント、音楽、絵画など、クライアントの心身を活性化させ豊かに保つための活動を指します。
QOL:
Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は、「生活の質」「生命の質」を指します。介護を受けながら「どれだけ自分らしく生きられているか」の満足度を表すものでもあります。
インテーク:
課題を抱えていたり、困っているクライアントや家族の自宅に足を運び、面接をすることを意味します。「受け入れ」という意味もあり、はじめての相談や最初に行う面接を指すこともあります。
エビデンス:
エビデンスとは、根拠や証拠となる情報やデータのことです。介護分野では「科学的根拠に基づいた介護」という意味で使われることが多いです。
作業療法:
「食べる」「入浴する」「トイレにいく」など、人の日常生活に関わる全ての諸活動を介護分野では「作業」と呼んでいます。リハビリテーションなどを通じ、作業する力を改善、回復に導くのが作業療法です。
要介護度:
要介護度とは、介護の必要性や重症度を区分する数値であり、心身の状態をもとに、要支援(1~2段階)、要介護(1~5段階)の計7段階で区分されます。要介護の認定を受けると、要介護度に応じた介護保険サービスが利用できるようになります。
介護業務編
ここでは、実際に介護業務を行う上で用いることの多い、以下8つの専門用語を解説します。
- ADL(日常生活動作)
- 生活援助
- 身体介護
- アセスメント
- 移乗・移乗動作
- カンファレンス
- ケアプラン
- 特定福祉用具
ADL(日常生活動作):
ADLは日常生活動作(activities of daily living)の略です。下記のような日常生活を送る上で基本となる身体動作を指します。
- 食事
- 排泄
- 着衣
- 入浴
- 身支度
- 歩行 など
生活援助:
生活援助は、掃除、洗濯、料理、買い物などの日常生活の家事全般をクライアントに代わり行う介護サービスです。クライアントの身体には直接触れることはありません。
なお本人以外の部屋の掃除やペットの世話などは、日常生活の範疇外となるため、生活援助には含まれません。
身体介護:
身体介護は、排泄、更衣、洗面、清拭、入浴などの日常的な行動を介助する介護サービスです。前述した生活援助と似ていますが、決定的な違いは「クライアントの身体に直接触れる」という点です。
アセスメント:
アセスメントとは「客観的に評価・査定すること」を意味します。介護分野ではクライアントの悩み、要望、体の状態、家族の思いや周囲の環境等について情報を集め評価し、適切なケアについて分析することを指します。
移乗・移乗動作:
「車椅子からベッドに移る」「車椅子から便座に移る」など、平面が変わる移動動作のことです。
カンファレンス:
カンファレンスとは「会議」を意味します。介護分野のカンファレンスとしては「ケースカンファレンス」や「サービス担当者会議」などが代表的です。これらはケアマネージャー、医師、看護師、介護士、リハビリ専門職などの関連職種が集まり、クライアントの介護サービスについて話し合う場です。
ケアプラン:
ケアプラン(介護サービス計画書)とは、クライアントやその家族の状況や希望を元に、支援の方針、解決すべき課題、提供する介護サービスの目標や内容などをまとめた計画書のことです。
ケアプランはケアマネジャーが作成を担当し、作成されたケアプランに沿ってクライアントは介護サービスを利用していくことになります。
特定福祉用具:
特定福祉用具とは、介護に必要な用具で利用者の肌が直接触れるタイプのものを指します。例えばポータブルトイレ、入浴用品、特殊尿器の交換可能部分などが該当します。介護保険が適用されますので、自己負担額1〜3割で購入できます(償還払い)。
制度・理念編
ここでは、介護の制度や理念などに関連する、以下6つの専門用語を解説します。
- フォーマルサービス
- インフォーマルサービス
- 自立支援
- ノーマライゼーション
- 法定後見制度
- レスパイトケア
フォーマルサービス(フォーマルケア):
公的機関や専門職による制度に基づくサービスや支援を指します。たとえば介護保険や医療保険が適用されるサービスがフォーマルサービスに該当します。
インフォーマルサービス:
上記フォーマルサービスとは反対に、民間や地域社会、ボランティア等が行う非公的な援助サービスです。たとえば近隣で行う援助活動、NPOが行う援助活動などがインフォーマルサービスに該当します。
自立支援:
クライアントが自分の意思で自立した生活を行うこと、またそれを支援することを意味します。介護における基本概念であり、クライアントの尊厳の保持し、その人に合った自立支援を行うことが、QOLの向上にも繋がります。
ノーマライゼーション:
高齢者や障害者などを排除するのではなく、互いに支え合い、健常者と同等に活き活きと豊かに暮らしていける社会こそが正常(ノーマル)であるという考え方です。介護の根底にあるものでもあり、目指すべき目標ともいえます。
法定後見制度:
精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)を患い、判断能力に問題を抱えた方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると、家庭裁判所により選任された成年後見人が、本人の代理として契約などの法律行為を代行することができます。
レスパイトケア:
レスパイトとは「休息」「小休止」「息抜き」を意味する言葉です。そして介護する側に一時的な休息をもたらすこと、またそれを実現するためのサービスを「レスパイトケア」と呼びます。
具体的には、デイサービスやショートステイといった介護保険サービスがレスパイトケアに該当します。
身体・医療編
ここでは、身体の状態を表す言葉や医療に関わるワードなど、以下10個の専門用語を解説します。
- 臥位(がい)
- 咀嚼(そしゃく)
- 嚥下(えんげ)、嚥下障害
- 誤嚥(ごえん)
- ストマ(ストーマ)
- 医療行為(医行為)
- 禁忌
- 見当識障害
- ICU
- フレイル
臥位(がい):
ベッドなどで横に寝ている状態を指します。また、お腹を上にし仰向けに寝ている状態は仰臥位(ぎょうがい)と呼ばれます。
咀嚼(そしゃく):
食べ物を噛み砕き唾液と混ぜ合わせ、やわらかく飲み込みやすい食塊(しょっかい)にすることを指します。
嚥下(えんげ)、嚥下障害:
口の中で咀嚼した食事を飲みこみ、食道から胃へ送り込む一連の流れのことを「嚥下(えんげ)」と呼びます。
また加齢と共に飲み込む力が衰えると「嚥下障害」が生じることがあります。嚥下障害によって生じた痰(たん)を吸引する行為(喀痰吸引)も、介護の場ではよく行われています。
誤嚥(ごえん):
「誤嚥」とは、食べ物や唾液が誤って気道に入ってしまうことを指します。上記の嚥下障害と同様に、誤嚥も飲み込む力が衰えた高齢者によくあるトラブルです。誤嚥によって窒息死する高齢者も毎年一定数おり、介護の場では注意しなければならない症状です。
ストマ(ストーマ):
ストマは人工肛門、人工膀胱の排泄口を表す用語であり、お腹につくられた排泄口などが代表的です。ストマには、専用の袋(パウチ)を付けます。
医療行為(医行為):
医療行為とは「医学に基づいて行われる行為」のことであり、さらに具体的にいえば「医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」を指します。手術、投薬、インスリン注射、点滴管理などが代表的な医療行為です。
医療行為は医師や看護師などの医療資格者のみに認められており、介護職が医療行為を行うことは許されておりません。ただし「喀痰吸引」や「経管栄養」など一部の医療行為については、法改正が行われた2011年(平成23年)以降、資格を取得したり研修を受けたりするなど、一定の条件を満たすことで、介護職であっても行えるようになりました。
禁忌:
禁忌とは、やってはならないこと、タブーを意味します。医療・福祉においては、不適当な治療が禁忌に該当します。例えば併用が許されていない薬を投薬したり、より状態を悪化させるような処置を敢えて行うことが禁忌に当たります。
見当識障害:
見当識障害とは、認知症の中核症状の一つです。「時間」「場所」「人間関係」など自分の置かれた状況を把握するための「見当識」に障害が生じ、正しく周囲の状況が認知できない状態です。
症状が重くなると「季節がわからない」「今いる場所がわからない」「話している相手との関係性がわからない」などさまざまな症状が生じるため、そうした方を介護をする場合は慎重に対応する必要があります。
ICU:
集中治療室(Intensive Care Unit)の略です。重篤な急性機能不全の患者を対象とした治療室であり、高度な医療設備が整い、24時間体制で治療が行えます。
フレイル:
人間は、加齢や疾患によって身体的・精神的なさまざまな機能が少しずつ衰えていきます。
フレイルは病気ではなく段階を意味する言葉であり、健常と要介護の中間の虚弱状態のことを指します。多くの高齢者はフレイルの段階を経て、要介護状態に移行すると考えられています。
まずは身近な用語から理解していく
今回紹介した30個の用語は代表的なものであり、介護に関する専門用語はこれ以外もまだまだたくさんあります。医療、福祉、行政など、介護はさまざまな分野と繋がっているため、範囲を広げれば覚えるべきことは尽きません。
もちろん最初からすべてに精通している必要はなく、まずは自分に身近な用語や基礎的な用語から理解していくことが大切です。一つ一つ着実に用語を理解すれば、いずれ用語と用語が繋がり、全体的な理解も深まっていきます。