―仕事の中での価値観をお聞きできれば、と思います。小宮山さんが仕事や生活の中で大切にされてることはどんなことですか?
そうですね。
クライアントさんだけじゃないんですけども、できるだけその人の歴史を知るようにしようと思ってます。
「その人は今、なぜそうなってるのか」を知れればーーもし一生懸命話してくれる人だったら直接話すこともできるし、
その方のご両親からお話を伺うのでもいいんですがーーその人自身に興味を持って、過ごす時間をお互いに楽しめるなって最近思うんです。
たとえば「釣りが好き」というクライアントがいたとしたら、僕は釣りのことは知らないので、
「釣りってどういうことをするんですか?」「海釣りですか、山梨だと川釣りですか?」とかーーそんなたわいもない話からはじまって、
その人の背景や歴史を知ることは大事にしてます。
―介護の仕事を続けていく中で、見えてきたもの、変わってきたものはありますか。
今までやってきた仕事って、ほぼすべての仕事が“結果を出す”ことが最終的なところにあって、
それに対して納期があって、スケジュール通りにやっていくーーそれがいわゆる仕事では重要だと思うんです。
だからこそ、「人から言われる前にやる」みたいなことを20代前半の頃はずっと重要にしていました。
でも介護って、“経過を見ること“じゃないですか。
そこに“結果”が付いてくればいいこともあるかもしれないんですが、生活っていうものが経過そのものなので、
それをじっと見守る仕事だったら、もうすこし肩の力を抜いてやってもいいんじゃないかーー今までは「やらなきゃいけない」みたいに思っていたんですが、
クライアントと関わる中で、「あんまり意気込まないでしていい仕事なんだよ」ということは教えてもらったかな。
それは今の土屋であっても、つばさの頃であっても同じです。
“経過を見ること”がいちばん重要というかーー例えばつばさの頃であれば、自立というのはひとつのゴールでした。
でも別に“唯一”のゴールではなくて、いくつもある中のひとつのゴールなんです。
そのゴールを見るのはもちろん楽しいんですが、それでも、そこからがまたスタートで、その人の“経過”が始まる。
支えることが僕らの仕事だとしたら、僕らはずっとその“経過”を見守る仕事なんだと思うんです。
人間は年老いれば、どんどんQOLは落ちていく。
それをいかに楽しく過ごせるか。
「楽しく過ごせたらいいな」「その人の生活にちょっとでも力添えができたらいいな」ってーー。
もちろん、クライアントさんもいろんな思いや考えを持っていらっしゃるし、
ラフに関わることを求めてない方もいらっしゃるので、その場合は関わり方を変えますが、自分自身のスタンスとしてはそこですね。
―小宮山さんが今、喜びとか嬉しさを感じるのはどんな時ですか?
子どもの支援はやっぱり楽しいなっていうのはありますね。
ここ1、2年、支援に入らせてもらってるんですが、子どもって成長しますよね。
たとえば「今日は学校でこんなことやってきた」「今、○○ライダーが流行ってる」とか、新しいことをどんどん覚えて、教えてくれたり。
それがすごく励みになる。
簡単に言っちゃうと「子どもってやっぱりかわいいな」ってことなんですがーーいつもそう思います、本当に。
もちろん、大人のクライアントは大人で、くだらない話をしたりして。
それも楽しいんですけどね(笑)。
でも子どもを観ていると、「本当におっきくなったなぁ」ってーー喜びはそこにありますね。
と同時に、「どうやったらこの子たちのQ O Lを下げずに今後も支援をしていけるか」――上長とも話すんですが、まだまだ先の話ですけれども、
そういった先を見据えて話し合うこともこの仕事のやりがいになりますね。
いつかお母さんの手から離れることも考えると、「今、どうするといいのかな」と考えつつ、
「でも今の現状では、今の支援しかできないな」っていう、ジレンマみたいなものもあるんですけどね。
他にも大人のクライアントの方で、都市部から離れたところに住んでる方がいて。
そうなると、車がないと移動できないとか、バリアがたくさんあるんですよ。
ご本人も「自立したい」とは仰っているんですが、ただ僕は介護に入ってるだけなので、僕から自立を促すことはできない。
もし、クライアントから「協力してほしい」と言われたら、上長に相談して、どういうふうに動いたらいいかを話し合うことはすぐできるんですがーー。
僕自身は、つばさで働いてきた経験や、自立生活に向けての情報をいろいろ知ってることもあってーー
「自立した方がきっと楽しいんじゃないかな」なんて思っちゃうところも正直、あるんです。
でもそれは僕が言うべきことではないので。
そういったもどかしさみたいなものを感じたりしますね。