―土屋に移られてからは、どんな仕事をされてきたんでしょうか。
石上「一番初めの初めはウェブサイトを作っていました。
そのあと、もともと人材業界の営業だったこともあって、人事に携わり、求人や管理をやったり。
そこからは何をやってたかな……(笑)。色々やっていますね。
最近は情報管理室の他にもSmartHRや人事評価制度にも関わっています。
2022年には、経営改善のためのプロジェクトというものがあって、本社勤務のスタッフが現場に入っていた時期があったんです。
その時は僕も初任者研修を受けて、1年半ほど重度訪問介護(重訪)の現場に入っていた時期がありました」
―実際に支援の現場に入った時、どんなことを感じましたか。
石上「僕は当初、人事に関わっていたんですが、その時に『人がめちゃくちゃ入るのに、めちゃくちゃ辞めていくのはなんでだ?』ってずっと思っていたんです。
でも正直なところ、現場に入って初めて、アテンダントの方が辞めていく理由、それから辞めるのを留まらせる理由というものがすごくよくわかりました。
なんというか、めちゃくちゃ心細いというか……『いきなり、こんな重大なことを一人でやらされるの?』っていうアテンダントの不安感や気持ちがすごくよくわかったので――。
なんていったらいいんですかね……。あの経験はこれまで自分が経験したことないものだった。
例えば、喀痰吸引を行なっていて、クライアントの方が急に苦しみ出したことがあったんです。
実地研修でもこんな例はなかったし、どうしたらいいのか――もちろん、後になってクライアントからも『僕自身のやり方が悪い』と怒られたんですが。
めちゃくちゃ怖い経験でした。
そういう日々が続いて、僕にとっては重訪の現場に入って、夜の9時ぐらいに仕事を終えて帰る時――真っ暗の中、トボトボ歩いて帰る時ほど寂しいものなかった。特に初日とか……。
そんな時に――これは実際に実現できるか、できないかということは承知の上での話なんですが――仕事終わりのタイミングで電話があったら『めちゃくちゃ嬉しいな』と思うだろうな、と思いました。もちろん、次の日でもいいんですけどね」
―アテンダントという立場と人事という立場、両方を経験されている石上さんから見て、どんなことができると思われますか。
石上「これは、僕自身が人材派遣の仕事をしていたこととも関係あるんですが、スタッフのフォローというのは、めちゃくちゃ大事な“営業の仕事”だったんです。
会社に人が入る。入って続けてもらうことで、双方に利益があります。
だからこそフォローを入れて、それぞれの職場の課題点や見えない部分を共有する――営業の仕事のひとつとして、フォローという行為は体に染み付いていましたし、そのひとことがあるだけで、仕事の定着率はずいぶん変わってくるんですよね。
もちろん、みなさん既にやっていることだとは思うんですが――例えば、初日に仕事に入った時、入る前にアテンダントの方に『頑張ってくださいね』とひとこと、声をかける。
終わった後に上長から『大丈夫でしたか?心細くなかったですか?』と、電話があったら、『一人で寂しかったけど、なんとかやれるかな』『見てくれている人がいるんだったら続けていけるな』とアテンダントの方に思ってもらえるんじゃないかな、と思うんです」
―重訪という仕事の特殊性についても、現場に入って初めて見えてきたものがあったと仰っていました。
石上「僕が現場に入っていたのはお二人だったんですが、お一方は脳性麻痺がある方で、生活介助として、車椅子でいろんなところへの外出支援ですね。もうひと方はA L S疾患がある方で、喀痰吸引等を行なっていました。
実際に、現場のクライアントとアテンダントの方に向けて、どんな取り組みができるのかと考えた時――関わっていたのはお二人だけでしたが、それでも、クライアントや環境によって本当に状況も介助の内容も違うので、なんとも言えない――とはやってみて思いましたね。
一般的な会社だったら、どこか共通の業務内容があったり、フローやマニュアル的なものも共有できて、ある程度、話しやすいところがあると思うんです。
でも重訪に関しては、クライアントの障害や症状、生活によっても、それぞれの現場で見えているものも全く違っているし、常に状況が変化していることもあって、共通の言語を探すところから話をしないといけない――と思ったので。
たとえば、現場の状況を細かく知らない僕が、アテンダントの方にフォローという名目で電話をしたとしても、『お前に何がわかんねん』と言われてしまっても、正直なところ、仕方がない。
そういうところは難しいなとやってみて思いました」