デイホーム

デイホーム土屋(通所介護)

伊藤 慎

名東 管理者

『歳を重ねてからも、誰もが幸せを感じて生きていくために、世の中には介護という仕事が必要』

 《interview 2023.12.28》

デイホーム土屋 名東で管理者を務める伊藤 慎。土屋グループ内のデイサービス(通所介護)の中でも半日型・運動特化型であるデイホーム土屋 名東は、機能訓練指導員による体操やマッサージを通して、痛みの予防や再発防止、退院してからのリハビリに力を入れています。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い世代と関わってきた伊藤。運動を通して、“健康”を届ける日々と、次の世代への思いを語ります。

CHAPTER1

「今」という時間を、楽しく過ごしてもらうために。

愛知県春日市で生まれ育った、という伊藤。子どもの頃からスポーツが好きで、地域の野球チームに所属し、「将来はプロ野球選手」を夢見る子どもだったと言います。

伊藤「人の役に立つ仕事をしたい、という思いが小さな頃からありました。僕が育った時代は、第二次ベビーブームでーー受験者数もすごく多い時だったこともあって、高校を卒業した後は希望した大学に入れず、一年浪人しました。

進路は、大学に入ってから決めたんですが、公務員やら警察やら消防やら……色々と選択肢がある中で、浪人時代の先輩の縁もあって教員を目指すサークルに入りました。夏に地域の小学生を集めて、ソフトボールやサッカー、陸上等を教えるサークルで、子どもと接しているうちに『先生っていう仕事もいいな』と。そこで教員を目指そうかな、と思ったんです」

野球やバレーボール、ハンドボール、テニス等々、大学時代はさまざまなスポーツをしてきた伊藤(水泳だけは苦手だったそうです)。
その後、教員採用試験を受験しますが、当時の名古屋市内の教員採用はほんの1,2名……という狭き門。卒業後は友人の縁で幼児体育の会社に就職し、“体育の先生”として活躍します。

伊藤「卒業後に勤めたのは体育講師を派遣する会社で、幼稚園や保育園に伺って、子どもたちの課外授業として体育を教えていました。学校体育の延長ですね。跳び箱だったり、マットで前回りや後ろ回りとか。あとは鉄棒――特に逆上がり。園の運動会では、日頃の成果を親御さんの前で発表もしていました。

僕は『子どもたちが、できないことができるようになったらいいな』と思いながら教えていたんです。何度もチャレンジしていると、少しずつできるようになってくる。『頑張ったらできるんだよ』っていうことを教えたかった。

体育の先生という仕事は、“健康”が売りなものですから、自分が元気じゃないと続けられないな、と思っていました。今でも思い出すんですが、寒い2月でもポロシャツ半袖一枚で体操してましたよ(笑)。

僕は、子どもたちと遊ぶことが好きなものですから。とにかく、子どもたちが喜ぶ姿が見たいな、と思って続けていましたね。それが『人の役に立つ仕事をしたい』という小さい頃からの思いと繋がっていたんだと思います」

毎日会う“園の先生”とは違う、課外授業の時だけ会える“体育の先生“。子どもたちにとって、特別な存在だったからこそ、大切にしていたこともあったと言います。

伊藤「体育の時間を楽しみにしてこの場所に来ているんだから、自分自身に起こった嫌なことや不都合なことは、子どもたちにとっては関係がない。楽しく終わってもらえるように、何かあったとしてもその場には影響が出ないようにしなさいーーとよく先輩には言われていました」

女性が多い幼稚園や保育園という場所に、男性が一人ということもしばしば。伊藤は、そんな職場環境も持ち前の大らかさで楽しんでいたようです。

伊藤「幼稚園の先生からは『伊藤先生ってあんまり怒らないですね』と言われたことを覚えています。本当は、その幼稚園のルールがわからないから怒れないーーということもあったのですが(笑)。

僕が伺っていたところは私立の幼稚園がメインだったので、それぞれの園にルールや方針があってーー私立なので、仏教系やキリスト教系といった宗教的な理由もあってーー、その上、幼稚園は子どもが過ごす時間も保育園と比べると短いので、“◯時に始まって、◯時に終わり”とスケジュールがきっちり決まっていたんです。でも僕はO型で大雑把な性格なので、そういったルールや方針、指導時間に関してはきっちり守り、流せるところは流していたんですよね(笑)。

もちろん、ある一定の約束事のラインを越えたら、ちゃんと注意しなきゃいけないことはありました。そのラインを守りつつ、子どもたちには自由に過ごしてもらう。あまり怒りすぎても楽しくないので、『楽しいことをするためには、どうしたらいいかな』というところに、教える時の自身の基準を設けていたと思います。関わる大人が自分の中に基準をつくっていれば、子どもたちも“ここまでしたら怒られるんだ”ということがちゃんとわかりますから」

CHAPTER2

「人相手の仕事に就きたい」という思いーー子どもから、高齢者へ

幼児体育の先生を20年間勤めた伊藤は、その後、体力的な理由もあり退職。次に選んだのは、全く違う分野の仕事でした。

伊藤「退職後は建設会社に就職したんです。完全に人相手じゃない仕事でした。もちろん営業はするので、そこで人を相手に仕事をするんですがーー道路をカンカンやるのを見て『あ、これは違うな』と思いましたね(笑)。

その上、建設業なので、交通量が多いところは夜中に工事をするんです。それを経験して、『やっぱり日中の仕事の方が、自分には向いてるな』と。すぐに気づけたのは良かったと思います」

一度、違う分野の仕事を経験することで、「人を相手にする仕事に就きたい」という思いを確かめた伊藤は、障害児の放課後等デイサービスの仕事に就きます。
「人との仕事を」と希望した伊藤はその後、ひょんな流れから高齢者分野へ。

伊藤「放課後等デイサービスで働いていた時、スタッフの朝礼で『1分間スピーチ』という時間があったんです。『とにかくなんでもいいから、1分間話しなさい』と。スタッフは、子どもたちの前で話さなきゃいけないので、そのための練習だったと思うんです。

僕はそれまでも、先生として大勢の子どもたちの前で喋っていたものですから、1分間スピーチは、全く苦にはならなかったんですーーただ、話にまとまりがなくて、長く話しちゃうことが多いんですが(笑)。

でも、1分っていう限られた中で話をすることで、『君、話が上手だね』なんて話になりまして。『高齢者の施設はどうですか?』と上司から声がかかり、今のデイホームに異動になりました」

デイホーム土屋 名東は、M&Aを経て、2022年9月1日に土屋グループの仲間となりましたが、伊藤自身の勤務歴は今年で6年になります。

伊藤「デイホーム土屋 名東は、半日型・運動特化型の高齢者向けデイサービスです。機能訓練指導員が1グループ5名の平行棒トレーニングの指導をします。さらに3分から5分という短い時間で、利用者さんに合わせた運動をしています。

オリンピック選手がするような激しい種類の運動ではなく、ご本人の症状をお聞きしながら『こうやって動かすと、筋力がつきますよ』――というようなアドバイスをしています。基本的な運動を続けていくことで、筋力がつき、高齢者の方も転ばずに歩けるようになってきます。

利用者の方は、ケアマネージャーさんからご紹介をいただいて『足腰が弱くなった』、『買い物する場所に行くまで、長く歩けるようになりたい』と前向きな思いを持って来られる方が多いですね。他にも『脳梗塞で体が半分動かなくなったからなんとかしたい』といった『もう一度、動けるようになりたい』と思われる方もよくいらっしゃいます。

ただ、ご年齢やお体のことを考えると、運動を続けることで、必ずしも運動機能が向上するわけではないーーという点もスタッフ側は理解していないといけません。なので、今、動く範囲での、できる範囲での維持ですね。少しでも長く、ご自宅で生活していただくためのお手伝いをしています」

CHAPTER3

人相手の仕事はひとつとして同じことはない。それが僕にとっての面白さです

“人を相手にする”仕事を希望し、長年続けてきた伊藤にとって、この仕事の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

伊藤「人を相手にする仕事というのは、その時その時で全く同じことがないんです。毎日同じ、決まった仕事をするわけではないので、その人、その人に合わせて、臨機応変に対応することーーそれが、僕の中での面白みでもあります。

例えば、同じ病気をお持ちの方へも、体の大きさや背の高さ、体重によってアドバイスは違って、必ずしも同じやり方が合うとは限らないんです。逆にスタッフ側も、僕と同じ介助の仕方が、果たしてそのスタッフに合っているかどうかはわかりません。背の高さも、女性と男性で筋力も違うし、その人に合う・合わないやり方というものがあるので。

人って、生きている限り、変化が絶対にあります。一緒はない。同じことをしていたとしても、毎日ちょっとずつ違うと思うんです。だから介助も、その人その人、その時その時で、ケースバイケースです。

これは、体育の先生をしていた時に考えていた『できなかったことが、できるようになる』というところとも繋がるんですがーー日々、目の前の人の体の経過を見ていると、『こんな介助方法があったな』『この方法はダメだったな』っていうことが見えてくるんですよね、やっぱり。それを自分自身で改善していくことが面白い。利用者の方に効果があって、こちらもうまくできた方がいいので」

「臨機応変に対応するので、一人ひとりにどう関わろうかな、と考えるのは好きなんですが、許容量を超えるとパンクします」と笑います。

デイホーム土屋 名東は現在、伊藤を含め、常勤・非常勤合わせて8名のスタッフがいます。

伊藤「子育て真っ最中のお母さんや、もともと事務職をやっていたけれど急に体のマッサージに目覚めて、この業界に入られた方、他にも民間資格でスポーツマッサージを学ばれた方、柔道整復師や理学療法士、ドライバーの方……さまざまな背景を持ったスタッフがここで働いています。

デイホーム名東の人たちは、上下も関係なく、はっきりと自分の意見を言ってくれます。そこがいいところでもあるし、もちろん調整が必要な時もありますがーーそうやってお互いの意見を伝え合えることで風通しが良い職場であればいいかな、と僕は思うんです。

介護の資格を持ってない方も多いのですが、皆さん本当によくやってくれてます。気遣いができるので、僕ができないところをいつもフォローしてもらってる感じですね。

僕自身は体育講師が長かったので、体のつくりや動かし方をずっと学んできました。それが今、役に立ってます」

日頃のやり取りもあって、「利用者さんは、僕たちスタッフのことを“先生”って呼んでくださるんですよ」と話す伊藤。

伊藤「利用者さんの中には元先生の方もいて、僕らスタッフに『こうした方がいいんじゃないか』と言ってくださるアドバイザー的存在の方もいます。僕も若い時は、よくお叱りを受けました(笑)。でも最近はずいぶん丸くなられましたね。最近、旦那様を亡くされて、元気がないので心配なんですがーー。

ここ、デイホーム土屋 名東は、2011年に設立され、今年で通年12年目。利用者の方も高齢で、90代の方がほとんどです。長い方は、かれこれトータルで10年ぐらい通ってくださっている方もいます。僕よりキャリアの長い先輩利用者さんもいます。

寂しいのは、利用者の方がデイホームを卒業される時ですね。うちのデイサービスは、ご自宅で一人で生活できるように支えていく支援なので、あくまでも“通過点”なんです。

高齢者の方からよくお聞きするのは、『歩きにくくなりました』。その次が『一人でお風呂に入れなくなりました』。一人でお風呂に入れなくなると、入浴ができる一日型の施設に行かれる方も多いです。そうやってここを卒業される時は、僕も『もうちょっとこうすれば良かったかな』なんて、反省点が出てしまいます」

CHAPTER4

「喋ること」も運動のひとつとしてーー社会との繋がりを保つ場所でもあるデイホーム

地域と密着し、運営を続けているデイホーム土屋 名東。
伊藤はその場所で、利用者の姿、そして高齢者の生活状況の変化を肌で感じてきました。

伊藤「利用者さんは、独居の方が多くなっています。旦那さんに先立たれたり、子どもさんやご親戚が近くに住んでいても今のご時世、お一人で住まれてる方が多いものですから。僕たちスタッフには、利用者さんの顔見知りになる、おしゃべり相手になるーーという役目もあります。

皆さん、コミュニケーションを取る機会がすごく少なくなっているんです。『家に一人でいると、テレビに向かって話してる』なんてこともよく聞きますし、テレビに話しかけてる方はまだよくて、それすらなく、ただテレビを見て聞いているだけの方もいてーーそれでは一方通行で、コミュニケーションをする能力が下がってしまう。社会との繋がりを保つためにも、デイホームのような場所が必要なのかなとは思います。

運動だけじゃなくて、喋る。話す内容はなんでもいいんですよ。まずは人がいる場所に来てもらって。それは認知症の予防にも繋がりますし、デイホームがさまざまな面で役に立てればいいなと思います」

コロナ禍を経て、対面でのコミュニケーションは戻りつつあるものの、依然として、高齢者にとっての“コミュニケーションの取りずらさ”を感じ続けているという伊藤。

伊藤「こうやってzoomでインタビューをしていも、皆さんマスクをとっていらっしゃるので表情もわかるし、喋っている内容も理解できるんですが、僕は今、施設にいるものですからマスクを取れないんです。マスク越しの会話だと目しか見えなくて、微妙な表情の変化が読みとりづらい。僕自身は声が大きい方ですが、それでもマスクの中で口を大きく開けて話をしようと日頃から意識しています。

でも例えばーー子どもが喋る時というのは、当たり前ですが、口を大きく開けて、全身で喋ります。それはもともと体が小さかったり、発音がしづらかったり、言葉が不十分だからこそ、表情や動き、声に思いを乗せて、全身で伝えようとするからなんです。でも、大人になると口元だけで声を大きく出せちゃうものですから、口が開いているかも意識しないで喋れてしまう。

他にも、利用者さん同士でお話をよくされているのを見かけますが、その時は『ふんふん、そうなんだね』なんて相槌をしていても、後になって『あの人、何言ってるかわからないわ』なんてスタッフに話しかけてくる方もいらっしゃるんです。

利用者さんの中には脳梗塞をされて発語が苦手な方や、発語が聞き取りづらい方もいらっしゃるので。一生懸命喋っていただいてるんだけれど、僕らが理解ができないことも多い。もちろん利用者さんにも、マスクの中でも聞こえないこともあるし、嚥下体操や誤嚥性肺炎の予防としても『なるべく口を大きく開けてお話ししてくださいね』とは言ってます。それでも、僕たちスタッフが何回も聞き直さないとわからないこともあって、すぐに理解できないのは本当に申し訳ないなと思いますね。

お互いに“聞き取りづらい”という状況は、コミュニケーションをする上で、ひとつハードルが上がります。時間もかけなきゃいけないし、会話を理解しながら進めるというのは、体力もいる。僕らスタッフもなるべくゆっくり、大きな声で喋るようにしたり、耳元で喋るようにしていますが、おそらく、僕ら以上に高齢者の方は大変なんじゃないでしょうか」

コミュニケーションの方法自体も、世代間で大きな変化を感じていると言います。

伊藤「最近は、若い人たちが『電話が苦手』と言っているのを聞きました。LINE等が伝達の手段として使われるようになって、書くのは得意だけど、顔を見て会話で喋ることが少なくなっているから余計そう感じるんだろうな、と思います。

だからこそ、顔を見て話して、コミュニケーションをするということはーーこうやって今、zoomでお話しさせていただいてますがー―お互いを理解する上で、すごく大事なことだなと思いますね」

CHAPTER5

“経験すること“からしか伝えられない介護の仕事の魅力――若い人たちへ

「介護職はもちろんですが、どこの業界でも、特に名東の付近では介護施設がたくさんできてはいるものの、本当に人手が足りていません」――。

介護職の成り手がいないという課題を日頃から肌で感じ続けてきた伊藤。では、どんな人だったら、介護職に魅力を感じて働いてもらえるのか。伊藤とともに「介護職に向いている人」について考えてみました。

伊藤「お話するのが好きな方ですかね。ただ、自分のことばかり喋るだけでもダメなので、聞き上手な方であることも大事です。高齢の方は、喋る相手がいないということもあって、自分の意見を言えずに言いたいことを抑えている場合がよくあるんです。

『以前はよく、電話で1時間、2時間喋っていたけど、最近は友達がいないから電話ができなくなっちゃった』なんてこともよく聞きます。お話の内容はなんでもいいので、話を『ふんふん』って聞いてあげられる人がいたらいいなとは思います。

あとは、他人のことを考えて行動できる方でしょうかーー自己犠牲とまでは言いませんが。やっぱり自分に余裕がなければ、人に施せないと思いますので。まずは自分を整えて、それから人のために行動できる人がいいんじゃないかな」

自らを「話好き」と言う伊藤。「もし自分が介護職をしていなかったら、飲食等のサービス業をしていたと思います」と話します。

伊藤「先日、近所の中学校から『中学生の職場体験の受け入れをしてもらえますか?』という依頼がありました。介護職は成り手が少ないこともあるし、若い方たちは、介護という仕事をあまり知りません。

プロ野球選手や、今だったらユーチューバーに比べたら有名でもないですし、派手さもないですよね。知る機会がないからこそ『こんな仕事もあるんだよ』と、中学生自身が体験をすることで興味を持っていただけたら、と思って受け入れを表明しました。

もちろんその分、人手も必要になりますから、業務は忙しくはなります。それでも介護という仕事の魅力を若い方たちに伝えていくためにアピールを続けていくのは必要だな、と。それは、関わって皆いことには介護の仕事の魅力は伝わらないからーーです。

こうしたそれぞれの地域でのアピールと同時に、『歳を重ねてからも、誰もが幸せを感じて生きていくために、世の中には介護という仕事が必要なんですよ』ということも、会社全体として社会に広く伝えていけたらいいのかなとも思います。

介護制度自体をよく知らない方も多いです。こういう制度がある、ということも若い方たちに知ってもらえたらいいですよね。制度自体が浸透していない、理解されていないことは『=必要がないもの』という考え方にも繋がりますし、それは残念だなと思います」

子どもから高齢者まで、さまざまな世代の人と関わってきた伊藤だからこそ、「若い人に、人の生活をサポートする介護という仕事を知ってほしい」という思いが日々の中で醸造されてきたのかもしれません。

伊藤「『人の役に立つ仕事をしたい』ということが自分の根底にあって、たまたま幼児と関わって、その後は高齢者と関わるようになって。今、めぐりめぐってー―この仕事をしてきました。

同じ愛知県の瀬戸には、高齢者施設の横に幼稚園、保育園があって、子どもたちの笑顔や声が聞こえる、元気をもらえるーーそんな施設があるんです。高齢者の方にとって、活気のある子どもの声が聞こえることは嬉しいことです。子どもと高齢者が並んで過ごせる場所があったらいいですよね」

伊藤が“経験”してきた人との交わりは、こんな夢にも繋がっているようです。

伊藤「僕は、これまでの仕事も、今の仕事も、来てくださった方に“健康”を売っているんです。だからこそ『デイホーム名東に来たら元気になるよ』とお伝えしたいし、地域の方からもそんなふうに言ってもらえたら嬉しいですね。

例えば、見に来るだけでもいいと思うんですよ。以前、実際に利用されるまでに一年以上かかった方がいました。家が近所で、歩いてうちに来て、ストレッチ体操を見て、運動して帰っていく。

『せっかくなら、介護保険申請をして運動をしていったらいいのに』なんて思ったりしたこともあるんですけどね(笑)。でも、その方はデイホームを覗いて、満足して家に帰って。一年経ってようやく利用者として利用されることになりました。それでいいと思うんです。その方は認知症が進んでしまって、今は通えなくなっちゃったんですがーー。

そういった“地域の人に好かれるデイサービス”を目指したいです。いつもは火曜日に利用してるけど、違う曜日にも顔出しちゃう、みたいな。喫茶店のように、あそこに行けば誰かがいる。友達がいる。もちろん運動が主軸にはあるんですが、お喋りもできて、気軽に寄れる場所。デイホーム名東が、皆さんにとっての憩いの場であればいいのかなと思います」

休みの日には、少年野球のコーチとして地元での活動を続けている、という伊藤。
最後に尋ねました。人と関わり続ける日々の中で、心がけているのはどんなことですか?

伊藤「座右の銘じゃないですけれど、“生涯現役“っていう言葉を自分の中でいつも思っています。まぁ、僕は四文字熟語とか、座右の銘が大好きなんです(笑)。

もともとは、予備校時代の英語の先生の口癖が『為せば成る』で、その言葉がずっと記憶に残っていました。その格言自体はもっと長いものなんですが、今も『なんでも、まずはやってみたらできるんじゃないか』と思っているんです。そこから派生して、『できるようになったんだったら、いつまでもできるようでいたい』という思いがあってーー継続は力なり、ってことですね。“生涯現役”が目標です」


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