そうですね。基本的にはずっと介護です。
ただ、「介護をやりたくてやってるわけじゃない」という思いも根底にあって、一度、「介護以外の仕事をしたい」と思ったこともあったんです。
というのは、介護施設を1か所、2か所、3か所……と勤めていくうちに――介護の仕事って、とにかく給料が安い。
はじめて正社員で介護職に就いたのが28歳頃だったんですが、当時、30代になっても手取りで月給が25万円を超えたことがなかったんですよ。
10代だったらそれでもいいけど、20代後半、30代前半、そこから30代後半になっても、その額だったら……。
源泉徴収票が来ると、その年の年収を職場の同僚と見せ合うんです。
その時に衝撃的だったのが、「菊池さん、結構もらってますね。俺より多いじゃないですか」なんて言われて、「……そうなのか?」と。
それが、30代前半のことでした。
その頃、同僚たちとよく言っていたのは――「同窓会に行けない」っていう“あるある”の話があって。
「介護職をしてる」って恥ずかしくて言えないんですよ。
同窓会に行くと、「今、何の仕事をしてるの?」っていう話の流れになる。
そこまではいいんですが、収入の話をされると困るんです。
「ボーナスがいくらだった」「こどもができて車を買った」「ついに家を買った」――そんな話をされると非常に困るわけです。
「何やってるの?」って聞かれるので、「介護やってるよ」と僕が返すと、大体はみんな気を遣って、「介護、大変だよね」「すごいね、よくやってるね。偉いよ」なんて言うんですけど――言うんですけど、実際、介護やってる人っていないんですよ。
みんな、「自分がやるか」というと、やらないんです。
なぜかと言ったら、生活が成り立たないから。
僕はそんな現実を抱えながら、介護業界の中でそれまで生活してきた。
もともと貯金も底をついたところから仕事を始めて、でも貯金をしようと思ってもなかなかできる環境でもなかった。
家も裕福ではなかったので、なけなしの給料で親に仕送りしながら――そういう生活をひたすら続けても、未来が見えないんですよ。
一時的な話ならそれでいいんですが、「こういう生活をあと何年続けないといけないんだ?」「このまま一生が終わるのか」って――。
結局、パチンコやっていた時と一緒なんです。
10年後、20年後、50年後、「この状態がまた続くのか」と思った時に、「介護業界にいるのはこれ以上は無理だ」っていう結論に行き着きました。
決して、お金持ちになりたいわけじゃないんです。
でも、一定程度、生活水準というものがあって、せめて人様に話せるぐらいの生活レベルでありたい。
でも、その水準すら保たれないのであれば、この業界にいる意味ってあるのかな――と。
そもそも介護を選んだ理由って、たまたま町を歩いていて、ティッシュ配りの人からティッシュをもらっただけ。
そういう面でも、介護職を続ける根拠が弱かった。介護業界を離れたかったんです。
でもこれもまた一緒で、「できることが介護しかない」から、他の職業を選べないんですよ、結局。
持ってる資格も全部、介護福祉系が占めてるから、他の業種に転職しようと思ってもなかなかうまくいかない。
そんなに突出したスキルがあるわけでもない。パソコンなんてほとんどできなかったですから、当時は。
一度、別業界に転職はしたんですが、職業が馴染まなかった。
30代を過ぎて、新しいことを覚えるのもそんなに得手ではなかったような気がします。
1か所だけですね、介護業界以外で働いたのは。
不動産業だったんですが、老人ホームの入居者を募集して集める営業の仕事でした。
だから、介護とまったく関係ない仕事ではなかった。
でもその仕事も1年半ぐらいで辞めて、その後また、老人ホームの勤務に戻るんです。
結局、職探しをしても介護系しか目に留まらなくて。
ズラーっと並んだ何百件っていう求人を見るんだけど、「こっちの老人ホームの方が働きやすそうだな」ぐらいの感じで選ぶしかない。