医療的ケア児はどんなサービスを利用することができるの?わかりやすくご紹介

医療的ケア児は読んで字のごとく、医療的なサポートを恒常的に必要としている児童のことです。

生まれつき心臓にトラブルがあって人工呼吸器を使用している児童や、口から食事をする機能が弱く経管栄養を利用している児童など、必要としている医療的なケアはクライアントによって様々ですが、基本的に医療的ケア児は病院ではなく自宅で過ごすことになるので、主に両親が医療行為や介護を行うことになります。

恒常的に医療デバイスや医療的なサポートを必要としている医療的ケア児とその家族の負担を軽減する上で、現在の日本ではどのようなサービスが提供されているのでしょうか。

今回の記事では、近年急速に増加を続ける医療的ケア児が利用することのできるサービスをわかりやすく紹介していきます。

目次

医療的ケア児の増加

近現代では医療技術の発展が凄まじく、特に周産期や新生児期など、いわゆるお産に伴うトラブルに対しては、日進月歩で最先端の技術が開発されています。

従来であれば胎内もしくは出産直後に命を落とす可能性が高かった子ども達の命が、医療技術の発達によって助かる命へと移行しつつあるのです。

厚生労働省の調査によると医療的ケア児の推計値は2005年時点の約1万人から、2022年には約2万人と17年間で倍増しています。

しかし、現在の日本においては医療的ケア児を社会的にサポートする仕組みが十分であるとはいえない状態です。今後も医療的ケア児の増加が見込まれる潮流のなかで、より支援制度を拡充させていく必要があります。

【参照】医療的ケア児について(厚生労働省)

医療的ケア児が利用できる制度を、わかりやすくご紹介

現在の社会制度のなかで、医療的ケア児はどのような公的サービスを利用することができるのでしょうか。

わかりやすく解説していきます。

医療的ケア児が利用できるサービス①訪問看護

医療的ケア児の多くは、医療デバイスや医療的なサポートを24時間365日にわたって必要としており、そのほとんどを家族が担当している状況です。

具体的には人工呼吸器管理や経管栄養の管理、喀痰吸引、体位変換などに加えて、バイタルの確認や導尿、服薬管理などが必要になってきます。

これら全ての医療的ケアを家族、特に両親のみで行うことには肉体的・精神的に大変な負担が伴いますので、医療的ケア児とその家族をサポートするための制度として、訪問看護を利用することが可能です。

医療的ケア児が訪問看護を利用する場合は医療保険の適用となり、6歳以上のクライアントは3割負担、未就学(6歳未満)のクライアントは2割負担での利用が認められています。

また自治体によって若干の違いがありますが、医療的ケア児の家族を支え、必要量のサービスを適切に利用するための補助として、以下のような助成制度も展開されています。

  • 乳幼児医療費助成制度(マル乳)
  • 義務教育就学児医療費の助成(マル子)
  • 重度障がい者医療支給制度
  • 小児慢性特定疾病医療費助成制度
  • 難病医療費助成

これらの助成制度は全ての医療的ケア児に適用されるわけではありませんので、利用可能な助成制度があるかどうかは、自治体の窓口に確認しておきましょう。

医療的ケア児が利用可能な訪問看護の量

医療的ケア児は、基本的に1回30分〜90分の訪問看護を、週に3回まで利用することが認められています。

ただし重い疾患を抱える医療的ケア児の場合は毎日の利用も可能となっており、例えば兄弟の学校行事への参加、学校での支援、日常生活の補助など、クライアントと家族にとってサポートが必要な場面において適宜利用を申請することが可能です。

医療的ケア児が利用できるサービス②居宅介護

医療的ケア児の自宅生活をサポートするため、ホームヘルパーなどが自宅を訪問する形で提供される介護サービスが居宅介護です。

居宅介護は、障害支援区分が1以上と認定された児童に対して利用が認められており、食事や排泄の介助、通院の支援などが主なサービス内容です。

特に需要の高いサービス内容としては、なんといっても入浴の介助が代表格です。

医療デバイスを使用しながらの入浴自体も非常にハードな介助ではありますが、さらにスキンケア・着替え・ドライヤー・吸引・ガーゼ交換などが必要になる医療的ケア児は、家族だけの力で入浴をサポートすることが非常に困難で、居宅介護のサポートが欠かせません。

そのためヘルパーのサポートを欠かすことができず、常に需要が逼迫している状態です。

新しい居宅サービスの種類「居宅訪問型児童発達⽀援」

居宅介護に加えて、医療的ケア児が利用することのできる居宅型の制度である「居宅訪問型児童発達⽀援」という仕組みが2018年よりスタートしています。

居宅訪問型児童発達支援は、恒常的な医療的ケアの必要もしくは重い障害などを理由に外出がままならない18歳以下の児童に対して、日常生活上の基本的な動作の取得や生活能力の向上のために必要な訓練を自宅で浮けることができるサービスです。

同年代の友人との集団生活が難しく、主に社会性や情緒面でも不安を感じている医療的ケア児や家族の不安に対応したサービスで、基本的には看護師が対応し、発達支援の合間には吸引のサポートなどを利用することも可能です。

その他に医療的ケア児が利用できるサービス

ご紹介した訪問看護や居宅看護のほかにも、医療的ケア児のために制度が整備されているサービスは、以下のようなものが挙げられます。

  • 児童発達支援
  • 放課後等デイサービス
  • 福祉型障害児入所施設
  • 短期入所
  • 計画相談支援

このような医療的ケア児が利用できるサービスや社会制度に関しては、2021年に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」にわかりやすくまとめられています。

この法律では、医療的ケア児を社会全体で受け入れていくための仕組みとして学校や保育所に適切な人員配置を行うことが規定されており、家庭と介護・看護だけではなく、教育や地域など社会全体が一丸となって医療的ケア児を支えていくことを定めています。

医療的ケア児が利用することのできるサービスは、医療的ケア児支援センターへ問い合わせを

先ほどご紹介した医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律では、医療的ケア児と適切な福祉や医療、介護などのサービスとの架け橋として、医療的ケア児支援センターを各都道府県に設置することが義務付けられています。

医療ケア児支援センターでは、クライアントと家族の状況や相談内容を確認した上で、医療的ケア児コーディネーターが関係各所との調整を担当してくれますので、退院が決まった医療的ケア児や既に自宅での生活をスタートさせている医療的ケア児の心強い味方となってくれます。

医療的ケア児への支援制度は、日々拡充中。わかりやすく説明してもらうなら、医療的ケア児支援センターへの問い合わせを

年々増加傾向にある医療的ケア児が利用することのできるサービスは、現在順次拡大中です。

福祉や教育、医療、地域、介護など医療的ケア児を取り巻く環境が連携し、医療的ケア児の明るい生活を支えていくための仕組みや制度も日々進化しています。 医療的ケア児が利用できるサービスや制度などをわかりやすく知りたい場合は、医療的ケア児支援センターへの問い合わせがおすすめです。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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