医療・福祉に携わる方は「医療的ケア児とは?」「わかりやすく知りたい」と思うのではないでしょうか。
この記事では「医療的ケア児とは」という疑問にお答えしながら、どのような医療行為を必要としているのか、わかりやすく解説しています。
医療的ケア児と関わる機会がある方は、ぜひ参考にしてください。
医療的ケア児とは?わかりやすく解説
医療的ケア児とは「日常生活や社会生活をおくるために、日常的に医療行為が欠かせない児童」と定義されています。(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)
なお児童とは18歳未満、及び18歳以上の高校生等も含みます。
障害福祉サービスの報酬における医療行為は、以下の行為が当てはまります。
- 気管切開の管理
- 人工呼吸器の管理
- 吸引
- 鼻咽頭エアウェイの管理
- ネブライザーの管理
- 酸素療法
- 中心静脈カテーテルの管理
- 皮下注射
- 経管栄養
- 血糖測定
- 継続的な透析
- 導尿
- 排便管理
- けいれん時における座薬挿入、吸引、酸素投与又は迷走神経刺激装置の作動等の処置
各医療行為について詳しく解説します。
気管切開
気管切開とは、喉の皮膚から気管まで切開して空気の通り道をつくり、呼吸をしやすくする方法です。
開通した部位をそのままにしておくと、体の治癒過程によって塞がってしまいますので、塞がらないように気管カニューレという管を入れます。
気管カニューレに人工呼吸器を装着することで呼吸が楽になります。
人工呼吸器を継続的に装着している児童、または息苦しいときなど必要時に装着している児童もいます。
人工呼吸器
人工呼吸器は何らかの障害によって呼吸がうまくできない児童に、機械を使って呼吸を助ける方法です。
上記で説明した気管カニューレに装着します。
医師の指示によって人工呼吸器の設定がされていますので、自身の判断で設定を変更してはいけません。
吸引
吸引とは、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内にたまった痰を、機械で吸引することです。
何らかの要因によって、自分で痰が喀出できない児童に行います。
痰を吸引するタイミングは、ゴロゴロした音が聞こえる時や、痰の貯留によって息苦しそう・酸素飽和度が低い時などが挙げられます。
鼻咽頭エアウェイ
鼻咽頭エアウェイとは、何らかの要因で気道が狭くなっている児童に、鼻から専用の器具を挿入し舌を持ち上げるようにして空気の通り道をつくる方法です。
ネブライザー
ネブライザーは液体の薬をミスト状にし、気管や肺、鼻の奥まで薬が届くようにする機械です。
薬によって作用は異なりますが、喘息発作の緩和や、痰を喀出しやすくする効果などがあります。
定期的に吸入が必要な薬と、喘息発作が起きた時に吸入する薬があり、処方通りに吸入できるようにします。
酸素療法
酸素療法とは、機械から高濃度の酸素を補うことで呼吸を楽にする方法です。
酸素は燃えやすいため、火気に近づけないように注意が必要です。
医師の指示によって安静時・労作時の酸素量の設定がされていますので、自身の判断で設定を変更してはいけません。
中心静脈カテーテル
中心静脈カテーテルは、口や経管から栄養がとれず高カロリーの点滴が必要な場合や、抹消からの血管確保が困難な場合に留置します。
鎖骨や首、太ももからカテーテルを挿入し、カテーテルの先は心臓近くの太い血管に留置して点滴を投与します。
抹消の点滴のように何度も抜き差ししなくてよいため、児童の負担が減らせるメリットがあります。
経管栄養
経管栄養は、何らかの要因によって口から食事をとれない児童が、胃や腸、鼻から栄養をとる方法です。
胃や腸、鼻に留置されている管へ栄養剤を繋げることで、栄養補給が可能です。
栄養剤の種類と頻度は、医師の指示通りに行います。
血糖測定
血糖測定は、1型糖尿病など血糖のコントロールができない児童に対して、定期的に行います。
血糖値を確認した後、医師の指示通りにインスリンの皮下注射をします。
低血糖になったときのために、ブドウ糖のタブレットやお菓子の常備が必要です。
皮下注射
皮下注射は、上で解説したような1型糖尿病などの児童に行ったり、皮下注射による持続投与が必要な場合に行います。
インスリンの皮下注射の回数は、児童によって1日2〜4回と異なります。皮下注射をする部位は、お腹や太もも、腕といった皮下脂肪がつまめる部位です。
継続的な透析
透析とは、腎臓がうまく機能しない児に対して、腎臓の代わりに老廃物や水分を除去する方法です。
透析には腹膜透析と血液透析の2つがあり、児童の場合はほとんどが腹膜透析を選択しています。
腹膜透析は、腹部に留置した管から透析液を入れ、腹膜で老廃物や水分を除去し、一定時間(6〜12時間程度)経ったら透析液を入れ替える方法です。
透析液を入れ替えることをバッグ交換といい、バッグ交換は1日3〜4回行います。
また自動腹膜透析ができる機械があり、夜間就寝時に管と機械を接続し透析することも可能です。
導尿
導尿は自分で排尿ができない児童に行い、間欠的導尿と持続的導尿があります。
児童の場合は身体制限が少ないように間欠的導尿を選択することが多く、尿道口からカテーテルを挿入して尿を出します。
持続的導尿は、膀胱内に管を留置する膀胱瘻や、尿道留置カテーテルなどがあります。
排便管理
排便管理には、消化管ストーマ、洗腸、摘便、浣腸が含まれます。
消化管ストーマは、肛門から排便ができない児童に対して腸に造設され、パウチという袋に排便がたまる仕組みです。
洗腸とは消化管ストーマから微温湯を注入して、腸にたまった便を強制的に排泄することです。ストーマから排便がない時間をつくる目的で行われます。
摘便や浣腸は、腸に便がたまっている時に行います。
けいれん
けいれんとは児童の意志とは関係なく筋肉に力が入る状態のことをいい、体の一部または全身がふるえたり、こわばったりすることがあります。
けいれんが起きる要因は発熱や胃腸炎、てんかん、脳の疾患などさまざまです。
けいれんが起きた時は、処方された座薬を挿入、吸引・酸素療法をしたりします。
また迷走神経刺激装置を埋め込んでいる場合は、装置を作動します。
医療的ケア児とは医療行為が必要な児のこと
この記事では、医療的ケア児とはなにか、医療的ケアについてもわかりやすく解説しました。
さまざまな理由により、医療的ケア児は日常的な医療的ケアを必要としています。
紹介した内容をもとに、医療的ケア児の理解を深められれば幸いです。