医療的ケア児について学びたいと思っても「研修ってどこで受けられる?」と悩むことはないでしょうか。
この記事では、医療的ケア児の研修を受けたいと考えている看護師へ向けて、研修を受けられる場所や研修のカリキュラムを紹介しています。
また研修だけでなく医療的ケア児の学びを深められる方法や、医療的ケア児を支援できる働き先も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
医療的ケア児とは
医療的ケア児とは、NICU(新生児特定集中治療室)などに長期入院治療した後、引き続き人工呼吸器や胃ろうを使用し、痰の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のことです。
在宅で過ごす医療的ケア児は全国で推計2万人いるとされ、医療的ケア児が地域で過ごすために、医療従事者の支援が必要とされています。
その中でも看護師は、医療的ケア児に医療ケアができる職種として注目されています。
看護師が受講できる医療的ケア児の研修
医療的ケア児の研修は、各都道府県で開催されています。
お住まいの地域で研修が開催されているかは、地域のホームページを確認したり、市町村の役所へ問い合せたりしましょう。
各都道府県で開催されている研修は、職種を問わず医療的ケア児の支援をしている方、これから支援を考えている方となっているため看護師も受講可能です。
なお地域によっては、看護師や保育士といった保有資格により対象者を限定して研修を開催していることもあります。
医療的ケア児の研修が必要な理由
地域で医療的ケア児が生活をおくるための支援体制を整えるため、医療的ケア児に対応できる看護師の育成が必要となっています。
本体看護師の資格があれば医療的ケア児への医療的ケアが可能ですが、医療的ケア児を看たことがない看護師からすると不安に感じる人が少なくありません。
不安を感じる看護師は、医療的ケア児やその家族をサポートしたいと思っていても、一歩踏み出せない背景がありました。
医療的ケア児の研修では、地域で医療的ケア児に携わっている方の話を聞くことができるため、今後医療的ケア児に支援をしたい方の勉強になります。
また、すでに医療的ケア児の支援をしている看護師でも学びを深められる場となります。
医療的ケア児の研修カリキュラム
医療的ケア児の研修カリキュラムは厚生労働省によって定められています。カリキュラムの詳細は以下の通りです。
科目名 | 時間数 | 内容 |
---|---|---|
1.総論 | 1時間 | ①医療的ケア児等の支援の特徴 ➁支援に必要な概念 |
2.医療 | 3時間 | ①障害のある子どもの成長と発達の特徴 ②疾患の特徴 ③生理 ④日常生活における支援 ⑤救急時の対応 ⑥訪問看護の仕組み |
3.福祉 | 3時間 | ①本人・家族の思いの理解 ②支援の基本的枠組み ③福祉の制度 ④遊び・保育 ⑤家族支援 ⑥虐待 |
4.連携 | 2時間 | ①小児在宅医療における多職種連携 ②連携・協働の必要性 |
5.ライフステージにおける連携 | 3時間 | ①各ライフステージにおける相談支援に必要な視点 ②NICU からの在宅移行支援 ③児童期における支援 ④学齢期における支援 ⑤成人期における支援 ⑥医療的ケアの必要性が高い子どもへの支援 |
医療的ケア児の学びを深められる研修
医療機関や協議会などでは、医療的ケア児の学びを深められる研修を開催しています。
開催している組織は以下の通りです。
- 日本訪問看護財団
- 全国重症心身障害日中活動支援協議会
- 日本小児神経学会
各研修の開催予定日、内容を紹介します。
日本訪問看護財団
日本訪問看護財団では、令和5年12月16日に小児訪問看護の研修を開催予定です。
表題は「小児訪問看護強化セミナー〜未来につながる医療と教育〜」というもので、オンラインでの研修となります。
対象者は小児訪問看護に従事している看護師等です。
研修で学べる内容は、小児訪問看護の対象となる重症心身障害児や医療的ケア児の医療的ケア技術とリスク管理、小児訪問看護における家族支援や学校との連携となっています。
なお研修は参加費用がかかり、会員と非会員によって料金が異なります。
全国重症心身障害日中活動支援協議会
全国重症心身障害日中活動支援協議会では、行政の説明(厚労省・障害保健福祉施策の動向)、重症心身障害児者に対して日中活動系サービスを提供している事業者の実践報告などを年に1回、10月に開催しています。
対象者は全国重症心身障害日中活動支援協議会の会員、重症心身障害児者の支援に携わる方です。
全国を6地区に分けて毎年順番に開催されており、2022年は長崎県で開催されオンラインでも参加可能でした。
2023年の告知はまだされていませんが、毎年10月に開催されています。
全国重症心身障害日中活動支援協議会は参加費用がかかり、会員と非会員によって料金が異なります。
日本小児神経学会
日本小児神経学会では、令和5年10月29日に医療的ケア児の研修をオンラインで開催予定です。
対象者は重症神経障害児、重症心身障害児(者)に携わる医療資格保有者などです。
家庭・学校・通園通所施設において在宅での地域生活支援のために、専門職が知っておくべき方法や技術、リスクおよび制度などの問題を研修し知識を共有します。
なお研修には参加費用がかかり、2022年に開催された研修の費用は、医師以外の医療従事者は1,000円でした。
医療的ケア児の支援で看護師が活躍できる場所
医療的ケア児の支援で看護師が活躍できる場所と看護師の役割、特徴を紹介します。
今後働き先を考える際に参考にしてください。
訪問看護
訪問看護は医療的ケア児の家へ訪問し、医療的ケアの対応や指導、体調管理、生活上の介護の支援、環境調整をします。
また日頃医療ケアをされているご家族の相談を受けたり、ご家族が介護以外の時間が確保できるような介入をしています。
一人ひとりの成長発達段階に合わせて教育と関連した支援をしており、医療ケア児の成長を共有できるのが訪問看護の魅力です。
訪問診療と併設されている訪問看護事業所の場合は、医師の診察に同行するケースがあります。
保育園
保育園の看護師の役割は、医療的ケア児の看護もしますが、医療的ケア児でない児と一緒に遊ぶこともあります。
そのため他の勤務先と比較すると、体力が必要な場であるのが特徴です。
医療的ケア児の看護は、在宅で医療的ケア児に行われている医療ケアを保護者にかわり行います。
また、医療的ケア児ではない児が体調不調のときの看護や、ケガをした児の手当をすることもあります。
学校
学校で働く看護師の役割は、保育園と同様に在宅で医療的ケア児に行われている医療ケアを保護者にかわり行います。
担任の教師や養護教諭と協力しながら、事故がないように注意を払い、医療的ケア児が楽しく過ごせるように支援しています。
学校は学びと成長の場であるため、看護師は医療ケア児の可能性を引き出し、子どもの成長が楽しめるのが魅力です。
児童発達支援施設
児童発達支援施設は、就学前の医療的ケア児や発達に遅れのある児が通う場所です。
看護師の役割は、医療的ケア児に行われている医療ケアを保護者にかわり行うことや、発達に遅れのある児への支援をします。
必要に応じて医療ケア児の機能訓練を行い、気管切開をしている児がスピーチバルブを装着した時の発声練習や自力排痰の練習もしています。
日々成長する児童を近くで見られるのがやりがいに繋がります。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、学校がある放課後や学校が休みの日に、6歳〜18歳の児童や生徒を預かる場所です。
看護師の役割は、在宅で医療的ケア児に行われている医療ケアを保護者にかわり行うことや、体調管理、自立への支援です。
年齢層が広いため、より一層一人ひとりの成長に合った支援が求められます。
研修を受けて医療ケア児を支援する看護師になろう
医療ケア児の研修を受けることで児への理解が深まり、医療ケア児やその家族への適切な看護が実践できます。
研修は各都道府県で開催されているので、お住まいの地域のホームページを確認しましょう。
また研修だけでなく、日本訪問看護財団や協議会などでも医療的ケア児の学びを深められます。
医療的ケア児を支援する看護師はニーズが高く、活躍できる場はたくさんありますので、記事で紹介した場所をぜひ参考にしてください。