「医療的ケア児支援法ってなに?」「どんな法かよくわからない」とお悩みではないでしょうか。
医療的ケア児と関わる方であれば、医療的ケア児支援法について学ばなければなりません。
この記事では、医療的ケア児支援法とはなにか、目的や理念、制度について解説します。
医療的ケア児支援法を詳しく知りたい方の参考になる内容となっていますので、最後まで読み進めてください。
医療的ケア児支援法とは
医療的ケア児支援法とは、簡単にいうと「医療的ケア児とその家族を社会全体で支援しよう」という法律です。
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律として、令和3年6月に制定、同年9月に施行されました。
法律が制定・施行されるまで、医療的ケア児とその家族の支援は努力義務でしたが、医療的ケア児支援法にて責務となりました。
努力義務と責務は大きく異なり、努力義務は「努めなければならない」ですが、責務は「責任を持って果たさなければならない努め」です。
つまり、医療的ケア児とその家族を、社会全体で責任を持って支援しなければならないということです。
医療的ケア児とは?
医療的ケア児とは、日常生活や社会生活をおくるにあたって、経管栄養や吸引などの医療的ケアが必要な児童のことです。
対象年齢は18歳未満、または18歳以上の高等学校に在籍している医療的ケア児です。
全国の家族の介助を受けている医療的ケア児は、推定約2.0万人にのぼるといわれています。
医学の進歩によって多くの赤ちゃんの命が救われるようになったため、医療的ケア児は増加しています。
医療的ケア児支援法の背景・目的
上述したように多くの赤ちゃんの命が救われるようになりましたが、NICU(新生児集中治療室)などを退院した後の支援が追い付いていないのが現状です。
また医療的ケア児の家族が仕事を離職し、医療的ケア児の生活介助に専念するケースが少なくありません。
これらの問題から、医療的ケア支援法が立案・制定されました。
医療的ケア児支援法は、医療的ケア児を医療的ケア児でない児童と同じように社会で育てること、そして医療的ケア児の家族の離職予防の目的があります。
医療的ケア児支援法の取り組み
医療的ケア児支援法にのっとり医療的ケア児を支援する機関は、大きく分けて3つあります。
- 国・地方公共団体
- 保育所の設置者、学校の設置者等
- 医療的ケア児支援センター
各機関がどのような役割を担っているのか解説します。
国・地方公共団体
国・地方公共団体は、保育所や教育機関の支援から、医療的ケア児とその家族の日常生活の支援を行っています。
医療的ケア児とその家族の相談体制を整え、情報共有をしたり、広報によって普及したりします。
また支援をする人材の確保の推進や、研究開発の推進も重要な役割です。
具体的な支援内容
令和5年度の予算に組み込まれた支援内容と詳細を一部紹介します。
- 地域療育支援施設運営事業
NICUなどに入院していた医療的ケア児が退院後、在宅へスムーズに移行できるように、家族が知識や技術の習得のためにトレーニングを受けられる施設です。
- 子育て世代包括支援センターおよび重層的支援体制整備
妊娠期から出産後も切れ目のない支援のために、保健師等を配置し「母子保健サービス」と「子育て支援サービス」を一体的に提供できるようにするための整備です。
- 診療報酬改定
医療的ケア児に関する主治医から学校への情報提供、訪問看護ステーションから自治体・学校への情報提供について、算定対象に項目が追加されています。
上記のように仕組みをつくることで、社会全体で医療的ケア児の支援が円滑にできるようになっています。
保育所の設置者、学校の設置者等
保育所や学校に通う医療的ケア児が適切な医療的ケアを受けられるよう、看護師の配置を進めています。
また喀痰吸引は研修を修了した保育士も可能ですので、保育所への配置が進められています。
なお看護師の配置や保育士による喀痰吸引研修の受講など、医療的ケア児を受け入れるための整備にかかる予算は、国によって組まれています。
医療的ケア児も医療的ケア児でない児童と同じように社会で育てる目的から、これまでは医療的ケア児だと通えなかった保育所や教育機関が通えるようになっています。
なお看護師の配置をしていない保育園でも、医療的ケア児の医療的ケアの内容によっては、訪問看護を利用することで通園が可能です。
決められた曜日と時間帯に保育園へ看護師が訪問し、医療的ケア児に医療的ケアを行えます。
医療的ケア児支援センター
医療的ケア児支援センターは、医療的ケア児とその家族の相談窓口で、情報提供やアドバイスをする役割があります。
医療・保健・福祉・教育・労働等に関する関係機関等への情報の提供、研修を行っています。
医療的ケア児支援センターとは?
医療的ケア児支援センターは47都道府県に設置義務があり、都道府県知事が社会福祉法人等を指定、または自ら行います。
医療的ケア支援法は、住まいの地域によって支援に差が生まれないように、どこに住んでいても適切な支援を受けられることを理念としているため、すべての都道府県に医療的ケア児支援センターが設置されています。
医療的ケア児支援法が制定されるまでは、医療的ケア児に関する相談窓口が明確ではありませんでした。
そのため医療的ケア児の家族は「どこに相談したらいいのかわからない」と悩まれている方がいるという課題がありました。
医療的ケア児支援センターをつくることによって相談窓口が明確化し、医療的ケア児とその家族が適切な支援が受けられるような体制を整えています。
また連携機関との橋渡しである中核的役割を担うことで、さまざまな事例に対応でき、よりよい支援を提供できます。
医療的ケア児を社会全体でみるのが医療的ケア児支援法
医療的ケア児支援法とは、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律のことです。
法律によって医療的ケア児を社会全体でみることが責務となり、国や地方自治体、保育所や教育機関、各種サービスが医療的ケア児を支援できるように取り組んでいます。
社会が医療的ケア児でない児童と医療的ケア児を分けることなく、どのような児童と家族でも安心して過ごせる社会を実現することを目指しています。