医学の発達に伴って医療的ケア児が増加していますが、日本では社会制度が整っておらず多くの課題を抱えています。
この記事では、日本での医療的ケア児に対する課題と、医療的ケア児のご家族が利用したいサービスについて紹介します。
日本における医療的ケア児とその家族の課題や、今後どのような支援が必要なのかを知りたい人は、ぜひ読み進めてください。
医療的ケア児の日本の課題は?
医療的ケア児の課題は、医療的ケア児本人とその家族をとりまく環境にあります。
医療的ケア児の日本の課題はさまざまありますが、ここでは医療的ケア児の課題を以下の3つに焦点を当てて紹介します。
- 家族の健康問題
- 障害福祉サービスの利用課題
- 通学と学校生活の付き添いの課題
それぞれ詳しく紹介します。
家族の健康問題
医療的ケア児のご家族のおよそ7割が、慢性的な睡眠不足を抱えています。
中でも吸引や人工呼吸器の管理は、昼夜問わず医療的ケアが必要であり、十分な睡眠時間が確保できません。
またいつまで続くかわからない日々に不安を感じる、日々の生活は緊張の連続である、という精神的な不安を抱えています。
上記のようにご家族の心身の負担が強い中、自身が体調の悪い時に医療機関を受診できないご家族が6割以上にのぼっています。
体調不良であっても医療機関を受診できないことに加えて心身の負担が重なることで、さらにご家族の体調悪化に繋がると考えられます。
障害福祉サービスの利用の課題
障害のある方が日常生活支援を受けられる障害福祉サービスがありますが、医療的ケア児に対応できる設備や人員が足りていない課題があります。
そのため利用したいサービスがあっても利用できず、サービスの選択が限られることや、ご家族の介助の負担が重くなる傾向にあります。
そのため医療的ケアに対応できる事業所の設備を整え、医療的ケアができる人員を配置する取り組みが必要です。
医療的ケア児が利用できる障害福祉サービスが増えることで、ご家族の健康問題を軽減するとともに、医療的ケア児の活動の場が増えることが期待されます。
通学と学校生活の付き添いの課題
医療的ケア児は自身の状況に合わせて、特別支援学校や幼稚園、小・中・高等学校といった教育機関へ通います。
その際、学校から、通学時や学校生活にて保護者の付き添いを求められるケースがあります。
ここでは文部科学省による令和3年度の学校における医療的ケアに関する実態調査実態調査から、特別支援学校と幼稚園、小・中・高等学校の保護者の付き添いの課題を紹介します。
特別支援学校の付き添い
特別支援学校に通学する医療的ケア児6,482人のうち、保護者等が医療的ケアを行うために付き添っている医療的ケア児の数は3,366人と約半数もいます。
なお保護者の付き添いは登下校時のみ、登下校時と学校生活、学校生活のみがあり、最も多いのは登下校時のみの3,001人です。
学校生活の付き添いが必要な理由として最も多いのは「看護師や認定特定行為業務従事者はいるが学校・教育委員会が希望しているため」でした。
そのため在籍している看護師や認定特定行為業務従事者が、医療的ケア児の通学や学校生活に対応できるような制度づくりが求められます。
幼稚園、小・中・高等学校
幼稚園、小・中・高等学校に通学する医療的ケア児1,783人のうち、保護者等が医療的ケアを行うために付き添っている医療的ケア児の数は1,177人と6割以上です。
なお保護者の付き添いは登下校時のみ、登下校時と学校生活、学校生活のみがあり、最も多いのは登下校時のみの643人です。
学校生活の付き添いが必要な理由として最も多いのは「看護師が配置されていない及び認定特定行為業務従事者がいないため」でした。
そのため看護師や認定特定行為業務従事者の配置の促進が求められます。
家族が利用したいサービス
ここまで医療的ケア児とその家族、とりまく環境の課題を紹介しましたが、ここではご家族が利用したいと考えているサービスを紹介します。
ご家族が利用したいと考えているサービスを把握すれば、現状の課題や改善点が見えてきます。
ご家族が「身近にあったら利用したい」または「もっと利用したい」と思うサービスは以下のとおりです。
- 緊急一時預かり支援
- 短期入所
- 日中一時支援
- 訪問レスパイト
緊急一時預かり支援
緊急一時預かり支援とは、ご家族の出産やケガ・病気などの入院、または入院の付き添いや看護が必要な時といった緊急時に医療的ケア児を預けられる支援です。
身近に緊急一時預かり支援がないと、ご自身の健康管理や共に暮らす家族のことなどで、さらにプレッシャーを感じやすくなります。
短期入所
短期入所とは、ご家族の休息目的やきょうだいの行事への参加、冠婚葬祭などがある時に、1泊2日〜1週間入所できる施設です。
医療的ケアをしている保護者は、きょうだい児への不安も抱えており、保護者ときょうだい児との関わりが支援できるようなサービスが求められています。
日中一時支援
日中一時支援とは、在宅で過ごしている医療的ケア児を、朝から夕方(施設によっては18時以降も可能)預けられる施設です。
ご家族の休息や定期的な医学管理、医療的ケア児の活動の場を目的として利用できます。
訪問レスパイト
訪問レスパイトとは、訪問看護ステーションからご自宅へ看護師などが訪問して医療的ケア児のケアを行うことで、ご家族の休息ができるサービスです。
ご家族の休息時間の確保が必要
ご家族が医療的ケア児を継続してケアするためには、休息できる時間の確保が必要です。
昼夜問わない医療的ケアによってご家族が疲弊すると、心身の病気の要因となったり、医療的ケア児のケアができなったりする危険があります。
また日常生活において医療的ケアの時間を多く占めることで、きょうだい児との関わりが少なくなる、社会から孤立しやすくなるといった懸念点もあります。
そのため医療的ケア児を預けられるサービスを利用しながら、心身リフレッシュすることが大切です。
そしてきょうだい児との関わりや社会との繋がりを活発にすることで、良好な家族関係や社会関係が構築できます。
医療的ケア児の日本の課題は今後の変化に期待
医療的ケア児の日本の課題はさまざまあり、この記事では家族の健康問題・障害福祉サービスの利用課題・通学と学校生活の付き添いの課題の3つに焦点を絞って紹介しました。
医療的ケア児の日本の課題は調査によって明らかになっており、現在政策によって制度を整えているところです。
そのため、今後医療的ケア児とその家族が暮らしやすい社会へ変化することが期待されています。