2021年、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律という新たな法律が交付されました。
これは増加傾向にある医療的ケア児の日常生活と社会生活を社会全体で支えていくことを目的とした、医療的ケア児に対する支援法です。
医療的ケア児のためにこの法律を主体的に管理する厚生労働省が考える、医療的ケア児を支える国・地方自治体・医療・教育・介護・福祉などが一体となった社会のあり方とは、どのようなものなのでしょうか。
今回の記事では医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律と厚生労働省の取り組みを中心に、誰もが意思を尊重され、安心して社会生活を送るための制度についてご紹介していきます。
医療的ケア児の概要
医療的ケア児は、日常生活や社会生活のなかで恒常的に医療的なケアを必要としている18歳未満の児童を意味する言葉です。
周産期および新生児期の医療技術が発展したことにより平成中期頃から急速にその数は増加しており、具体的には2005年時点での約1万人から、2022年には約2万人と、17年で2倍という驚異的なペースで増加を続けています。
医療的ケア児が必要としている医療的なケアは、人工呼吸器や胃ろうに代表されるような医療的デバイスの使用や、喀痰吸引や経管栄養など有資格者が担当する必要のある医療行為などとなっています。
そのため医療的ケア児が日常生活や社会生活を送るなかでは、医療資格をもつアテンダントによるサポートと、家族の献身的なケアを欠かすことができません。
特に家族による医療的ケアは、とても大きな問題のひとつです。
医療的ケア児が自宅で日常生活を送るなかでは、基本的に家族が医療的ケアの全てを担当しているケースが大半となっており、医療的ケア児のサポートによって主に母親が離職をせざるをえない環境は、大きな社会問題となっており、今後は医療的ケア児家族の負担をより一層軽減することができるような社会の制度整備が求められています。
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の概要
医療的ケア児の増加を受けて、医療的ケア児の健やかな健康・医療的ケア児家族の離職防止・安心して子育てができる社会の実現を目的とした、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が交付されました。
厚生労働省ではこの法律に基づいて、社会全体で医療的ケア児と家族をサポートしていくために国や地方自治体・医療・教育・介護が連携するための制度整備を進めています。
学校と保育所に対する、看護師の配置
まずこの法律において学校や保育所の設置者に対して義務付けられたのが、医療的ケア児のために様々な医療行為を行うことのできる看護師等の配置です。
国や地方自治体は看護師等の配置を支援し、医療的ケア児が居住地域に関係なく、安全に社会生活を送るための制度整備を行っていくことが定められています。
医療的ケア児支援センターの設置
またこの法律では、都道府県ごとに医療的ケア児支援センターの設置を行うことが規定されています。
医療的ケア児支援センターでは、医療的ケア児及びその家族の相談に応じて、関係機関や関係するサービスと医療的ケア児を結ぶ架け橋のような役割を担います。
医療・保健・福祉・教育・労働等に関する業務を行う関係機関と連携することによって、医療的ケア児の日常生活と社会的生活を包括的にサポートしていくことが求められています。
医療的ケア児に関する、その他の制度整備
医療的ケア児に対する支援法に定められた制度整備以外にも、厚生労働省では様々な取り組みによって医療的ケア児とその家族が安心して暮すことのできる社会の実現を目指しています。
具体的に現在進められている取り組みは、以下の通りです。
医療的ケア児等コーディネーター等育成研修
医療的ケア児は医療的なケアを必要としているのはもちろんのこと、日常生活や社会生活において様々な配慮を行う必要のある存在です。
医療機器の安全管理や恒常的に医療的な支援が提供できる人員の配置に加えて、必要に応じた生活支援やサポートを提供していくためには、医療的ケア児に対する知識をもったアテンダントや教育者の育成が欠かせません。
そのため医療的ケア児コーディネーターの育成研修では、医療的ケア児に対する正しい知識の普及と、医療的ケア児にまつわる様々な支援の概要を広く周知していくことを推進しています。
医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)
MEISは、医療的ケア児に関係する情報を管理するデータベースです。
医療的ケア児に関する既往歴や現況などをデータで管理することによって、これまではかかりつけ医や家族が管理していた医療的ケア児に関する医療記録を、緊急搬送を担当する救急退院や受け入れ先の医療機関が確認できるような仕組みになっています。
現在MEISの管理は、開発を主導した厚生労働省からこども家庭庁に移行していますが、MEISを利用することによって医療的ケア児やその家族が感じていた毎日の社会生活に対する不安を軽減することができ、外出や旅行などにも積極的に出かけられるような制度整備が進んでいます。
医療的ケア児やその家族が、さらに安心して暮すために。支援法や厚生労働省の政策に加えて必要な支援を。
医療的ケア児とその家族に対する支援法や、厚生労働省が主体的に取り組んでいる制度整備などについて簡単にご紹介してまいりました。
今後もその数が増加すると考えられている医療的ケア児とその家族の日常生活や社会生活に対して様々な仕組みづくりが推進されていますが、特に株式会社土屋グループでは、自宅での医療ケアを担当する家族の負担軽減が今後も大きな課題となってくると考えています。
現在も医療的ケア児が19歳以上となった時に利用することのできる重度訪問介護を日本全国で提供していますが、今後もより一層、日常生活で支援を求めているクライアントに対して必要なサービスを提供することができるよう、介護業界のパイオニアとして声を上げ続けていきたいと考えています。