医療ケア児を支援したいと考えてている方は「養成研修を受講したいけど何をするの?」「どこでやってる?」と疑問に思うのではないでしょうか。
この記事では、医療的ケア児支援者養成研修とは何か、目的や開催地、カリキュラムを紹介します。
また医療的ケア児を支援する役割の中には、医療的ケア児コーディネーターがあり、コーディネーターも研修がありますので、そちらも併せて紹介します。
医療的ケア児等支援者養成研修とは
医療的ケア児等支援者養成研修とは、人工呼吸器や胃ろうなど日常生活をおくるために医療的ケアが必要な児や、重度の心身障害がある児の支援をするための研修です。
研修を受講することで、医療的ケアの基礎知識、利用できる福祉サービス等社会資源、家族支援、関係機関の連携及びネットワーク構築のための具体的なノウハウ等を学べます。
研修が開催されるようになった背景
医療技術の発展により、ここ10年ほどで医療的ケア児は約2倍となり、令和3年現在の医療的ケア児数は約2万人と推定されています。また、人工呼吸器を装着している児は2,000人から4,600人と約2.6倍となっています。
医療的ケアを受けながら生活できる児が増えたものの、保育施設等での受け入れ体制が未だ十分に整っていないことが問題視されています。
受け入れ体制が確保できないことにより、児は保育施設での成長がはかれず、保護者が仕事を辞めて児の支援を行うケースも少なくありません。
このような課題を解決するために、2021年に医療ケア児支援法が制定され、児を家族だけでなく地域で支援するために保育施設で児を受け入れられるような整備が推進されています。
支援する医療的ケア
支援する医療的ケアの内容は児によって異なります。ケアの内容を紹介します。
- 痰の吸引
痰の吸引は、口、鼻、人工呼吸器の気切カニューレにチューブを入れ、たまった痰を機械で吸引します。痰による窒息の予防、痰が肺に入り炎症を起こす誤嚥性肺炎の予防ができます。人工呼吸器を装着している場合は必須のケアです。
- 胃ろうと腸ろうからの経管栄養
胃ろうや腸ろうは、飲み込みなど何らかの影響により口から食事が摂れない児に対し、栄養がとれるように胃や腸に穴をあけ、チューブを留置する方法です。鼻腔や胃ろう、腸ろうからのチューブを介して、直接栄養補給を行います。
- 経鼻経管栄養
経鼻経管は、飲み込みなど何らかの影響により口から食事が摂れない児に対し、鼻腔から胃の中にまで届いているチューブが留置してあり、鼻腔から栄養補給する方法です。
- 導尿
導尿は排尿障害など自力で排尿ができない場合に、尿道へ専用の管を入れて排尿する方法です。成長するにつれて児自身で導尿できるようなるケースもあります。
- 血糖測定、インスリン投与
血糖値のコントロールができない児に対して血糖値を測定し、値を確認し血糖値を下げるインスリンを投与します。
- 酸素吸入
酸素を上手く取り込めない場合に、鼻、口からチューブを介して酸素を吸入します。
- ネブライザー吸入
呼吸が楽になるように痰を出しやすくしたり気道を広げたりするために、機械で薬液を霧状にし口から吸いこみ、肺や気道に行き渡るようにします。
医療的ケア児等支援者養成研修の内容
医療的ケア児等支援者養成研修は、厚生労働省が定めたカリキュラムに沿って各都道府県で準備・開催されています。
研修の受講を考えている方は、都道府県のホームページを確認しましょう。都道府県によって、受講日時、料金、対面での研修かオンラインでの研修か異なります。
対象者
研修の対象者は、保育所、認定こども園、幼稚園、障害児通所支援事業所、学校関係等に勤務している方や、今後医療的ケア児を支援する予定がある方、医療的ケア児を知りたい方などです。
職種問わず誰でも受講できますが、都道府県によっては、開催する都道府県内に勤務している方と定められていることがあります。
また市町村の自治体で開催されている研修は、対象者は市町村内の保育施設に携わっている方限定となっていることもあります。
研修を受ける際は、自分が対象者に当てはまるかどうかを確認しましょう。
また受講の定員があるケースもありますので、研修を受講する際は早めの申し込みが必要です。
研修のカリキュラム
医療的ケア児支援者養成研修のカリキュラムを紹介します。
科目名 | 時間数 | 内容 |
---|---|---|
1.総論 | 1時間 | ①医療的ケア児等の支援の特徴 ②支援に必要な概念 |
2.医療 | 3時間 | ①障害のある子どもの成長と発達の特徴 ②疾患の特徴 ③生理 ④日常生活における支援 ⑤救急時の対応 ⑥訪問看護の仕組み |
3.福祉 | 3時間 | ①本人・家族の思いの理解 ②支援の基本的枠組み ③福祉の制度 ④遊び・保育 ⑤家族支援 ⑥虐待 |
4.連携 | 2時間 | ①小児在宅医療における多職種連携 ②連携・協働の必要性 |
5.ライフステージにおける連携 | 3時間 | ①各ライフステージにおける相談支援に必要な視点 ②NICU からの在宅移行支援 ③児童期における支援 ④学齢期における支援 ⑤成人期における支援 ⑥医療的ケアの必要性が高い子どもへの支援 |
総時間は12時間のため、対面での研修の場合は2日に分けて開催している都道府県が多いです。
またオンラインでの研修の場合は、8日間〜1ヶ月ほど期間をとって科目や内容ごとに研修をしていることが多いです。
医療的ケア児等コーディネーター支援者研修とは
医療的ケア児を支援する役割のひとつに、医療的ケア児コーディネーターがあり、コーディネーターも研修があります。
コーディネーターの役割は、児への専門知識と経験に基づいて健康を維持しつつ、児の支援に関わる機関との連携や調整を行うことです。
医療的ケア児の生活システム構築のための、キーパーソンとしての役割が求められています。
対象者は主に相談支援専門員、保健師、訪問看護師等を想定しています。
医療的ケア児等コーディネーター支援者研修の内容
医療的ケア児等コーディネーター支援者研修は、医療的ケア児等支援者養成研修と同様、厚生労働省が定めたカリキュラムに沿って各都道府県で準備・開催されています。
研修の受講を考えている方は、都道府県のホームページを確認しましょう。
都道府県によって、受講日時、料金、対面での研修かオンラインでの研修か異なります。
研修のカリキュラム
医療的ケア児等コーディネーター支援者研修のカリキュラムを紹介します。
科目名 | 時間数 | 内容 |
---|---|---|
1.総論 | 1時間 | ①医療的ケア児等の地域生活を支えるために ②医療的ケア児等コーディネーターに求められる資質と役割 |
2.医療 | 3時間 | ①障害のある子どもの成長と発達の特徴 ②疾患の特徴 ③生理 ④日常生活における支援 ⑤救急時の対応 ⑥訪問看護の仕組み |
3.本人・家族の思いの理解 | 2時間 | ①本人・家族の思い ②意志決定支援 ③ニーズアセスメント ④ニーズ把握事例 |
4.福祉 | 3時間 | ①支援の基本的枠組み ②福祉の制度 ③遊び・保育 ④家族支援 ⑤虐待 |
5.ライフステージにおける連携 | 2時間 | ①各ライフステージにおける相談支援に必要な 視点 ②NICU からの在宅移行支援 ③児童期における支援 ④学齢期における支援 ⑤成人期における支援 ⑥医療的ケアの必要性が高い子どもへの支援 |
6.支援体制整備 | 1時間 | ①支援チーム作りと支援体制整備/支援チームを 育てる ②支援体制整備事例 ③医療、福祉、教育の連携 ④地域の資源開拓・創出方法 |
7.計画作成のポイント | 2時間 | 演習に向けた計画作成のポイント |
8.演習(計画作成) | 7時間 | 事例をもとにした計画作成の演習 |
9.演習(事例検討) | 7時間 | 事例をもとに、意見交換(グループディスカッショ ン)・スーパーパイザーによる計画作成の指導 |
演習含め総時間20時間の研修を受講します。
児への理解を深めるだけでなく、家族への支援や児をとりまく支援の体制、演習があるのが特徴です。
医療的ケア児等支援者養成研修を受けて医療的ケア児を支援しよう
医療的ケア児等支援者養成研修は、人工呼吸器や胃ろうなど日常生活をおくるために医療的ケアが必要な児や、重度の心身の障害のある児の支援をするための研修です。
児に携わっている人や今後児を支援する機会がある人は、研修を受講することで児への理解が深まり、適切な支援ができるようになります。
また、医療的ケア児の支援にはコーディネーターもありますので、包括的な支援に興味がある方は、コーディネーター研修の受講をおすすめします。