超高齢化社会が進行する日本では、高齢者の人口比率が高まってきている傾向、また世界的にみても人々の寿命が長い傾向にあることから、介護が大きな社会問題となっています。
特に第二次世界大戦後に生まれた団塊世代(1947年生まれ~1949年生まれの世代)が75歳以上の後期高齢者世代に突入する2025年には、介護の需要と供給がミスマッチを起こすのではないか、具体的には介護サービスを必要としていても受給できない人々の数がもっと増えるのではないかと推測されています。
介護を必要としているのに希望のサービスを利用できない人々、いわゆる「介護難民」の問題について厚生労働省はどのように考えているのでしょうか。
この記事では介護難民の定義や人数を中心に、厚生労働省の取り組みを踏まえながら、現代の介護事情についてご紹介していきます。
介護難民の定義
介護難民とは、高齢や認知症、または持病や精神疾患などを理由に介護が必要な状態と認定されていながらも、希望するサービスを利用することができていない人々を表す言葉です。
厚生労働省や政府によって正式に定義づけられた言葉ではありませんが、保育園への入園が叶わない待機児童問題と同様に、大きな社会問題となっています。
介護難民の問題点①働き手の不足
介護難民がなぜ大きな社会問題であるかというと、まず1つ目の理由として挙げられるのが、自宅で介護を行う家族にかかる負担の大きさが挙げられます。
介護サービスを利用することができていないクライアントが家族内にいると、誰かが日中もクライアントの世話を担当しなくてはならず、精神的にも肉体的にも大きな疲労がたまりやすい環境です。
多くの場合は子ども夫婦のうち奥様が介護を担当されることが多く、待機児童の問題と同様に女性の社会進出を妨げ、国全体の働き世代不足の一因となっていると指摘されています。
介護難民の問題点②要介護度の進行や孤独死
介護を必要としているのに必要な介護保険サービスを受給できなかった場合、クライアントにとっての困りごとを解消することができず、要介護度の進行や持病の悪化など、健康に大きな影響を及ぼす事態につながりかねません。
また核家族化や独居の傾向が進みつつある日本では、高齢者の孤独死に対しても十分な注意が必要です。
介護難民の問題を解消し、介護を必要としているクライアントを社会全体で見守るシステムの構築が早急の課題といえます。
介護難民の人数
介護難民の人数については、厚生労働省が発表している正確な調査結果はありません。
介護難民のなかでも、データが明らかになっているサービスの詳細を確認していきましょう。
特別養護老人ホームにおける介護難民
特別養護老人ホームは正式名称を介護老人福祉施設といい、在宅での介護生活が困難なクライアントに対して、入居型で介護サービスを提供する施設です。
略して特養と呼ばれることも多く、介護保険制度を活用し公費で利用することが可能ですので、比較的費用が高く、クライアントやその家族から人気の高い施設です。
2022年に行われた厚生労働省の調査によると、2022年時点で特養への入居を希望していながらも入居することができずに待機しているクライアントの数は、約25万人と発表されています。
つまり特養に限っての介護難民であっても、日本には約25万人の介護難民が存在していることになります。
同じく厚生労働省が2022年に発表した統計によると、日本全国で保育園に入ることができなかった待機児童の数は2944人となっていますので、いかに介護難民の問題が大きな社会問題であるかがよく分かります。
都心部で増え続ける介護難民
また介護難民は、地域によって特性のある社会課題の一つです。
特に都心部と地方では人口構成に大きな違いがあり、仕事を求めて都心部に流入した団塊世代を多く抱える都心部は、今後の介護難民増加が懸念されています。
日本創成会議の試算によると、2025年の東京近郊では希望する介護サービスを受給することのできない介護難民[1] の人数は、約13万人に達するという予測が出ています。
一方の地方では人口全体が減少し、クライアントの数も減少するのではないかと考えられており、地方によって異なる介護難民の状況や人数を踏まえた対策が必要です。
介護難民に対する、厚生労働省の取り組み
厚生労働省では上記のような介護難民の課題に対して、地域包括ケアシステムの構築による地域の課題に則した介護サービスの提供や、介護職員処遇改善加算の拡充による質の高い介護サービスの提供を推進しています。
地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムは、自治体の住環境・医療・介護・福祉などの拠点が連携してクライアントの自宅生活を支えていくための仕組みです。
地域ごとに異なる介護の課題に柔軟に対応することで、クライアントにとって住み慣れた自宅のある地域での自立した生活を継続できるよう、サポートしていきます。
具体的には地域包括支援センターを自治体ごとに設置し、クライアントや家族からの相談を受けて、必要な介護サービスや福祉サービスへとつなげています。
介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算は、アテンダントの給与アップにも直結する、非常に重要な加算項目です。
介護業界の給与アップは既に働いているアテンダントの生活にとって重要であるのはもちろんのこと、常に人材不足に悩む介護業界において、人材確保という観点からも非常に重要な制度となっています。
加算の内容は定期的に見直されており、時代の流れに則して加算条件や加算額は適宜調整されています。
介護難民の定義や人数について、厚生労働省の公式見解はなし。土屋グループは主体的に介護難民の課題解決に取り組みます
利用を希望している介護サービスを受給できずに悩む介護難民の定義や人数に関して、厚生労働省による調査結果や報告書は公表されていません。
しかしながら日本各地で介護を提供し続けてきた株式会社土屋グループでは、まだまだ介護を必要とする全ての方々にサービスを提供しきれていないと感じています。
今後もクライアントとアテンダントの両者が笑顔となれる社会の構築を目指して、土屋グループは介護難民の問題に挑戦し続けます。