介護福祉士として働いていると、認知症の方の対応に困るケースがあります。
そのような時、認知症のケアを学び現場に活かすことで、より良い支援ができます。
しかし介護福祉士の資格がある方は「介護福祉士国家試験で認知症の勉強をしたのに?」と思うかもしれません。
この記事では、認知症ケアを介護福祉士が学ぶ重要性と、認知症ケアに関する資格について紹介します。
認知症ケアを介護福祉士が学ぶ重要性
高齢社会に伴って認知症の数が増加しており、厚生労働省によると令和7年には認知症の数が675万人〜730万人になると推計されています。
認知症の方に関する行政や医学、介護は常に変化しており、介護福祉士試験の勉強をした当時と現在では異なることがあります。
そして今後もさらに新しい行政サービスや医学、介護が確立されるでしょう。
そのため、クライアントが主に高齢者である介護福祉士は、認知症や認知症ケアについて学び続けないと支援が困難となるケースが予想されます。
なお介護福祉士は、介護を取り巻く環境の変化による業務の変化に対応できるよう、知識やスキルの向上に努めなければならない資質向上の責務があります。
介護福祉士が認知症や認知症ケアを継続して学ぶことで、クライアントに適切な支援ができるのです。
介護福祉士国家試験の科目である認知症の理解
介護福祉士国家試験の問題では、「こころとからだのしくみ」の領域の中に「認知症の理解」という科目があります。
試験では「認知症の理解」から10問出題されており、認知症の特徴や事例について勉強をされた記憶があるかと思います。
しかし介護福祉士国家試験で勉強した経験はあっても、当時覚えた知識は薄れるものです。
新たに学ぶことで知識の再確認となり、当時とは異なる認知症の特徴を知ったり、支援方法を学んだりするきっかけになるでしょう。
そして学びを深めると、介護福祉士として働いた経験から、新たな気づきが得られるかもしれません。
認知症ケアに関する資格
ここでは認知症ケアに関する資格を紹介します。
- 認知症介護基礎研修
- 認知症介護実践者研修
- 認知症介護実践リーダー研修
- 認知症介護指導者養成者研修
上記の資格は、下にいくほど上位の資格となっています。
それぞれの研修を詳しく紹介します。
認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修は、認知症の方の介護で必要な知識とスキルが学べる基礎的な研修です。
2021年度の介護報酬改定で、指定の資格を持たない介護士に対して受講が義務付けられました。
介護福祉士の資格がある人は受けなくてもかまいませんが、資格の有無関係なく誰でも受けられる研修です。
研修にかかる時間は6時間程度のため受講しやすく、基礎的なことを改めて学びたい人におすすめです。
受講方法は各自治体や委託された民間の団体によってさまざまですので、勤務している事業所・施設が所在している自治体のホームページを確認しましょう。
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修は、認知症の方の介護に関する実践的な知識と支援が学べる研修です。
認知症介護実践者研修は各自治体で開催されており、都道府県によって受講条件はさまざまなため、自治体のホームページをご確認ください。
また研修にかかる期間や費用も各自治体によって異なります。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修は、介護現場における認知症介護のリーダー能力を養うための研修です。
施設や事業所内で他の介護職員を指導したり、認知症ケアの質を向上させるための計画を展開できる力を身に付けたりします。
認知症介護実践リーダー研修も上記の研修と同様、各自治体で開催されています。
研修にかかる期間や費用は各自治体によって異なりますが、期間はおおよそ3ヶ月であることが多いようです。
認知症介護指導者養成研修
認知症介護指導者養成研修は、認知症介護実践者研修・認知症介護実践リーダー研修の企画や立案をし、講義や実習の講師を担当する立場です。
また介護現場における認知症ケアの質の改善を指導する役割も担っています。
認知症ケアに関する資格の中で、最も上位にあたる資格です。
各都道府県または指定都市から申し込み、研修は認知症介護研究・研修センターが実施します。
認知症介護研究・研修センターは全国に3拠点あります。
- 東京センター(東京都杉並区)
担当地域:関東、新潟、九州、沖縄
- 大府センター(愛知県大府市)
担当地域:近畿、中部
- 仙台センター(宮城県仙台市)
担当地域:北海道、東北、中国、四国
研修期間は9週間、そのうちセンターでの集合研修は15日間です。
修了までにかかる時間は308時間と、介護の資格の中では取得までに長い時間がかかる資格です。
介護福祉士の上位資格である認定介護福祉士も
介護福祉士の上位資格である認定介護福祉士は、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が2015年から開始した民間資格です。
高齢社会による利用者の増加に伴って、介護福祉士は多様化するニーズに応えることや介護士への指導、医療機関との連携など、さまざまな役割が求められています。
認定介護福祉士に期待される役割は以下のとおりです。
- 介護の実践的なスキル向上
- 介護リーダーへの教育や指導
- 介護サービスのマネジメント
- 地域における介護力向上のための助言、支援
- 他職種とそのチームと連携、協働
認定介護福祉士は介護福祉士の資質を高め、社会的な要請に応えることを目的としてつくられたキャリアアップのための仕組みです。
認定介護福祉士の受講条件
認定介護福祉士の受講条件を紹介します。
- 介護福祉士の資格がある
- 介護福祉士の資格を取得してから実務経験が5年以上ある
- 介護職員対象の現任研修を100時間以上受けている
- 研修実施団体のレポート課題、または受講試験において一定水準以上の成績を修めている
受講条件からわかるように、経験や実績のある介護福祉士でないと受講できません。
条件を満たし、介護福祉士としてさらなるステップアップを目指している方におすすめの資格です。
認知症とケアを学びより良い支援をしよう
高齢社会に伴って認知症の方が増加しており、認知症の方を取り巻く環境も変化しています。
取り巻く環境は行政サービスや医療機関、介護分野など多岐に渡ります。
そのため、クライアントにより良いサービスを提供するためには、介護福祉士は学び続ける必要があるのです。
この記事で紹介した研修を参考に認知症に関する学びを深め、クライアントに適した支援を提供しましょう。