柴田「その訪問介護事業所は、1階がクリニックで、2階が住宅型有料老人ホーム。その中に事業所が併設されていました。現場に入る時間は少なかったのですが、利用者一人一人のお部屋に訪問するので、お話する機会も十分に取れて、心の余裕ができたのかな、と思ってます。
ただ、私が苦戦したのが――初めてここで、“管理者”という立場になったんです。当時、私は26歳。ヘルパーさんたちは当然、私よりも大分年上の方ばかりで、スタッフの皆さんをまとめていくことは至難の業でした。皆さん、ご自身の考えがしっかりあったので、こちらから伝えたことを受け取ってもらえないこともありました。
それでも、仕事ですから『私たちの仕事は利用者の方からお金を頂いて、サービスを提供しているんだよ』ということを、伝えていってはいたんですが――あの時は大変だったなという思いはあります。
ただここは、スタッフの皆さんをまとめたり、管理者という立場になったことで、請求業務の流れやケアマネさんとの関わり、ご家族との関わりを最初に学んだ職場だったんです。それまでは事業所に入ってくるお金の流れや、『ケアマネさんとどういうふうにつながってこの人は入居したんだろう』という利用者の方の背景を全く見ることができなかったんですよね」
働く場や自身の立場を少しずつ変えてきた柴田。その後、5年半ほど勤めたデイサービスでは「これまでの経験を活かせたので、スムーズに業務に取り組めるようになった」と言います。
柴田「そのデイサービスでは生活相談員と現場の主任を任されていました。ただやはり、スタッフのまとめ役になるのは大変な時もありましたね。現場では、想定外のことがたくさん起きますから、立場として話を聞く役にまわりましたが、一方で『何かを伝えたい』『話を聞いてほしい』という話をする側になった時というのは、強い思いがあるからこそ、どうしても自分の主張だけになってしまうことも多いと思うんです。
でも話を聞く側として、その人が言ってることだけを聞くのではなく、別の人の話もしっかり聞くようにして、ひとつの出来事をいろんな角度から見て、全体を理解することに私は重きを置いていました。
そうやって、それぞれの話をちゃんと聞いて、お互いの落としどころを見つけるところまで持っていけるように努力はしてたかな……。デイサービスで学んだその部分は今の立場にも通じてますね。
今の西日本エリアマネージャーになってからはオンラインのやり取りがほとんどで、現場からの報告や問題があったとしても自分の目では見れませんし、耳で話を聞くだけなんです。だからこそ、報告を上げてくれた職員の話はもちろん、その周りの職員にも話を聞いて、その事業所に今、何が起こっているのかをいろんな方向から把握できるようにしてます。
そう思うと、これまでいろんな職場で働いてきたんですが、経験したことは全部、繋がってるのかな、と感じています」
そして、2022年、デイホーム土屋熊本へ。
柴田「もともと、今のデイホーム土屋熊本の管理者の林俊彦さんとはユニット型の特養で一緒に働いた仲間だったんです。林くんから『自分が今、働いているところでデイサービスが立ち上がるので、柴田さん、来ませんか?』というお誘いがあって。実はその時、“土屋”という会社のことは知らなかったんですよ。
林くんから『今、土屋という会社にいるんです』と言われた時に、その字面から『林くんは、建設とか土木系の会社で働いてるのかな』って私は勝手に思ってしまって(笑)。でも、林くんから土屋のデイホームで働いている話をいろいろと聞いているうちに『今までやってきたことがもしかしたら活かせるかもしれないなぁ』と思って、『じゃあ、やってみよう』って心の中で転職を決めたんです」
その後、柴田はデイホーム土屋熊本の生活相談員を経て、2022年10月、デイホーム土屋宇和島・錦海・下松・熊本・吹田の5事業所を見守る西日本エリアマネージャーとなります。