―ノーマルライフでは13年ほど働かれてきたとお聞きしています。介護の仕事、人との関わりの中で、川村さんが大事にされてることがあったら伺いたいです。
思うのは「その人のお話をよく聞くこと」でしょうか。
私自身、以前に、その場の状況だけを見て判断をされて、嫌な思いをしたことがあったんです。
本当はその場に至る前後の流れや背景、そうなった理由がちゃんとあって――。
逆にスタッフに対して、「なんかちがうな」「おかしいな」って私が思った時があったんですよ。
それで1回、その人に「なんでですか?」って聞いてみたんです。
そしたら、その背景をちゃんと教えてくれた。
そこからは、その場だけを見て、いきなり決めつけるんじゃなくて、「一旦、本人に聞いてみよう」って――。
そこは「気を付けないといけないな」って思いますね。
自分がそそっかしかったり、その人のことをすべて見れていないところもあるので。
―川村さんは、違う分野から介護のお仕事に就かれてますよね。この仕事に就いて、初めて知ったことや、続けていく中でご自身が変わってきた部分ってありますか。
介護の資格を取るのに3ヶ月ほど勉強をしただけで入社して、入社してからも研修はあったものの――実際に認知症の方と関わる中で感じたのは、「認知症とひとことで言っても、いろんな方がいらっしゃるな」ということですね。
机上ではいろいろ教えてもらうけど、実際には先ほどお話ししたみたいに、楽しく過ごしてくださる方もいらっしゃれば、そうでない方もいらっしゃる。
他のクライアントさんに対して「隣の席が空いてるからどうぞ」「今、テレビ楽しいのやってるよ」なんて声かけをされる方もいらっしゃれば、他の方の部屋に間違えて入ってしまう方もいらっしゃるし、夜中に歩き回る方もいらっしゃる。
「誰かが自分の大切なものをとった」と思い詰めてしまう方もいらっしゃいました。
ここに来てから、本当にいろんな方と出会わせていただいたのかな、って。
そうやって、やっと知りますよね、教科書に載ってないことを。
でも一方で、対応の難しさも感じてます。
最初は、そんなに認知症の重い方はいらっしゃらなかったのですが、だんだんにいろんな症状の方が入ってこられて。
その中で要介護度の高い方が寝たきりになられたり、病気になられたり。
転倒されて怪我をされたこともありました。
そういう時の自分自身の無力さ――「もうちょっと、なんとかできなかったのか」って日々、考えさせられることも多いです。
その方がいつまでも健康で長生きしてくださったら、それがいちばんいいんですけどね。
入居されてから、ここでずっと過ごすことになるのであれば――もちろん、医療の処置が必要になった場合は病院へ移ることになるのですが――「ノーマルライフでの日々をずっと楽しんでいただきたい」っていう気持ちは、ずっとありますね。
―川村さんにとって、「こういう時、ちょっと嬉しいな」みたいな瞬間ってどんなところですか。
顔を覚えてくださっているクライアントさんがいてくださることは嬉しいですね。
毎日のように関わっているんですが、「私、この人知ってるわ」なんて言ってくださってね(笑)。
もちろん、「知らん」って言われる方もいらっしゃいますよ(笑)。
その中でもね、親しみを込めて話しかけてくださったら、すごく嬉しいなって。
それって「日々、関わってるからこそなのかな」って思うんです。
認知症の方の場合は、信頼関係があればあるほど、逆に近しい方に当たってしまうこともある、とも聞いています。
以前、そんな場面を目にしたことがあるんですが、「そういうこともあるのかな」って思いながら、それはそれでね、「ご本人も辛いのかな」って――。
優しくお声かけしても、こちらが思いを寄せたとしても、なかなか伝わってる気がしない時もありました。
入社した頃に「それでも、本当は伝わってるんですよ」って教えられたことがあったんですよね。
だからこそ、「覚えてるよ」って言ってもらえたら、笑ってもらえたら、嬉しいなって思いますね。
―スタッフ間ではいかがですか?クライアントとの関わり方についてお話しするような機会はあるんでしょうか。
そうですね。
ケアミーティングをオフラインで開催させてもらっています。
スタッフ同士で、介護の仕方について思うところや、「自分はこう思うけど、どうなのかな」っていう疑問をその中で共有してますね。
正直なところ、私自身もどういうふうに言ってあげたらいいのか、わからない時もあるんです。
たとえば、スタッフ間で行き違いがあった時、両方の、それぞれの言ってることがわかる。
わかるからこそ、どっちの介護の仕方が「いい」とか「悪い」とかっていう判断ってできないですよね。
どちらも、自分なりに「この方法がいい」と思ってやってはるから。
私も人間が未熟なので。的確なアドバイスができればいいのですが、だからこそ、ちょっと聞きたいこと、相談したいことがあったら、その都度ケアミーティングを開催して、「みんなで話し合いましょう」っていうふうにしてます。