介護事業部

介護事業部 ホームケア土屋

尾上亜沙花

大分 アテンダント

大切にしていることは「コミュニケーションと、クライアントの観察」

 《interview 2022.03.08》

未経験から介護の仕事をスタートさせた尾上 亜沙花。身近な人の誘いから働き始めた重度訪問介護の現場で、尾上は「ありがとう」が行き交う日常と出会います。クライアント、仲間、そして家族。優しさの循環の中で、彼女が見つけた場所とは。自然体で歩む尾上の日々をめぐります。

CHAPTER1

たくさんの「ありがとう」が巡る重度訪問介護の現場で。小さな声を頭にいれて

生まれ育った大分で、現在、アテンダントとして活躍する尾上は、重度訪問介護(重訪)の仕事を始めて1年半。

この仕事の魅力は「コミュニケーションがしっかり取れるところ、それぞれのペースでできる楽しさがある」と語ります。

尾上 「クライアントの中にお話しするのが好きなALS(筋萎縮性側索硬化症)の方がいて、その方は文字盤を使用して、最近、自分自身にあった出来事やニュースのお話をしてくれます。韓国ドラマが好きな方なので、医療的ケアや介護の仕事以外の時間はドラマを一緒に見たりして過ごしていますね」

未経験から介護の仕事をスタートさせた尾上。

尾上 「最初は、先輩やクライアントの方が詳しく教えてくれました。わからない中でも、ひとつできたら『ありがとう』と言ってもらえることが嬉しかったです」

仕事の上で大切にしていることは?と尋ねると、「コミュニケーションと、クライアントの観察」とすぐさま切り返した尾上。「小さな声を頭にいれて」と続ける彼女には、「クライアントのちょっとした仕草や変化に気づけるよう」、日々の細やかな観察が身に染み込んでいるようです。

尾上 「クライアントの方の様子を丁寧に観察して報告をすることは、自分では当たり前だと思っていたんです。だから、ご家族や他職種の往診の先生に報告した時に『すごくわかりやすくて助かる』と言ってもらえたことも嬉しかったですね」

多くの人の「ありがとう」が巡りめぐる重訪の現場の日常。尾上が働く環境もまた、互いに「ありがとう」を伝え合う優しさに満ちています。

CHAPTER2

活き活きと働く母、そして姉の姿。仕事への想いを育んだ身近な人への憧れ

尾上はこれまで、仕事への想いを身近な人から受け取ってきました。

高校を卒業後、歯科衛生士専門学校へ入学した尾上。その進路先を選んだ理由には、ある人への憧れがあったと言います。

尾上 「幼い頃から母が歯科衛生士として働いていて、母の仕事を近くで見ていたんです。活き活きしている姿を見て、楽しそうだな、と憧れていました。
母は仕事やプライベートのこと、どんなことを相談しても聞いてくれて、アドバイスもくれる優しいお母さんです。自分に家庭や子どもができたらそんなお母さんになりたいな、と思っています。
母からは患者さんの話もよく聞いていて、高校生の時には母の職場にアルバイトとして働かせてもらったこともありました。一緒に働きながら『これはどうするの?』と質問をして『こういう時に使うんだよ』なんて説明を受けて。その姿を見て、『歯科衛生士になりたい』と思ったんです」

学校を卒業し、歯科衛生士として働き出した尾上。やりがいはあったものの、4年ほど働いた後、「何か違う仕事をやってみたい」という想いが浮かびます。

その時、尾上が相談したのが彼女のお姉さん。

尾上が相談した姉……。というのが、実は現在、ホームケア土屋 大分でオフィスマネージャーを務めている尾上 真奈花。2020年に入社し、事業所を軌道に乗せるため奔走していた姉の姿を近くで見ていた尾上は、「やってみない?」という姉からの声に興味を持ちます。

尾上「姉に『歯科衛生士を辞めようと思う』と言ったら、『せっかく資格もあるんだし、とりあえず資格を活かして、重訪で働いてみたら?』と言われて。
私は歯科衛生士の学校で、介護の初任者研修の資格も取っていたんです。もしやってみて合わなくても、まだ年齢的にもいろんな仕事に挑戦できるし、まずは一回やってみて、合うんだったら続ければいいし、合わなかったらそこから考えればいい、って」

母と姉、身近な家族から、自身の働く姿を思い描いてきた尾上。活き活き働くふたりの姿は、じんわりと尾上の心を動かしていきます。

CHAPTER3

「まずはやってみよう」。動いたから見つかった、重訪の仕事

姉が働く姿を見ながら、重度訪問介護という仕事に少しずつ興味を持ち始めた尾上。

尾上 「姉は元々は看護師だったので、介護や医療的ケアも当たり前にやってきていました。でも私自身は介護が未経験だったので、姉から仕事の内容を聞いてもよくわからなかった……。というのが正直なところです。

でも興味があって、漠然と『こういう感じなんだろうな』という中で仕事を始めたんです」

「まずは、やってみよう」。尾上は3ヶ月、“お試し”で重訪の世界へ足を踏み入れることに。

尾上 「とにかく何もわからないし、排泄物の扱いも初めてで、戸惑いもありました。やっていけるかわからなかったのですが、最初の支援現場に同行してくれたのが姉だったんですよ」

重訪は、アテンダントとクライアントが一対一の現場であるため、アテンダントが独り立ちするまでの間、先輩が新人の支援現場に同行します。そこで、クライアント一人ひとりの生の情報を、人から人へ丁寧に伝えていく独自の研修期間があるのです。

そこで尾上は、姉・尾上 真奈花の新たな一面と出会います。

尾上 「姉は結構、家ではさっぱりしてるんです(笑)。でも一緒に働いていたら『あぁ、こんなに優しいんだ』と思いました。仕事もとても丁寧で的確だし、アテンダントに対してもクライアントに対しても常に気を配っていて、姉のそういう姿を初めて見ました。仕事もやっていて、その上、子どもも育てていて、すごいなぁって」

1ヶ月ほど続いた同行期間。細やかな引き継ぎや独り立ちへのサポートを受けながら、尾上は少しずつ「自分のしごと」を見つけていきます。

尾上 「姉からはクライアントやご家族とのコミュニケーションの取り方、介護のやり方のコツを教えてもらいました。クライアントの方もいろいろ教えてくださって、とても優しかったですね。
でも、自分が一歩間違えれば命の危機につながるんだという不安はあって、やっていけるのかな、とは思いました。人工呼吸器をつけているALSの方の支援現場に、独り立ちして入った時に、異常を示す呼吸器のアラーム音が鳴ってしまったことがあったんです。初めてだったので、すぐに姉に電話して的確な指示をもらい、なんとかして改善できたこともありました。
でも、そうやって少しずつでも自分でできていくのがわかって自信がついてきて。自分に合っているのかなと思えた時、『続けたいな、社員になろう』と決めたんです」

3ヶ月の“お試し”期間の中で、ゆっくり出会った「自分のしごと」。万全のサポート体制の中で、自信―自分を信じる力―をつけた尾上は2020年10月、常勤アテンダントとなります。

CHAPTER4

「自然な感じでいれば大丈夫なんだ」。自然体が活きる介護の現場で

尾上はこの1年半でさまざまな経験を重ねてきました。その中には、クライアントから一度はNGを出された現場もあったと言います。

尾上 「その時も、先輩や姉が『ちゃんと教えるから、もうちょっと様子見て』とフォローしてくれました。クライアントの方からも『他の方はそうかもしれないけれど、私はこうして欲しい』ということをはっきり言ってもらえて。そこから気をつけてコミュニケーションを取るようにして、(自分の間違っていたところを)直せたんです」

尾上はそこでも、持ち前の素直さで、まわりからのフォローやアドバイスを受け入れ、自分が求められていることを見つめ直し、一度は壊れかかった信頼関係を回復していきます。

尾上 「そこから少しずつ任せてもらえるようになりました。先輩からも『クライアントの方も間違ったら教えてくれるし、いつも通りにしていたら自然と覚えられるから大丈夫だよ』と言ってもらえて、『自然な感じでいれば大丈夫なんだ』と思えたんです」

信頼の回復という経験を通して、周りからのあたたかなサポートに再び気づいた尾上。現在は新人をサポートする側になっています。

尾上 「前までは先輩を頼りにしていたんですが、今は自分が軸になっているところがあるので、新人アテンダントにはクライアントの情報をしっかり伝えて、お互いやりやすいようにしなきゃ、と思ってやっています」

身近な人の声に支えられ、自身のペースで道を見つけてきた尾上。これから、介護福祉士の免許取得を目指して、「今は先輩の姿を見て、クライアントに寄り添って技術を磨いている」と語ります。

そんな彼女が今、憧れる人とは?

尾上 「大分のコーディネーターで、芳山恵さんという方がいます。その方は介護技術もあって、ご家族やクライアントの方が求めていることをしっかりできて、どんな現場に行っても綺麗にハマれる方なんです。色々な状況があって、なかなか定まらなかったクライアントの現場にも無理なくすんなり受け入れられて、家族からも『あの人になら任せられる』ってすごく信頼をされています」

現場に同行した尾上は、そこで“憧れの人”の技術をしっかり観察していました。

尾上 「家族がこれを求めているだろう、ということを常に先読みしているんです。家族が『芳山さん、こうして欲しいです』と言った時点で、『もうそれしましたよー』ってやり終わっている。それを見て、『こうなりたいなぁ』って思っています」

クライアントから、先輩から、家族から。いくつもの声を掌いっぱいに受け止め、現場に立つ尾上には“自然体”という言葉がしっくりきます。

命と命が直にふれあう介護の現場では、アテンダントの人間力が求められます。それは「素のままのその人」に戻れた時、ふと見えてくるものなのかもしれません。

目の前のクライアントの生を支えながら、ひとりの人間と、人として出会うことができる重度訪問介護。仕事という役割の中で、自然体であることを引き受けた時、優しさの循環はゆるやかに巡り出すようです。


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