―その後、土屋に入社されて正社員となって、今はオフィスマネージャーになられています。
立場が移っていく中で、思いの変化もありましたか?
「初めに自分は一般常勤で働いていて、何度か『そのうち、コーディネーターになってね』なんて言葉もらっても一切そういう気はなくってですね。
その当時のコーディネーターの人の働きを見ていたら、とても大変そうで。
『自分はそこまでできないな』っていう思いもあったのか、なりたいというふうには思ってはいませんでした、当初は。
ただ同僚といろいろ話をしていて、いろんな問題が浮かび上がってきたりするじゃないですか。
そういう時に『コーディネーターや管理者じゃないと事業所は変えられないな』って思ったのが、上を目指すきっかけでした。
『そのレイヤーにいないと何も変えられない』と思って、またお誘いを受けた時に『やってみよう』ということでコーディネーターになって、その後、管理者になったと思います」
―今はオフィスマネージャーとして、本人とご家族の間に入ってお話をしたり、「アテンダントの時よりは重圧も感じるけど、オフィスマネージャーだからこそできる部分がある」とも仰っていました。
佐藤さんが今の位置に立って見えてきたもの、今の立場だからこそできることってどんなところにあるんでしょうか?
「私が感じるのは、ご家族がクライアント本人に対して腫れ物を触るように接するというかーー『障害があって可哀想だから』と、ご家族にとって難題なことでも、本人の言うことをすべて聞いてあげるような場面があるんです。
その状況が続くことで、クライアントがヘルパーの至らない点にも、家族と同様に暴言を浴びせるということが、支援の現場ではあります。
土屋でも取り組んでいるカスタマーハラスメントの問題です。
ヘルパーはもちろん、私自身も経験しました。
一方で、ご家族と本人との関わりで、『人としてやってはいいことと悪いことがある』という伝え方をしているようなご家族もいらして、その方が障害者であることを忘れるぐらいポジティブだったり、人との関わり方が“障害者とヘルパー”じゃなくて、“人と人”として支援ができている状況もあるんです。
そこを『何が違うんだろう?』と考えると、生活環境や生育環境が大きいのでは、と思います。
『クライアントやご家族がそうしてしまう背景を理解しながら、アテンダントのモチベーションを下げずに、どう解決していったらいいんだろう』っていうのは今、悩んでいるところですね。
でも私が偉そうにそういったことを言うんじゃなくて、より豊かに生活するための助言というか、その手助け。『間違った方向に行ってるかもよ?』『こうすると、もっといいかも』みたいな感じで、方向性の手助けができればいいなというふうに思っています。
そのためにはもっと経験を積まなければいけないとも思っています」
―そのやり取りは、ご家族からの相談に乗るような感じで進むんですか?
それとも、こちらからの働きかけとして「こんなこともありますよ」みたいにお伝えされるんですか?
「『本人が可哀想だし、好きなことをさせてあげたいから、そう言うと怒るんです』とか『何かを注意すると、泣いて『死にたい』って言うから、『死にたい』って言われると何も言い返せなくて』っていうご家族も多いんです。
ただ『障害があるからといって、何を言ってもいいっていうことにはならない』っていうことをそういう時、私は直接言います。本人に言ったこともあります。
こんなにーー『私たち本気でぶつかってケアしてるよ』『何でも言って欲しいけれども、それは人に対して言っちゃダメな言葉だよね』って。
私もですが、お互い泣きながらしゃべったこともありました。全力でぶつかるというか。
多分そういう性格なのかもしれないですね、私が(笑)。
ただ、家族にも必ず『私はこういう理由で、こういうことを本人に伝えています』とお伝えします。
『泣いているけれども、きっとわかってくれていると思う』っていう話をしたり、その連携は常に取るようにはしてます」
―家族とクライアントの間で固定的になってる関係に、入れるのが佐藤さんやアテンダントの方なんですね。
その関係をちょっと崩すというか、違う目線を置いて、世界をふっと広げてあげるというかーー。
その後、クライアントやご家族にも変化がありました?
「ありますね。『最近、『死にたい』って言わなくなったね』とか『経管栄養の拒否もなくなったよね』とか。
でもこれは、家族よりも長い時間、土屋が過ごしていることにも理由があったりするのかなとも思ってます。
例えば介護保険だと時間が30分とか1時間で業務内容も決まってるんですが、重訪では14時間の夜勤とか長時間一緒に向き合うので、お互いそういったことも出てくるし、家族が目を背けているところにも、土屋は向き合わないといけないっていうところで、そういったことが必要なんだと思いますね」