近年、日本は医療的ケア児とその家族の支援に取り組んでいますが「医療的ケア児と障害児の違いってなに?」と疑問に思うのではないでしょうか。
この記事では、医療的ケア児と障害児の違いを、身体面とサービス面から解説します。
医療的ケア児と障害児の違いを知りたい方の疑問が解決できる内容となっていますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
医療的ケア児と障害児の違い
医療的ケア児と障害児の大きな違いは、医療的ケアの有無です。
医療的ケアとは、吸引や経管栄養、人工呼吸器の管理などあらゆる医療的ケアのことです。医療的ケア児は、これらの医療的ケアが日常的に欠かせません。
対して障害児とは医療的ケアの必要性がなく、知的や身体、精神に障害のある児童のことです。また障害児の中には、医療的ケアを必要とする児童もいます。
以下にて医療的ケア児と障害児について、さらに詳しく解説します。
医療的ケア児とは
医療的ケア児とは、日常生活や社会生活をおくるために、吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要不可欠である児のことです。
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律にて、医療的ケア児とその家族の支援が明確化され社会全体の責務となりました。
知的や四肢に問題がなくても、医療的ケアが必要であれば医療的ケア児といいます。
例えば外で走り回って過ごしている幼児でも、排尿に何らかの障害があり、管を使って排尿する導尿が定期的に必要であれば医療的ケア児です。
必要な医療的ケアは、医療的ケア児によってさまざまです。
医療的ケア児に主に行われている医療的ケアは以下のとおりです。
- 人工呼吸器
- 気管切開の管理
- 鼻咽頭エアウェイの管理
- 酸素療法
- 吸引(口鼻腔内、気管内)
- ネブライザーの管理
- 経管栄養
- 中心静脈カテーテルの管理
- 皮下注射
- 血糖管理
- 継続的な透析
- 導尿
- 排便管理
- けいれん時の対応
障害児とは
障害児とは児童福祉法によると、知的障害、身体障害、精神障害(発達障害)があり、継続的に日常生活や社会生活において制限を受ける子どものことです。
以下にて各障害について詳しく解説します。
知的障害
知的障害は知的機能の障害があり、日常生活や社会生活への適応能力が低く、発達期である18歳以下に生じている障害をいいます。
知的機能と適応能力には3つの領域があります。
- 概念的領域
記憶、言語、読み書き、数学的思考、実用的な知識の習得、問題解決など
- 社会的領域
他者の思考・感情・および体験の認識、共感、対人コミュニケーション、社会的判断など
- 実用的領域
セルフケア、金銭管理、行動の自己管理など
身体障害
身体障害は生まれつきや事故・病気の後遺症によって、身体機能の一部が不自由である状態のことです。
法のもとでは、身体障害者福祉法に基づいて身体障害者手帳の交付を受けている方が身体障害者といわれます。
なお身体障害者手帳の交付条件は、障害が持続することであり、ケガや病気、加齢による一時的な障害の場合は交付の対象とならないケースがあります。
身体障害のある部位によって、以下5つの分類に分けられます。
- 視覚障害
- 聴覚または平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能または咀嚼機能の障害
- 肢体不自由
- 内部障害
精神障害(発達障害)
精神障害とは精神の病気によって日常生活や社会生活が困難である状態のことです。
発達障害とは生まれつきの脳の機能障害により、乳幼児期から成長発達の遅れが見られる状態を発達障害といいます。
発達障害は精神障害の中に含まれる障害とされています。
発達障害には自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(SLD)などがあります。
医療的ケアの必要性が高い障害児
医療的ケア児と障害児の違いを解説しましたが、医療的ケアが欠かせない障害児もいます。
医療的ケアの必要性が高い障害児は、主に以下の障害がある児です。
- 呼吸機能障害
- 摂食嚥下機能障害
- 心・循環器系障害
- 内分泌系障害
- 膀胱直腸障害
なお医療的ケア児の 6〜7割は、重症心身障害もあるといわれています。
重症心身障害とは、重度の肢体不自由と重度の知的不自由が重なっている障害のことをいいます。
また重度の肢体不自由と重度の知的不自由が重なっている児童(者)のことを、重症心身障害児(者)といいます。
医療的ケア児と障害児をサービス・報酬からみた違い
医療的ケア児は医療的ケアが必要ですので、利用したいサービスがあっても、事業所が医療的ケア児に対応していないと利用できません。
医療的ケア児が利用できるサービスの拡充は、現在政府が取り組んでいるところです。
また医療的ケア児と医療的ケアのない障害児が同じサービスを利用する時、医療的ケア児のほうがサービス報酬が算定できる傾向にあります。
サービス報酬が算定できる理由は、医療的ケア児に医療的ケアを行う場合、事業所は看護師を1人以上配置する、または複数配置する必要があるからです。
なお医療的ケアが喀痰吸引のみで、喀痰吸引研修を修了している職員が在籍している場合は、看護師を配置する必要はありませんが、その分の報酬は算定できません。
算定が変わる医療的ケア区分
医療的ケア児は医療的ケアスコアによって、医療的ケア区分の判定がされます。
医療的ケアスコアとは、医療的ケア児がどれくらいの医療が必要なのかを計るためのスコアで、医師が判定します。
医療的ケア区分が高くなるほど看護職員の配置を手厚くする必要があるため、報酬単価も高くなります。
医療的ケア区分決定の流れ
医療的ケア区分はどのようにして決定されるのか、決定されるまでの流れを紹介します。
まず、医療的ケア児のご家族が主治医へ医療的ケアスコアの判定を依頼します。
主治医が医療的ケアスコアの書類へ判定を記載後、ご家族が市区町村へ提出します。
その後医療的ケア区分の決定を受けます。
なお利用するサービスが重症心身障害児型の事業所の場合、市区町村へ提出する前に事業所への提出が必要です。
医療的ケア区分は受給者証に印字されます。
この受給者証は、医療的ケア児が児童発達支援や放課後等デイサービス、短期入所などを利用する時に、事業所へ写しの提出が必要です。
医療的ケア児と障害児は医療的ケアの有無とサービスが異なる
医療的ケア児と障害児は、医療的ケアの有無や利用できるサービスが異なります。
また医療的ケア児は医療的ケアが必要ですので、算定できる報酬も変わってきます。
どのような子どもであっても社会全体で支援することを目指し、現在さまざまな制度が整えられているところです。
一人ひとりが医療的ケア児と障害児の理解を深めることで、誰もが住みやすい社会となることが期待されます。