超高齢者と認知症の関係。90歳以上の認知症患者はどれくらい存在するの?

WHOの発表によると、2023年の世界保健統計において世界で最も平均寿命の長い国は日本となっています。

平均寿命が80歳を超えている国が31カ国あるなかで日本人の平均寿命84.3歳、女性に限っては86.9歳の平均寿命であることが明らかになっています。

平均寿命の伸びとともに気になるのが、超高齢者(90歳以上)の介護についてです。

特にこの記事においては、90歳以上の高齢者が向き合う認知症の発症リスクと介護の関係性についてご紹介していきます。

【参照】World Health Statistics(WHO)

目次

現在の日本における90歳以上の超高齢者

総務省統計局の発表によると2022年時点の推計で、日本には65歳以上の高齢者が3627万人、人口比率にして29.1%、約3.5人に1人が高齢者の時代に突入しています。

3627万人のうち265万人が90歳以上の超高齢者と推計されており、総人口の2%が超高齢者の時代が到来しています。

戦後に実施された1950年の国勢調査では、80歳以上という分類であっても総人口の0.4%にしか達していませんでしたので、急速な勢いで長生きの高齢者が増え続けている傾向であることが伺い知れます。

【参照】「敬老の日」にちなんで /1.高齢者の人口(総務省統計局)

超高齢者の介護

90歳以上になると、どのような身体的変化や環境変化が生じてくるのでしょうか。

岡山大学の研究によると、80歳代と90歳代のクライアントにおいてメガネの使用有無や補聴器の使用有無に明確な差が見られないことが分かっています。

また循環器系・筋骨格系の疾患を中心に、なんらかの疾病を患っている方がほとんどとなっています。

大きく80歳代と90歳代の差が見られるのは、配偶者との離別に関する項目です。

90歳代に突入すると、配偶者が生存している割合は80歳代の同項目から半数に減少します。

家族との同居をしている90歳代の割合は60%に達する一方で、40%の方は単一世帯で暮らしています。

今後も90歳以上の人口比率が増加を続ける傾向であるのに伴って、単一世帯の超高齢者に対する介護サービスの充実が必要となってくると考えられています。

90歳以上の認知症患者の傾向

また現在の日本において急務とされているのが、認知症の患者に対する介護サービスの拡充です。

認知症は脳の細胞が損傷を受けたり壊死することによって出現する、認知機能が低下する症状です。

認知症の出現は年齢を重ねるごとに高まることが分かっており、現在では65歳以上の方であれば約16%が認知症であると推計されています。

年齢とともにこの発症リスクは高まる傾向にあり、90歳以上の超高齢者の場合では約60%の方が認知症であると推測されています。

【参照】
90歳以上の特徴(国立大学法人 岡山大学)
認知症と共に暮らせる社会をつくる(独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)

90歳以上のクライアントが必要としている介護

前項でご紹介した90歳以上の方の身体的変化と現在の日本における介護をとりまく環境について考察すると、今後の日本では90歳以上のクライアントに対して「単一世帯であっても自立した自宅生活を継続できるような介護」「医療と連携した介護サービス」「認知症に対する正しい理解に基づく介護」を提供していくことが必要となってきます。

地域全体でクライアントを支える地域包括ケアシステム

2003年より厚生労働省では地域包括ケアシステムの考え方を推進しています。

地域包括ケアシステムは、従来であれば介護施設への入所以外の選択肢を選ぶことができない状態であった要介護のクライアントであっても、住み慣れた自宅での生活が継続できるようにサポートする仕組みです。

特に地域包括ケアシステムの中心にある定期巡回・随時訪問型訪問介護看護では、24時間365日体制でクライアントの自宅を訪問し、日常生活における介助を提供することができる仕組みを整えています。

また介護と看護が一体となった介護保険サービスとなっており、緊急時においては医師の指示によって医療的なケアを提供することのできる体制が整備されています。

一方で厚生労働省の2021年度の調査によると、定期巡回・随時訪問型訪問介護看護の事業所は1,178施設しかなく、訪問介護事業所の35,612施設と比較すると、定期巡回の利用を希望するクライアントが等しくサービスを受給できる環境には達していないことが分かります。

今後は90歳以上のクライアントが増加する傾向に合わせて、さらに定期巡回事業所数を増加させることと、サービスの質向上が急務となります。

認知症に対する専門的な介護体制の拡充

90歳以上になると約60%に症状が出現すると考えられている認知症は、脳細胞になんらかのトラブルが生じることが原因で起こりますが、根本的な治療法は確立されていません。

認知症による認知機能の低下は、年齢に伴う健忘症よりも早いペースで進むことがわかっており、さらにせん妄や他害などの症状が加わることによって、介助なしでの日常生活は困難になる傾向にあります。

そのため現在も介護保険制度のなかで進められている認知症ケア加算のように、実際の介護を担当するアテンダントが認知症についての正しい知識をもち、日常生活をサポートしていく必要があります。

【参照】令和3年介護サービス施設・事業所調査の概況(厚生労働省)

90歳以上になると認知症の出現率は約6割に。社会全体でサポートすることのできる仕組みの拡充を。

医療の充実や食生活・衛生状態の改善によって平均寿命が伸びつつある日本において、90歳以上の超高齢者は人口の2%にまでその割合を増やしています。

身体的な機能の衰えや認知症の出現によって日常生活に介助を必要とする確率が高まる90歳以上の超高齢者には、現状以上の介護体制の拡充が急務となります。

株式会社土屋グループでは、全ての方の意志が尊重される社会を目指して、今後も必要としている全ての方に介護を届けることができるよう、邁進していく所存です。

アテンダントに対する研修の充実や処遇改善にも積極的に取り組み、より質の高い介護を幅広く提供することができるよう、走り続けます。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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