認知症の介護は、認知機能に影響が生じているものの、まだまだ身体が元気なクライアントに対して24時間365日の見守りが必要になってきます。
脳の細胞に生じたトラブルが原因の病気なので「人格が変わることや問題行動を起こすのはしょうがないこと」と頭では分かっていても、先の見えない認知症介護に「もう無理」と感じてしまう方がほとんどです。
今回は「認知症の介護無理」と悩んだ時に思い出してほしい対処法をご紹介していきます。
認知症の介護をしんどいと感じることに、背徳感を覚える必要は全くありませんので、介護保険制度や公的な支援を上手く活用して、認知症のクライアント本人だけでなく、家族の心身も大切にした認知症介護を目指していきましょう。
介護がもう無理と感じたら、まずはケアマネージャーに相談を
認知症のクライアントと向き合うなかで「もう無理」と感じたり、食欲減退・不眠・気分の落ち込みなどの症状を実感するようになったら、それは介護うつのサインかもしれません。
介護うつの状態に陥ってしまったり、介護うつの兆候を感じた時は、まずケアマネージャーに現状を説明し、利用することのできる介護保険サービスの有無や、介護度認定の見直しについて相談しましょう。
介護度認定の見直し
介護度認定はクライアントの心身の状態によって、介護の必要なし・要支援1~2・要介護1~5のいずれかの区分で示されます。
介護保険制ではクライアントの要介護度によって、利用することのできるサービスの種類や上限時間が異なってきます。
そのため「これ以上の在宅介護が難しい」「もう認知症の介護が限界」と感じている場合、まずは介護度認定を行って要介護度を見直すことによって、サービスの利用頻度や利用時間を今より増やせるかもしれません。
ケアマネージャーと相談しながら介護度認定の区分変更や審査請求を検討し、必要な介護保険サービスが適切に利用できるような状況を整えていきましょう。
新しい介護保険サービスの検討
例えば現在訪問介護を利用して認知症の在宅介護を行っているものの、家族の負担が大きく心身が疲弊してしまっているという場合は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用に切り替えることで家族の負担を減らすことができるかもしれません。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は24時間365日体制で自宅への定期巡回をお願いすることができ、1日の訪問回数や訪問間隔に関しての制限がありません。
費用も月額制となっていますので、日中の訪問介護利用や2時間ルールの中では在宅介護が難しい方、また訪問介護の利用回数が多く負担額が大きくなってしまっている方などから需要の高いサービスです。
こちらもケアマネージャーに相談することで利用できる介護保険サービスや地域にある事業所を紹介してくれることがありますので、話を聞いてみることをおすすめいたします。
入居型施設の検討
「大切な家族だから、できる限り自宅で介護を続けたい」「認知症を発症する前の本人の希望だから、在宅介護を頑張りたい」と考える家族の方はとても多いです。
しかしながら介護に無理や限界を感じた時は、ショートステイや入居型施設を利用することによって心身ともにリフレッシュすることができることも事実です。
家族の温かさや一家団欒の笑顔を思い出すためにも、少し認知症の家族と物理的に離れる時間を設けるとよいかもしれません。
認知症のクライアントに対応したショートステイ
認知症のクライアントに対応可能なショートステイは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付き有料老人ホーム・グループホーム・ショートステイ専門施設の5つが挙げられますが、事業所によっては認知症のクライアントを受け入れていない場合もあります。
「もうこれ以上の介護は無理」と感じる前にいくつかの事業所を見学しておき、症状の相談を行っておくとよいでしょう。
認知症のクライアントに対応した入居型施設
認知症の症状があっても入居することができる施設は、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付き有料老人ホーム・グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅などが挙げられます。
近年認知症を利用に施設入居を検討される方が非常に多く、特に特別養護老人ホームの場合は認知症のクライアントの場合は要件を満たせば要介護1もしくは2の認定でも入居が認められることもあり、施設への入居には待機が発生している事業所がほとんどです。
介護無理で心身の疲労が限界に達する前に、早め早めの事業所見学と申し込みを行うことをおすすめいたします。
介護者同士や地域との交流
認知症の介護が無理と感じる要因の一つに、介護者の孤独が挙げられます。
認知症と認定された家族に24時間向き合うことで家庭内で過ごす時間が増えたり、介護離職をせざるを得ない状況に陥ることは、介護者が社会から孤立することを意味します。
そのため適切な機関と連携を図りながら、積極的に気分転換となる他者との交流を行っていきましょう。
認知症カフェの利用
認知症カフェ(オレンジカフェ)は、認知症の方や家族、介護・医療の専門職、地域の人などが気軽に参加できる憩いの場です。
社会福祉法人・医療法人・NPOなどが運営しており、認知症のクライアントやその家族が交流しながら認知症介護に関する情報の交換を行うことができます。
認知症の家族を連れて出かけると人の目が気になるという家族や、とにかく同じ体験をしている人と会話することでリフレッシュしたいという家族が集う場所になっています。
定期的に開催されるものと不定期に開催されるものがありますので、自治体のHP等をチェックしてみてください。
認知症の介護が無理と感じる前に、積極的な相談を。
認知症の介護は、進行する症状と変貌する人格に戸惑いが大きく、非常に心身に負担がかかる介護になってきます。
家族に対する愛情だけでは乗り切れないことや辛いことが沢山あります。
介護に無理を感じてしまった時や、心身の不調を感じる前に、ケアマネージャーをはじめとする周囲に相談したり、新しい介護保険サービスの利用を検討することで、介護者の心身の健康を守ることができます。
支援を積極的に活用し、認知症の介護に取り組んでいきましょう。