認知症はまだまだ未解明の部分も多い病気ですが、最近は認知症の発症を促す原因や、認知症になりやすい人の習慣などが徐々に明らかになってきています。
とくに「性格」「行動」「病気」の3つが認知症の発症に関係していると考えられており、その人の持つ性格や普段の行動から認知症になりやすいかが見えてくることもあります。
今回はそうした認知症になりやすい人の特徴を詳しく解説していきますので、将来の認知症予防のためにもぜひご覧ください。
認知症になりやすい人の「性格」
認知症の発症には、性格、考え方、気質などが影響していることがわかってきました。
ここでは、認知症になりやすい性格、なりにくい性格について解説します。
認知症になりやすい性格
- 心配性、ネガティブ
- 怒りっぽい、批判的
- 神経質
- 協調性がない、誠実性がない など
スウェーデンのイエーテポリ大学による研究では、心配性の度合いが高い人は、低い人に比べ認知症発症のリスクが約2倍高いことが報告されています。
怒りっぽく、批判的な人も認知症になりやすい性格であることがわかってきています。認知症の初期症状としても「怒りっぽくなった、疑い深くなった」が挙げられていますので、怒りっぽさが目立つ場合には、既に認知症が発症していることも疑う必要が出てきます。
また、ここで挙げたような性格の方は、周囲の人間を遠ざけやすく、孤立しやすい傾向があります。他人との関わりが薄く孤立した環境というのも、上手く脳が刺激されず、認知症の土台になりやすいと考えられています。
認知症になりにくい性格
- 誠実で真面目な人
- 勤勉
- 責任感が強い
- 自制心がある など
誠実で真面目な人は、周囲との関係を築きやすく、プラスの方向で考えていくため、脳に良い刺激を与えられ、それが認知症予防にも繋がると考えられています。勤勉な方も、脳に適度な刺激を与えているため、認知症を防ぎやすいです。
ただし、誠実で真面目な人は、認知症になりやすい性格である「心配性」や「神経質」の側面も同時に持っていることがあるため、認知症と無縁であるとは一概にいい切れない部分もあります。
認知症になりやすい人の「行動」
普段の「行動」の積み重ねや、日々の「習慣」も、認知症発症の土台を作ることがあります。
認知症になりやすい人の行動や習慣には、主に以下の5つがあります。
- 運動をしない
- 寝るのが遅い、睡眠が不規則
- 食生活が乱れている
- アルコールを沢山飲む
- スマホ依存
それぞれの行動について、認知症との関係性を以下の表に記載します。
行動 | 認知症との関係性 |
---|---|
運動をしない | 運動は認知機能の向上に効果があり、逆に運動をしないと認知症を発症しやすくなる。 認知症になってしまった方の13%が運動不足に関連するとも報告されている(国立長寿医療研究センター「MCIハンドブック」より)。 |
寝るのが遅い、睡眠が不規則 | 最も患者数の多い認知症である「アルツハイマー型認知症」は「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質が長年蓄積されることにより発症しやすくなるという説が有力視されている。 このアミロイドβが睡眠不足や徹夜が原因で生じやすくなることがわかってきている。 |
食生活が乱れている | 食生活が乱れていたり、過食、偏食を続けていると「肥満」「高血圧」「糖尿病」などの生活習慣病を患いやすく、これらは認知症の原因に直結する。 一方で、バランスの取れた食生活は認知症予防の効果がある。 |
アルコールを沢山飲む | アルコールの多量な摂取は、脳を萎縮させ、認知機能の低下を促すことがわかっている。 アルコールによって生じる認知症は「アルコール性認知症」として扱われており、注意力や記憶力の低下、感情のコントロールが行えなくなるなどの症状を伴うことがある。 |
スマホ依存 | 頻繁なスマホ利用が原因となり認知機能などが低下する症状を、通称「スマホ認知症」と呼ばれる。スマホでインターネットを観覧し続けることにより、多くの情報が脳に送られ、脳の負荷が増えることが原因として考えられている。 スマホを多用する若い世代に多い。放置するとスマホ認知症から「若年性認知症」の発症に繋がる恐れがある。 |
上記で紹介した行動は、いずれも現代人であればよくある行動習慣ではありますが、慢性化すると、それが水面下で認知症への足がかりとなってしまうこともあります。
認知症になりやすい人の「病気」
認知症と特定の「病気」との関連性が明らかになってきています。
具体的には、以下のような病気を抱えている方は認知症になりやすいといわれてます。
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症(生活習慣病)
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血)
- 難聴
- 歯周病
- 慢性腎臓病
- バセドウ病、橋本病、副腎皮質機能低下症 など
身近な病気としては、生活習慣病の代表格となる「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」を患うと認知症を発症しやすくなることが判明しています。
たとえば糖尿病を患うと、認知症の中でも最も患者数の多い「アルツハイマー型認知症」になる可能性が約2.1倍高まるといわれています。高血圧に関しても、アルツハイマー型認知症や血管性認知症になる可能性が高まると考えられてますので注意する必要があります。
国民の7割が罹患しているといわれる「歯周病」と認知症の関係も近年わかってきており、九州大学らが行ったマウスを使った研究において、歯周病菌がアルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」の産出・蓄積を促進させるメカニズムが明らかになりました。
バセドウ病、橋本病といった甲状腺ホルモンに関する病気も認知症との関係が深いことがわかってきていますので、該当する病気の方は気を付けていきたいところです。
認知症になりやすい人の「職業」
最後にもうひとつ、就いている「職業」に関しても、認知症との関係が示唆されています。
一般的には、脳を刺激する職業、たとえば弁護士、教師、ソーシャルワーカー、エンジニア、医者などの仕事をしている人は認知症になりにくいといわれています。
反対に、肉体労働者、機械のオペレーター、レジ打ちなど、同じような作業を繰り返す職業に就く人は認知症のリスクが高まると考えられています。
それを裏付ける研究として、スペイン・サラゴサ大学のAna Cristina Gracia Rebled氏らは、高齢者における生涯従事した主な職業と認知症や認知機能障害との関連の分析を行いました。分析の結果、肉体労働に生涯従事している人は、知的な要件の高い職業に従事している人よりも、認知機能障害や認知症のリスクが高いことが示唆されています。
この職業は認知症になりやすいと括れない部分も多い
ただし一概にはいえない部分もあり、たとえば教師は、認知症になりにくい職業といわれる一方で、認知症になりやすいといわれることもあります。
特に歴史や古典など、新たな発見が少ない教科を担当してる教師は認知症になりやすいことが示唆されており、実際に認知症外来にくる元教師の方も少なくはないようです。
同じ名前の職業でも、行っている仕事内容が異なることもあります。焦点となるのは職業そのものよりも、普段繰り返している行動の方になります。
努力次第で変えられる部分は改善することが大切
以上、認知症になりやすい人の特徴を解説しました。
今回紹介した特徴に該当したからといっても、必ずしも認知症を発症するという訳ではありませんが、その素質があるということは頭に入れておいた方がよいでしょう。
また、性格や行動などは、自分の意識や努力次第で変えられる余地もあります。たとえば運動をしない習慣などは、認知症を抜きにして考えても健康上デメリットとなることが多いため、その傾向が過度にみられる場合は意識的に改善していくことも大切です。