増加する「老老介護」の現状と問題、解決策にはどのようなものがあるのか

高齢者同士で介護をし合う「老老介護」の家庭が増えており、社会問題になりつつあります。いま現在、どの程度の家庭が老老介護となっており、老老介護状態となるとどのようなリスクが生じてくるのでしょう。

今回は、深刻化する老老介護の現状や問題点、またその解決策について解説します。高齢化社会が進み年々身近な問題となりつつありますので、理解を深め、老老介護が周りで発生している場合には、適切な対処を行うようにしましょう。

目次

老老介護の現状

「老老介護」とは、65歳以上の高齢者同士で介護を行っている状況のことを指します。たとえば「70歳の子供が90歳になった親を介護する」「80歳の夫が要介護状態となった同い年の80歳の妻を介護する」といった状況が老老介護に該当します。

2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢組合せについて、60歳以上同士が77.1%、65歳以上同士が63.5%、75歳以上同士が35.7%という結果となっており、現状、多くの家庭で高齢者同士による介護が行われていることがわかります。

なおこの数値は例年上昇しつつあり、比較として2001年の段階では、60歳以上同士が54.4%、65歳以上同士が40.6%、75歳以上同士が18.7%でした。この約20年間で老老介護の割合は急上昇しているのです。

介護者の年齢層の分布は?

介護者(介護をする側の人)の年齢について、より細かく見ていきましょう。

2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」では、「同居の主な介護者の年齢階層」についての調査も行われており、以下が年齢階層別の分布です。

年齢階層割合
40歳未満1.5%
40~49歳5.3%
50~59歳17.2%
60~69歳29.1%
70~79歳28.5%
80歳以上18.4%
出典:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 表18「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢階級別構成割合

ご覧のように、介護者の年齢階層は60歳以上から一気に割合が高くなり、反対に40歳未満は1.5%に過ぎません。こうした数値からも老老介護が深刻化していることがわかります。

ただし、水面下では10代の若い層が祖父や祖母の介護を行う「ヤングケアラー」の問題も広がってきており、今後より表面化してくることが予想されます。

老老介護の原因と問題

老老介護は何が原因となり増えているのでしょう。また、老老介護状態になるとどのような問題やリスクが生じるのでしょうか。ここでは老老介護が発生する原因や、老老介護が続くことでの問題点について解説します。

老老介護の原因は?

老老介護が増えている原因として、主に以下3つが挙げられます。

  • 高齢化
  • 核家族化
  • 頼ることへの抵抗感

原因の根底にあるのは、やはり社会全体の高齢化です。医療技術が進歩し平均寿命が伸びたことで、80代90代の親が健在でかつ介護状態になっている家庭が珍しくありません。介護を行う子供側も60代70代と高齢化し、そうなると老老介護の状況が出来上がります。

また、実家を出て都会などで家庭を築く子供が増え、昔の日本に多かった3世代世帯が減り、核家族世帯が増えたことも、老老介護増加の原因となっていると考えられています。

加えて、要介護者となっている70代~90代の世代は、自分や自分の家族だけで乗り切ることを美徳として考え「他人に頼ってはいけない」という価値観を持っていることがあります。特に入浴や排泄のような行為を他人に手助けしてもらうことは恥のように感じることもあり、そうした価値観が老老介護の環境を作り上げてしまうことがあります。

老老介護の問題点は?

老老介護特有の問題点として、主に以下3つが挙げられます。

  • 身体能力の衰え
  • 精神的なダメージ
  • 経済面、金銭面

老老介護を続ける上でまず大きな問題となってくるのが「身体能力の衰え」です。介護行為は体力や筋力を使う場面が多く、また身体能力というのは歳を重ねる毎に衰えていくものです。介護をする側が高齢になると「移乗や体位交換などの力を使う介護行為が上手く行えない」「一つ一つの介護行為に時間がかかる」といった問題が生じやすく、無理をすると介護事故を起こしたり、介護する側が身体を痛め「共倒れ」となってしまうリスクも潜んでいます。

「精神的なダメージ」にも注意が必要であり、介護する側が高齢になると、若い頃のように仕事や趣味などで外部と繋がることが減りやすく、在宅で要介護者と2人きりの生活となりやすいです。そうした閉鎖的な環境が続くと、介護によるストレスや不安をより感じやすくなるため、精神的に弱ってしまうことがあります。

「経済面、金銭面」の問題としては、老老介護の場合は、お互いが年金のみの収入となることが多く、その他の収入源が乏しいことから、身体の容態が悪化し介護に掛かるお金が増えると、困窮状態に陥ってしまうこともあります。特に年金額が少ない方や貯蓄が少ない方ほど、困窮する可能性が高まります。

老老介護の解決策について

ここでは、老老介護問題の解決策について解説します。今の生活が苦しく感じている場合、そのままにしておくのは良いことではないため、対策を進めていきましょう。

家族と話し合う

配偶者、子供、兄弟など、他に頼れる家族がいる場合であれば、一度家族と話し合い、介護のサポートをしてもらえないか相談することが大切です。要介護者の配偶者、子供、兄弟には、法律上、介護をする義務(扶養をする義務)があり、家族が支え合うことは当然のことです。

毎日でなくとも、週何度かだけ介護を家族に分担してもらうだけでも、状況がだいぶ改善することもありますので、家族がいる場合にはひとりで抱え込まず、家族の力を借りることが大切です。

介護保険サービスを積極的に活用する

週に何度か在宅介護サービスを利用したり、デイサービスやショートステイを組み合わせることで、介護する側の精神的・肉体的な負担を軽減することができます。既に介護保険サービスを利用している方であっても、その頻度や回数を増やすことで、今よりも負担を軽減できることがあります。

介護保険サービスをどの程度使えるかは、要介護度や家庭の状況によって決まり、老老介護によって厳しい状況の家庭であれば、手厚いサービスが受けられることもあります。

要介護度の再審査も可能ですので、以前より状況が苦しくなっている場合には、一度ケアマネジャーに相談し、再審査やケアプランの見直しをお願いしてみましょう。

地域包括支援センターに相談する

「地域包括支援センター」は、高齢者の介護における総合相談窓口であり、老老介護における悩みや困りごとの相談や対応も行ってくれます。たとえば「歳をとって身体が衰え介護を行うのが難しくなった」「家族が協力してくれない」など、さまざまな悩みに対し専門家がサポートしてくれます。

地域包括支援センターは、全ての市町村に設置されており、無償で利用可能です。お近くの地域包括支援センターは厚生労働省の公式サイトで調べられます(※リンク先の「全国の地域包括支援センターの一覧」が該当)。

「最近辛いな」と感じたら早めにSOSを出そう

以上、老老介護の現状と問題について解説しました。

老老介護状態でも上手く介護が行えている家庭も中にはありますが、やはり老老介護というのは何かと問題やトラブルが発生しやすいものであり、一つ間違えれば介護事故が起きたり、介護する側が潰れてしまうこともあります。

そうならないためにも「最近辛いな」「もう自分だけでは介護ができないかもしれない」といった不安が生じている場合には、早めにSOSを出していくことが大切です。介護は社会全体の問題であり、一人だけで抱えることではないのです。

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この記事を書いた人

介護業界で働かれる方や、介護サービスを利用されている方、これから利用を考えている方などへ向けて、介護保険、障害福祉サービス、社会的背景などの制度情報や役に立つ情報を定期的に発信しています。

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