近年の日本は人口における高齢者の割合が高く、いわゆる超高齢化社会を迎えています。
実際に総務省が発表したところによると、日本に暮らす65歳以上の高齢者は3627万人、人口比率で換算すると29.1%、つまり3.5人に1人が高齢者です。
高齢者の人口比率が高まる一方で生産人口は減少を続けており、介護業界では介護の需要と供給のミスマッチが大きな課題となっています。
増加の一途を辿る介護需要に対して介護サービスの供給が追いつかないことから介護難民の存在も問題になっていますが、特に早急の解決が必要と考えられているのが認認介護や老老介護の問題です。
高齢者の生活にどのような異変が起こっているのか、また家族が認認介護や老老介護に直面した際の解決策はあるのかについてご紹介していきます。
増え続ける介護難民
2020年に厚生労働省が発表した資料によると、介護保険制度において要介護または要支援として認定されているクライアントの数は、およそ682万人となっています。
2000年と比較すると、介護が必要と認定されている方は約2.66倍に増加をしており、介護サービスの十分な供給が間に合っていない状態です。
介護サービスの利用を希望しても空きがなく「介護難民」としてサービス利用の空きが出るのを待ち続けている人は、2022年時点で特別養護老人ホームへの入居を希望しているクライアントに限ってみても、約25万人に達しています。
介護難民と核家族
多くの介護難民が直面している大きな問題が、核家族という家族形態の変化です。
日本では高度経済成長期以降、夫婦と子どものみで暮らすいわゆる核家族が一般的となり、三世代もしくはそれ以上の家族単位で暮らす家庭は減少傾向にあります。
また核家族のなかでも65歳以上の夫婦がいる世帯の場合は子どもが独立し、夫婦のみもしくは高齢者の単身世帯であることが珍しくありません。
夫婦のどちらかが介護難民になってしまったとき、もしくは高齢の子どもとその親のみの世帯で誰かが介護難民になってしまった時に生じるのが、認認介護と老老介護の問題です。
認認介護
認認介護(にんにんかいご)とは、認知症のクライアントが同じく認知症のパートナーや家族に対して行う在宅介護です。
現在の日本では高齢化の傾向もあって認知症を発症するクライアントが増加し続けており、比較的症状の軽い認知症クライアントが、認知症の家族を介護するという構造が生じています。
老老介護
老老介護(ろうろう介護)は、自宅で介護する側もされる側も高齢者という状況を意味する言葉です。
主に65歳以上の子が親を介護するケース・65歳以上の夫婦で一方を介護するケース・65歳以上の兄弟で一方を介護するケースなどが一般的です。
近年では、介護する側も介護される側も75歳以上のケースを表す「超老老介護」という言葉も耳にするようになってきました。
認認介護と老老介護の解決策
認認介護と老老介護が増え続ける背景には、日本における家族形態の変化や長寿化、そして介護施設と介護人材の不足、また十分な介護を利用できない貧困の問題などが複雑に関係しています。
認認介護や老老介護が恒常化することによって、精神的・肉体的に家族が共倒れになってしまうリスク、また不測の事態が生じるリスクがあります。
そのため遠方に暮らす家族や地域社会、介護事業者、行政などが一体となって、認認介護や老老介護の解決策に向かって行動することが重要です。
認認介護と老老介護の解決策①地域包括支援センターへの相談
「遠方に暮らす両親が、認認介護状態に陥っている」「このままでは兄弟の老老介護を行わざるをえない」という状況の時は、まずは地域包括支援センターに連絡を入れましょう。
地域包括支援センターは高齢者と地域を結ぶ窓口で、保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなど介護に携わる専門職が在籍しています。
介護に関係することや金銭面での不安などの相談に応じてもらうことができますので、困ったときはまず地域包括支援センターに問い合わせてください。
認認介護と老老介護の解決策②介護サービスの利用
自宅で家族による在宅介護を行う際は、例え介護を行う側が働き世代の元気な人間であったとしても、精神的や肉体的に大きな負担がのしかかり、辛さを感じてしまうことが多々あります。
ましてや認認介護や老老介護といった場面では、本来であれば自身も介護を受ける立場の方が在宅介護を行うことになり、万が一の事故やトラブルに発展する可能性も無きにしも非ずです。
そのため認知症や高齢であることを理由に介護認定を受け、介護保険制度を利用した介護サービスの利用を積極的に行っていきましょう。
先ほどご紹介した地域包括ケアセンターや、地方自治体の高齢者窓口・介護保険窓口などで相談することができます。
認認介護と老老介護の解決策③成年後見人制度の利用
認認介護や老老介護の状態で大きなトラブルになりかねないのが、財産管理に関係する問題です。
認知症や高齢から物事の正常な判断に影響が出始めたり、認認介護や老老介護のなかで余裕がなくなったりすると、「気が付いたときには貯金がない」、「高額の悪徳商法と契約してしまっていた」というような事態を招きかねません。
地域包括支援センターでも相談することができるので、介護サービスの利用や今後の生活を相談するなかで、お金に関係する問題も解決策を見出しておきましょう。
誰もが直面する可能性のある認認介護や老老介護。解決策をよく相談しておこう
近年の日本で社会問題となっている、認認介護と老老介護についてご紹介いたしました。
認認介護や老老介護は、誰もが他人事ではなく、身近に起こりえる問題です。
予め解決策をしっかりと理解しておき、認認介護や老老介護でトラブルが発生する前に関係各所に相談していきましょう。