年齢を重ねると様々な部分の筋力が落ち、身体機能に衰えがみられるようになります。
のど周りの筋肉も例外ではなく、徐々に筋力が衰えるとものを飲み込む機能(嚥下機能)が低下してしまい、誤嚥のリスクが高まります。
今回の記事では、主に在宅介護を続けていくなかで気を付けておきたい誤嚥性肺炎のリスクについてご紹介していきます。
家族を在宅介護でケアしている方や、在宅介護中のクライアントと接しているアテンダントの方は必見です。
誤嚥性肺炎を発症する仕組み
誤嚥性肺炎は、空気の通り道である気管に、空気以外の本来は入り込んではいけないもの(食べ物のかす・唾液・口の中の細菌・胃液など)が侵入してしまうことによって発症する肺炎です。
特に高齢者の場合や脳卒中による麻痺などの後遺症によっては、人間が食べ物や飲み物を飲み込もうとするときにのど仏を引っ張り上げようとするのどの周辺の筋肉が衰えることで、飲み込みの機能(嚥下機能)が低下しがちです。
また自分の歯がなくなることで食べ物を正常な大きさにかみ砕くことができなくなる、唾液の分泌が少なくなることで食べ物を飲み込みにくくなるなど、様々な身体機能の衰えが複雑に関係して、誤嚥が生じやすくなるのです。
一般的には年齢を重ねるごとに、異物が気道に入ったときに咳で異物を外に押し出そうとする反射能力も低下してしまっており、誤嚥性肺炎の要因となる誤嚥を起こしやすい状態に陥りやすいと考えられています。
誤嚥性肺炎は感染性の病気ではないものの完治が難しく、普段から口腔ケアを心がけたり、食事の時を中心とした見守り体制の徹底など、上手に付き合っていく必要がある症状です。
在宅介護中は特に小さなサインを見落とさず、誤嚥を防ぐことによって誤嚥性肺炎発症のリスクを軽減していきましょう。
経管・経鼻栄養のクライアントでも、誤嚥性肺炎の発症リスクあり
一般的に誤嚥と聞くと、食事の時に食べ物をのどに詰まらせるイメージの強い症状ですが、胃にカテーテルを装着して栄養を注入する胃ろうや、鼻から経管で栄養を届ける経鼻経管栄養など、経口以外の食事であっても、誤嚥のリスクはあります。
経管栄養による誤嚥は、チューブで体内に届けた栄養を嘔吐してしまうことや嘔吐物の誤嚥、栄養を注入するスピードが早すぎる、経管栄養注入時の体位が的確ではない、といったトラブルによって誘発されます。
特に在宅介護を始めるなかで初めて経管・経鼻栄養と向き合うご家族も多いかと思いますが、経管・経鼻栄養は指導を受けた通りに正しい手順で行うことが重要です。
経管・経鼻栄養をはじめたばかりの頃や、経管・経鼻栄養に慣れたと思って油断したころに誤嚥が起こりやすい傾向にあります。
誤嚥性肺炎を防ぐために、まずは誤嚥にしっかりと注意をして在宅介護を行っていきましょう。
就寝時の誤嚥にも要注意
また食事以外に誤嚥が起こりやすいシーンとしては、就寝時が挙げられます。
就寝時の誤嚥では眠っている時に唾液が気管に流れ込む・逆流してしまった胃の内容物が気管に入り込むといった原因が考えられます。
在宅介護中、夜中にむせ込むことが続いているようであれば就寝時の誤嚥を発症している可能性があります。
寝ている時の様子を時々確認して、誤嚥性肺炎につながりそうな誤嚥症状が表れていないかを確認するようにしましょう。
在宅介護でもできる、誤嚥性肺炎の予防策
誤嚥性肺炎は、クライアントの誤嚥を防ぐことである程度発症リスクを抑えていくことができます。
普段の在宅介護で心がけたい、誤嚥性肺炎を予防するための声かけや接し方をいくつかご紹介していきます。
在宅介護で心がけたい誤嚥性肺炎の予防策①むせ込みをとめない
「むせる」という行為は、気管に入り込みそうになった異物を押し出そうとする正常な生理現象です。
そのためむせ込むことを無理にやめさせようとすると、気管内の異物が排出されず、誤嚥性肺炎の原因となってしまいます。
在宅介護中のクライアントがむせ込んでしまった際は決して無理にむせ込みを止めるような声かけをしてはいけません。
優しく背中をさすりながら「大丈夫だよ」「思いっきりゴホゴホして大丈夫だよ」などと声をかけ、落ち着くまでむせ込むことができる環境を整えてあげましょう。
在宅介護で心がけたい誤嚥性肺炎の予防策②食事の内容を気を付ける
在宅介護のなかで経口で栄養を摂取しているクライアントの場合、食事内容は誤嚥性肺炎のリスクに直結する重大な問題です。
食べ物の大きさや柔らかさはもちろんのこと、喉に張り付きやすい食材を避ける・水分量が少ないメニューは注意をする・ひじきやひき肉のようにバラバラしやすい食材にはとろみをつける等、細やかな気配りが大切になってきます。
毎日の食事で留意し続けるのはとても大変なので、要所要所において高齢者向けの宅配食を併用するなどして、食事内容に配慮していきましょう。
在宅介護で心がけたい誤嚥性肺炎の予防策③介護保険サービスを活用
誤嚥性肺炎を予防するためには、在宅介護を家族だけで行うのではなく、訪問介護や訪問看護に代表されるような在宅型の介護保険サービスを活用していくことが大切です。
在宅型の介護保険サービスは要介護1から要介護5に認定されたクライアントが中心に使うことのできるサービスで、利用に伴って作成されたケアプランに基づいて、クライアントが自宅で生活する中で必要としている介助やサポートを受給することができます。
誤嚥や誤嚥性肺炎が始まりそうな段階であってもプロの目線で気付いてもらうことができる可能性が高まりますので、在宅介護中には積極的に介護保険サービスの利用を検討していきましょう。
在宅介護に必要な誤嚥性肺炎の知識。しっかりと確認して備えよう。
誤嚥性肺炎は、小さなことがきっかけとなって発症しやすい病気です。
特に在宅介護中のクライアントの場合は、食事や体位に気を付けておくことによって、誤嚥性肺炎の原因となる誤嚥のリスクを下げていく必要があります。
改めて誤嚥性肺炎や誤嚥に対する正しい知識をしっかりと学ぶことで、クライアントの「住み慣れた自宅で暮らしたい」という想いを尊重することのできる環境を整えていきましょう。